オトモダチ
あの子と私はオトモダチ。
それを誰も疑いもしなければ、余計な詮索をされる恐れもない。
そんな、とても楽な関係である。
でも、いつも考えてしまう。
彼女の瞳に自分以外が映らない世界へ行けたら、
どんなに良かっただろう、と。
ーーー
中学1年生の秋、私は所属していたバスケ部を辞めた。
女子も男子と同じメニューをこなし、
ひとたび大会に出ればメダルを逃すことはほぼないという、
選手から見れば最高の部活…のはずだった。
でも私はそこから去ることに何の迷いも感じなかった。
理由は簡単。
コーチをしていた若い先生が、
試合を見に来てくれたあの子のことを「可愛い」と言ったからだ。
その瞳には隠しきれない恋慕の想いが滲み出ていて、吐き気がした。
あんな奴に取られるわけにはいかない。
辞めるとき私は先生に向かって、
「あの子は私のものですよ?奪ったりしたら…わかっていますよね?」
と、微笑んですら見せた。
ーーー
その気になったら私はなんでもできる。
あの子の為なら車を出して家まで毎日迎えに行くし、
帰りだって彼女の部活の時間に合わせて家まで送る。
そう、なんだってできるわ。
そして最後に私は、決まってこう言うの。
「まったく、こんなんだから嫁の貰い手がないのよ?」
貰い手なんて一生無くて良い。
あの子が私のそばにいてくれたら、それでいい。
だから、誰のものにもならないでね。
もしあなたがいなくなってしまったら、
私はきっと壊れてしまうわ。
そう。これはそんな、ちょっと変わったオトモダチの話。