初恋
短編の割りに長い?
ゾクッ!とこない。ヌルっとした読み物となっております
読後、ちゃぶ台返したくなっても責任は取れませんので
あしからずご了承くださいませ
「ねぇモカちゃん!あの道路から見えてるお屋敷、中に蛇女が住んでるんだって!」
声をかけてきたのは幼馴染のミユちゃんだった
姉のマユちゃんもウンウンと大きく頷いてる
私の姉、モモを見上げると知らなかった。というように
目を真ん丸くしていた
ミユちゃんのお家の近く、大きな道路から見える大きなお屋敷
道は草が生い茂っていて、近くに流れてるっていう深い川も見えない
それなのに
「行ってみようよ!」
幼馴染4人、中学生と小学生のお屋敷探検隊が結成された
真夏の真っ昼間。自分達の親が仕事に行っていない、夏休みの一日だけの冒険
・・・のはず、だった
深い川にかかる腐りかけた橋を一人ずつビクビクしながら渡って
自分達の背ほどもある草を手を繋いで歩いていく
道路を走る車にばれないようにゆっくりと、こっそりと
10分ほど進みたどり着いたお屋敷は扉が壊れ、中に入れるようになっていた
そっと中を覗き込むと、所々抜け落ちた床と間仕切りのない大広間
最奥に襖のようなものが見える
「あの扉の奥に蛇女がいるんだって!」
蛇女が住んでるからあの扉だけいつも閉まっているのだと
なぜか得意げにミユちゃんが言い、マユちゃんも頷く
モモ姉は埃が積もった棚だったらしい物を足先で突いては
「こんなとこで住んだら喘息起きそう」なんて言ってる
でも、どうやって奥まで行こうか
いくら子供でも、踏んだ床が抜け落ちたら大怪我することぐらい分かる
「・・・こっちだよ。ここなら抜けない。ついてきて」
横切った大きな背中が前に移動して行く
「「「「兄ちゃん!」」」」
全員の声が重なった。あっという間に4人の先頭に立った兄ちゃんは
こちらを振り向きながらここ、そっち、あっち
と、安全な道を示して進んでいく
「兄ちゃん、あれってなに?」
見たことのない道具に声を上げ、兄ちゃんは楽しそうに解説してくれる
「あれは鎌、お屋敷があった頃にはこれで草を刈ったりしてたんだ。あっちに見えるのは台所、お風呂はなかったんだ。トイレは・・・外にあったんだけど、もう壊れちゃって跡形もないね」
物知りな兄ちゃんに歓声を上げてるうちに、難なく襖の前へと到着した
半分以上壊れたそれは容易に中を覗ける
「・・・いないね」
壊れた天井からチラチラと光が差し込む3畳ほどの部屋の中は大広間と比べれば綺麗だった
だけど、だれもいない。申し訳程度に縄が部屋に散らばってるだけ
「帰ろうか」
だれともなしに呟いて来た道を戻る
今度は兄ちゃんは一番後ろを歩いていた
お屋敷から出てみんなを見渡す
ミユちゃん、マユちゃん、モモ姉に私・・・4人の冒険隊・・・・・・兄ちゃん?
ミユちゃんとこは2人姉妹で、私のとこも2人姉妹で
学校のお友達以外男の子の知り合いはいなくて・・・私の隣にいるこの人は誰?
急に湧き上がってくる恐怖心。叫びだしたいけど、今私が叫んだら確実にパニックになる
橋は一人ずつ渡らないと今にも崩れ落ちそうだったし
草に埋もれてて注意してみないとどこに架かってるか分からない
パニックになった私たちが深い川に落ちる可能性が高い
ゆっくりと兄ちゃんだと思っていた人の顔を見上げる
知らない
こんな人は知らない
真っ白い肌に赤い瞳そして・・・真っ白な髪
とっても楽しそうな顔をして私を見下ろしてる
「・・・あなたは、私がいるの?」問うた言葉は本能
理由は分からないけれど、狙われているのは私だ
「よく分かったね」
世間話のような口調で返されて、それでも納得してる私がいる
「霊感があるって言われてる」何度も言われた嬉しくない言葉
でも、それを肯定するかのように白い手が指を差す先に人だったモノ
「あそこに怖いの居るの分かる?」
「見えてる・・・アレに5人くらい殺されて一緒になってる」
想像以上の力だね。なんて笑われた
モカがもう少し育ったらお嫁に来てもらうから、約束できるよね?
小さく頷くと軽く痛みが走った
右手の薬指、付け根に今までなかったはずの赤い痣
「またね」
声に顔をあげると私は家にいた
「お屋敷、解体工事始まるんだって。もう少し早く行ってみればよかったねぇ」
ミユちゃんが残念そうに言う。私たちがお屋敷に着いたときには
大人達が草を刈り、工事の準備をしていたから素通りして帰ってきた・・・らしい
「お屋敷入ったよね」なんてことは言わない
そんなこと言ったらまた親に「普通の人には見えないから黙ってなさい」とか
「見えてても絶対に言うな」とか怒られるから
私と同じものが見えていた伯父さんは苦笑いしながら「見えないフリを覚えなさい」
そう言ってくれた。だから私はなにも見ていない
暑かったせいで頭がぼ~っとしてたせいだから
あれから約十年・・・私は20歳になった
右手の薬指の痣は、二つ並んだほくろへと変化していた
「モカ!久しぶり~」
数年ぶりに聞くミユちゃんの声に振り向き動きが止まった
ミユちゃんの後ろに背の高い男性。黒目・黒髪だけど・・・兄ちゃん?
唇を動かすと、彼が一瞬で移動してきて抱きしめられた
「体作るのにかなり時間かかっちゃった」
そっと胸を押して彼の黒目を覗き込む
「・・・人間になったの?」
「それは無理。人として生まれたフリ・・・お嫁にきてって言ったでしょ」
「戸籍ごと要るんだ・・・あなたは蛇の神様?魔物?」
「あれ?それすら知らずにお嫁に来るって承諾したの?」
「どっちでもいい。私はもうあなたの物なんでしょ?」
「10年前からね」囁く声に力を抜く。彼の目が赤い色に変わってる
どんな能力を使ってるのかミユちゃんは、この人は私の大学の友達で
名前は・・・なんて平然と、肩を抱かれてる私に説明してくれてる
「・・・この歳まで恋人不在の寂しい人生を送る羽目になった責任取ってよね」
おまけに、名前も知らないし
わざと拗ねたように呟くと、触れるようなキスの後、そっと彼の名前を囁いてくれた
十年前、彼の顔を見た瞬間に
その赤い瞳に恋に落ちていたことは
しばらく内緒にしておこうと思う
冗談抜きで子供の頃、蛇女が住むというお屋敷行きました
・・・で、変な体験したんでこねくり回して小説にしてみました
彼の人としての名前も本名も出てこなかったですね
神様なのかそうじゃないのかも・・・
考えてはいたのですが、どうしても書けませんでした
ので、彼とモカの秘密ということにしておきます




