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掌編小説集4 (151話~200話)

古寺の声

作者: 蹴沢缶九郎
掲載日:2016/05/22

昔、ある村のはずれに人がめったに立ち寄らない古寺があった。この古寺に、最近になって妙な噂が持ち上がった。古寺から連日不気味な声が聞こえるというのだ。人々は「妖怪の仕業」や「老いた古だぬきが化かしている」とそれぞれに噂をし、いっそう古寺に近づく者はいなくなった。


ある日の夜、古寺の噂を耳にした一人の旅人が、化け物の正体を見極めてやろうと古寺にやってきた。着くとなるほど、寺の外にいても不気味な声は確かに聞こえる。旅人は声に耳を傾けるが、声は呪文のような言葉を話し続け、何を言っているのか理解するのは難しそうだった。本堂に入った旅人は声の主に向かって叫んだ。


「おい、化け物、姿を現せ」


しかし声の主は旅人の呼び掛けには構わず、ひたすら何かを話し続ける。


「無視というわけか…。よし良いだろう、こうなれば化け物が姿を現すまで俺はここを動かん。根比べだ」


旅人はどっかりとその場に座り込み、腕を組んで目を(つむ)った。声は相変わらず続いた。


それから日が登り、また沈んで、日が登り…。それは旅人が古寺に来て三日目の夕刻だった。声に変化があった。それまでひたすら話し続けていた不気味な声が徐々に小さくなり、聞こえなくなったのだ。この変化に旅人は目を見開き、未だ姿を見せぬ化け物に言った。


「おい、どこに行くのだ!? 死んでしまったのか!? 答えろ化け物!!」


旅人のその問いに答える者はなく、それから声が聞こえる事はなかった。


古寺から戻った旅人は、事の経緯を村人に話した。そんな旅人の古寺にまつわる話は瞬く間に広まり、伝説的に未来へと語り継がれていった。



その出来事から遡る事約二週間前、タイムマシンで過去から未来へと戻っている二人の男。その内の一人がうっかりワープ中のマシンから電源の入ったCDラジカセを落としてしまった。


「しまった!! タイムトンネルにラジカセを落としてしまった!! 頼む、戻ってくれ!!」


「無茶を言うな。今はタイムワープ中だぞ」


「頼むよ、あれには俺の最新曲のCDが入ったままなんだ。まだ発売前なんだぞ!!」


「他の人達にも君の歌声を聴いてもらえていいじゃないか」


タイムマシンを操縦していた男は冗談っぽく言ったが、歌手であるもう一人の男はがっくり項垂(うなだ)れている。


「おいおい、元気出せ。あんまり情けないと、化け物を退治した勇敢な君の先祖が泣くぞ」


操縦席の男は、そう歌手の男を励ますと、二人を乗せたタイムマシンはそのまま未来へ帰還し、落下したラジカセは、とある古寺の屋根を突き破り、天井の梁のうえで軽快な現代曲を流し続けた…。

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― 新着の感想 ―
[一言] タイムマシンなのにラジカセとはw 昭和SFを思い起こす懐かしさのする作品ですね。
[良い点] このオチは予想を超えてました。 たぬきかなーと思ってたのにw
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