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魔法適性のない俺は拳で異世界を救う  作者: 長雪 ぺちか
第1章 中ボスだと思っていたあのモンスターもこんだけ出れば雑魚モンスター……?『ミト』編!
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2度目のダンジョン

 謎の親権争いが始まり火花を散らす2人は置いておき、俺はアイリを探しにいくことになった。行くあてはある。


 木の柵によって土地が仕切られた古っぽい建物。この世界に来てから、俺にアルバイトさせてくれた愛すべき場所、アイリと初めて出会った場所、保育園だ。

 走りに走って、保育園の近くまで来ると園長先生が園の前に立っていた。表情を見るにあまりに機嫌が良さそうに見えない。

 アイリについて尋ねると、その話を待っていたかの様に園長先生は焦った様子で話し出す


「タケルくん、アイリはどうしちゃったんだい!!? 突然今までありがとうだなんて言われて 、わたしゃもう何がなんだか……」


 普段温厚な園長先生がここまで感情的になるのを俺は初めて見た。

 そのことからも事態が相当にまずいことになっているということは感じられる。


「説明は後です。とにかくアイリは今どこに!?」

「それが分からないのさ。方角としては北のほうに走っていったんだけどねぇ……」

「北? 北ってまさか……」


 ダンジョンのことだろう。

 どうやら俺はとことん北のダンジョンに縁があるみたいだ。

 アイリが北のダンジョンに向かった理由、それは間違いなく『自殺』だろう。

 自分の加護が【支配】だと分かったとき、アイリは俺に近づかないでなどと言っていた。責任感が強く、しっかり者のアイリだからこそ、そんな加護に生まれてしまった自分に、自分自身でけじめをつけに行こうとしているんだ。そんなことしなくていいのはさっきのミリアの説明で分かった。しかしそれをアイリは聞いていない。

 彼女に真実を知ってもらい、みんなで旅に出るんだ。


 俺は足を軋むほどに無理やり動かし、全力で北のダンジョンに向かった。


 *


 北のダンジョンに着くまでに時間は殆どかからなかった。

 ダンジョンに足を踏み入れるとそこはやはり薄気味悪い、暗い空間だった。

 ダンジョン構造による緊張は初めて入った時ほどはなく、しかし別の意味で今は緊張、また焦っていた。この危険なダンジョンに10歳の少女が1人で入っていったのだから。

 昨日起きたミノタウロスの大量発生、俺が元凶のミノタウロスから宝具を奪ったことにより大半が消滅したのだが、全てが消えたわけではない。ミリアを背負ながらのダンジョンの帰り道には普通にミノタウロスはいた。それに、数はそこまででもなかったが、スライムやゴブリンもいた。

 向こうはこちらに有効打がないと知って攻撃してこなかったから、俺も帰り道にミノタウロスたちを倒すことはなかったんだけど、いることにはいたのだ。


 あれ、もしかして俺がダンジョン内のモンスターを倒しておけば今頃こんな危険な状況になっていない?


 違う。違うんだ。あの時はミリアを担いでいたから、彼女を無事にダンジョンから脱出させることが第一目標だったから仕方なかったんだ。俺だってこんな事態になるなんて予想できたわけじゃない……


 正直なところ、奢りがあったのだと俺は思う。

 何十、何百と束になってもミノタウロスは恐らく俺に危害を加えることができない。それを知ってしまったからダンジョンにミノタウロスがいても無視していたんだ。でも、俺以外の人間は違う。

 ミリアだって瀕死まで追い込まれていたし、最初に北のダンジョンから逃げてきた手慣れの冒険者たちだって大怪我を負っていた。アイリは確かに強いみたいだけど、彼女の加護がミノタウロスに通じるかなんて分からない。

 下手をすれば死ぬ。というより、彼女自身が死を望んでいるんだから強い弱いは関係ない。死ぬことのできる一撃を持つミノタウロスがここにいるということだけで、アイリは死ぬんだ。


 俺は自分の招いた災厄を払うべく、ダンジョンの二層へ繋がる階段に足をかけた。


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