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魔法適性のない俺は拳で異世界を救う  作者: 長雪 ぺちか
第1章 中ボスだと思っていたあのモンスターもこんだけ出れば雑魚モンスター……?『ミト』編!
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お前を許さない

「……お父…………様?」

「……………………っ!?」


 アイリの言葉に巨人、フジミヤゴウケンの顔が歪む。

 ジリジリと後ずさりをして、今すぐこの場から逃避したいという気持ちが伝わってくる。アイリが探しているお父様とは、目の前にいるこの巨体だというのか?人違いという線も考えられるが、ゴウケンの露骨な動揺を見るに本当なんだろう。

 俺は冷静に状況を分析しながらも、頭には血が上っていた。こいつはアイリを捨てた張本人だという事実が許せなかった。


 アイリは下を向いたまま動かない。何を思ってなのかは知らないが、体が小さく震えていた。怯えている。アイリは目の前の父に怯えている。

 俺はミリアと奴の間にズカズカと大股で入り込む。


「巨人……いや、フジミヤゴウケン。お前はアイリの父親か?」

「……………………」

「お前が、アイリが5年間探し続けてた父親かって聞いてるんだ! 答えろ!」

「俺は……その子の父親なんかじゃねえよ」

「…………んっ!!」


 アイリが声にならないほどの悲鳴をあげる。

 それからはアイリはその場に座り込みえずくようにこみ上げる鳴き声を必死に堪えていた。憎しみに満ちた思考のままゴウケンを睨むが、俺はそこである違和感に気づく。

 おい、ゴウケン……どうしてお前は………


 そんなにも苦しそうなんだ


 自分が捨てたはずの娘に会って負い目を感じるのは理解できる。でもこいつの今の表情はそれだけじゃない。申し訳なさの中に力強い何かが潜んでいる。

 アイリに負い目を感じなから、別の誰かのことを考え、そいつを殺してやりたいほどに憎んでいる目だ。今、俺がそんな目をしているはずだから分かる。

 となるとアイリはある事情があって仕方なく手放されたと考えるのが妥当だ。

 俺は前へ乗り出しゴウケンを見据える。


「ゴウケン。俺はお前が許せない。どういう事情(・・・・・・)があれ、アイリを捨てたお前が許せない」

「……お前に許してと言った覚えはねえよ。邪魔だボウズ。俺はここに仕事できてるんだ。さっさと嬢ちゃんをよこせや!」

「ミリアの確保は、お前が連れてきたその後ろの護衛にでも任せろよ。俺は今最高に頭にきてるんだ! この手でお前をぶん殴るまで収まる気がしない。一対一で(・・・・)俺と勝負しろ!」


 伝われ、俺の真意。願うように問いかけた俺の提案を聞き、ゴウケンは一瞬間を開け、後ろにいる奴らにバレないほど小さく口角を上げた。

 そして、後ろを振り向くと十数人の鎧を着た護衛たちに指示を出す。


「お前ら、ミリアを確保しろ。生け捕りだ。殺すんじゃねえぞ! 俺は……この生意気なボウズとやりあうことにした。覚悟はいいな? クソガキがぁ!!!!」


 圧倒的な気迫。その巨体から放たれる大気が揺れるほどの音の波に身の毛のよだつ感覚を覚える。

 背中に背負う自分の体躯ほどの大斧を取り出し、それを頭の上でブンブンと振り回す。


「我が名はゴウケン。【五宝人】が一人、フジミヤゴウケン。 死なないように努力しろよなぁ!!!!」


 ついに合間見えた俺の倒すべきトウキョウの人間。

 右手拳を左手に打ち付け、気合いを入れ直すと、俺は自分よりはるかに大きい巨人に戦いを挑んだ。


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