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魔法適性のない俺は拳で異世界を救う  作者: 長雪 ぺちか
第1章 中ボスだと思っていたあのモンスターもこんだけ出れば雑魚モンスター……?『ミト』編!
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魔法なんて使えるわけないだろ!

ドクン、ドクン、ドクン……と一定の間隔で大きく脈を打つ俺の心臓。

未だ嘗て、これほどまでに分かりやすく胸の鼓動を聞いたことがあっただろうか。

俺は今、人生に岐路に立っている。

何を大げさな、と思うかもしれないが、ここは俺の第一志望の大学の面接会場。

俺、オオワダタケルは高三、つまり受験生なわけで、受験生にとって面接はそれほど大げさになる行事だってことだ。

扉の中から俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。

さあ始まりだ。今まで練習して来た成果を発揮するんだ!

俺は手のひらの汗を一度拭うと、意を決して扉を開けた。


部屋の中には机が6つに椅子が7つ。1つの椅子を中心に扇型を描くように机が配置されていた。

そして面接官が1.2.3……6人?おかしいな。確か面接官は3人という話だったはずなんだけど……

これはあれなのか!?受験生の心に強さを試すサプライズ演出なのか!?そんなサプライズはいらない……しかも面接官の態度が酷くて、1人は寝てて、1人は何か斧みたいなの持って踏ん反り返っている。銃刀法違反じゃないのか?

真ん中の席に座る青年が「どうぞ」と言うのを待ち俺は椅子に腰かけた。


「ええっと……オオワダタケルくんで合ってますか?」

「はい! 〇〇高校から来ました、オオワダタケルです! 本日はよろしくお願いします!」

「なんだか随分ヤル気ありますね。かたくならなくていいですよ。今日はあなたの力を見定めに来たんですから、かたくなってはそれが出来ないでしょう?」

「そ、そうですね。ありがとうございます」


面接官がそういうので俺は肩の力を軽く抜いた。


「それでは、まずきみの加護ギフトを見せてもらってもいいかな?」

「ギフト……?」

「君には何が出来るのか……まあ、特技は何かってことですよ」

「なるほど。分かりました」


慣れない単語に俺は一瞬焦った。特技をギフトって呼ぶなんて、もしかしてこの面接官はいわゆる厨二病ってやつなのかもしれない。

俺は準備してきた通り高校時代にやっていた空手の話を持ち出す。全国の大会には出させてもらえなかったけど、地域での練習試合では負け無しだったと言う事を話した。


「なるほど。負け無しだったんですね。それはすごい事だと思いますよ!皆さんも聞きましたか?」


青年が隣の席に座る人たちに同意を求めるが、その人たちはあまり興味がなさそうだった。

突然、端っこに座っていた斧を持った男が立ち上がる。立ち上がったその高さは3メートルに迫るかと思われるぐらいで、はっきり言って巨人だった。


「王様よぉ……あんたはいつも回りくどいんだ。こいつの加護ギフトが知りたきゃ直接見りゃあいいだろ!」


怖い!巨人怖い!内心叫びたくなる俺だが、ここが面接会場だと知ってるのでそれをグッとこらえた。

迫る男は俺に何かをするのかと思ったんだけど、何もしていない。ただずっと俺のことを見つめていた。


「嘘だろ……【魔力不適合アンチマジック】……こいつ、魔法が使えねぇ……!?」

「なんですって!? すいません、私にも見せてもらっていいですか?」


真ん中の青年も席から飛び出し、俺を凝視した。


「本当ですね……しかし、もう1つ加護ギフトがあるじゃないですか……って【世界の加護(ギフト)】? ギフトがギフトネームってどういうことなんでしょう……? 不具合でしょうか?」


青年が席に戻ると頭を抱えて、しばらく唸っていた。

俺からしたら全く状況が掴めない。魔法がどうのとか訳がわからない。

俺の選んだ大学ミスだったのか……?受かっても辞退しようかな。

青年はコホン咳をして仕切り直す。


「最後に確認なんですけど、オオワダタケルくん、君は魔法は使えないんですよね……?」


流石にこれを聞き間違いするのは難しい。

せっかく推薦してくれた高校の先生には悪いけど、こんなカルト宗教みたいな大学に俺は行くわけにはいけない!


「魔法なんて使えるわけないだろ! いい加減にしてくれ!」


ここが面接会場ではなく、異世界であることを知るのはまだ少し先の話だ。


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