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魔法適性のない俺は拳で異世界を救う  作者: 長雪 ぺちか
第3章 最強の魔法少女の登場と殺人事件でサスペンスの香り……?『オオイタ』編!
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不条理へ至る銀鍵

【時間】による行動時間の短縮をかけた一突きをエプロンドレスの少女は身を翻し楽々とかわす。

 そのまま華麗な体捌きで大きな鍵をまるで鈍器のように扱い下から私を狙いに来るが、私は腕を引き疾風迅雷の細剣(ブリューナグ)でそれを受け止め、それと同時に砂煙が巻き上がった。

 見た目10歳前後の少女から繰り出された物とは思えない衝撃が腕を支点に全身に走り私は顔をしかめる。

 私は一度体制を整えようと大きく後ろへ飛ぶ…………飛ぼうとしたが何かにぶつかりそれは阻まれた。


 金色に縁取られた赤い扉が不自然に私の背後に現れていたのだ。


 全力で跳躍しようとしてぶつかった痛みは思った以上で、しかし、痛いとか感想を言う前に目の前の敵は私に飛びかかり鍵を薙ぎ払ってくるため、私は無心でその攻撃を屈んでかわす。

 扉と鍵がぶつかり、耳を貫く甲高い金属音が響き、私たちの先頭を見ている周囲の人間たちは悲鳴をあげた。


 流石は世界で一番安全なギルドね。

 多少のトラブルに対しての免疫がない人が多すぎるわ。

 全くこれだから平和ボケしたギルドは。


 自分でそんなことを思いながら心の中で一人笑う。

 これが多少のトラブルな訳がない。


 何故なら、世間一般で言われる異名多数の最強少女と自称完全無欠最強美少女の私が戦っているのだからね!自惚れすぎかしら?

 そんなことはないと思うのだけど。


 その後何度か互いに攻撃を繰り出してはそれをかわし、いなしを繰り返す。

 加護で速度を上げた私の行動に少女はついてきていた。

 全く息の上がる様子のないリリは攻撃の手を止めると、楽しそうに笑いながら話し始めた。


「剣のおねーちゃん、やっぱりすばしっこいの。でもおかしいの。前はいっぱい剣を出してたのに、今日はしなくていいの? 手加減されるの、リリいやだよ?」

「うっさいわね。こっちにも事情があんのよ」

「そっか! リリがあの剣たちを没収しちゃったから使えないんだったね? リリったら忘れっぽいの」

「…………その通りよ。でも私はあの時よりも何十倍……いえ、何百倍も強いわ! もうあなたには負けない」

「む……リリの方がもっと強いもん! ぜったい、ぜーったいリリの方が強いもん!」


 リリはまるで小さな子供が駄々をこねるように地団駄を踏む。

 彼女の感情に合わせて、体から電気が漏れ出した。

 彼女の加護ギフトの一つ【サンダー】。

 そういえば彼女は戦闘向きの属性系の加護を彼女は授かっていたのだった。

 他にも私と同じ【召喚サモン】とそれに付随した固有加護である【不思議の国の扉(ワンダードア)】、以上。

 自分の加護を相手に知られるのは戦闘において大きなディスアドバンテージな訳だけど、このお子様に限ってはそうとは言えない。

 彼女の暴力的な魔力量と戦闘センス、そして【不思議の国の扉(ワンダードア)】の圧倒的汎用性があらゆる状況に対して有効な勝ち筋を生み出すため、分かっていてもリリをそう簡単に倒すことはできない。

 扉を盾のようにする事で防御の加護にもなり、さっきみたいに相手の進行方向に扉を生み出す事で進路妨害、扉をくぐって転移をする事で変則的な攻撃までもが可能。勿論【召喚】の付属品だから、扉からの転移は【召喚】で行われるわけで、その扉から彼女の愛玩動物ドラゴンが出てくることも忘れてはならない。


 本当にインチキ加護ギフトも大概にしてほしいわね。

 同じ召喚魔法でもおまけの固有加護の格が違いすぎるわ。


 さっきはあんな風に彼女を挑発したけど、正直なところ勝てる見込みがない。

 私にはリリに見せてない宝具あって情報アドバンテージがあると言えど、リリも同様にまだ力を隠していたらどうする?

 私が知っている彼女であれば、今の私でも十分に突破可能だ。

 ただ、そうしたらこのギルドには消えてもらうことになるし、観光地でそんなことするつもりもない。

 私の奥の手を繰り出すなら、それは【トウキョウ】でするべきだ。

 だとすれば…………怖い、怖いが……彼女の手札が残っているかどうか探りを入れて、逃げるのが1番利口なこの場の切り抜け方ね!


「分からないわよ。私が今持っているこれがどんなものか、お子ちゃまの貴方に分かるかしら?」

「リリはお子ちゃまじゃないもん! そんなの分かるの! ええっとあれでしょ? 宝具! 絶対そうなの!」

「…………その通りよ。あんたもそこまで馬鹿じゃなかったのね」

「なんなのその言い方! なんだかムカつくの! そんなこと言ってると本当にヤっちゃうんだから!」

「いいわよ来なさい! でもあんたの攻撃はもう大体読めてるわ。前に戦ったときとさして変わらないし、最強の魔法少女の限界見たりってね」

「っむむむ……! そうやってまたリリのこと馬鹿にして……!ムカつくのムカつくのムカつくの!」


 よし。私の思惑通りリリを上手く興奮させられてる。

 この調子で彼女の持っている手札を全て見せてもらおうじゃ……


「あれ? でもおかしいの。前戦ったときのおねーちゃんは、今日みたいにリリを馬鹿にしたりするようなことは無かったの」

「……い、いきなり冷静になっちゃってどうしたのよ! あんたらしくないじゃない」

「ねえ、汗かいてるよ? もしかして、リリを馬鹿にして怒らせるのは作戦だったの? 怒らせてどうしたかったの? リリは怒ったら怖いこと知ってるよね?」

「……………………(完全にこっちの策がバレてる)」

「分かった! きっとリリの秘密を暴こうとしてるんだ! そうだよね? じゃないとあんな命知らずな行動したりしないの」


 目の前の少女はそう言って、手に持った鍵をグルグルと回すとドスッと鈍い音を立てて地面にそれを立てた。


「リリは優しいからそっちの作戦に乗ってあげるの。お望み通り、ちょっぴりリリの宝具を見せてあげるの」


 紆余曲折あったが、結局彼女は自分から手札を公開してくれるらしい。

 最強故の慢心か、子供らしいガードの甘さか知らないがこれは好都合ね。


 リリは巨大な銀鍵の頭に触れると、小さく唇を動かす。


「第一の門…………解錠。不条理へ至る銀鍵(レーヴァテイン)!」


 機械仕掛けの大きな鍵がまるでパズルのように動き出し形を変えつつ白い煙を上げる。

 好奇心をくすぐる様に変形する鍵の行く様を眺めていると


 瞬間、息がつまるような緊張感に襲われた。


 魔力ではなく、魔力も感じるが、魔力ではない何かが私を縛り付けている。

 全身の毛が逆立ち、理性に反して背中からは冷や汗が流れる。

 訳が分からない。

 これが彼女の宝具の力の一部なのだとしたら……

 確信的な死の予感に私の足は硬直した。


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