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転入式①



ジリリリリ、 とどこからともなくなる鐘の音で目がさめる。壁の時計に目をやると、 7時55分。 遅刻だ! 部屋を見渡すとアラマンドもハオユーもいない。 僕だけだ! どうして起こしてくれなかったんだ、 そう思いながらも急いで着替えて顔を洗って歯を磨く。 この際寝癖は仕方ない。 一応転入式ということで襟のついた白いシャツに黒の細身のパンツを履く。 制服が目立つように、 ネクタイはつけないで代わりに記憶石のペンダント。

8時を少し過ぎたところで部屋を慌てて出る。 エントランスにみんなが集まっている。


「ケリー!」


アラマンドが手を上げる。


「アラマンド、 なんで起こしてくれなかったの?」

「何度も起こしたさ! お前死んだように眠ってたんだぞ! すげー心配して今先生にお前のこと話してたんだ」

「え?」


そんなに爆睡してたかな、 頭を手で少し抑えて寝癖を直す。 だけどすぐにぴょこっと重力に逆らった方を向いてしまう。

僕の様子を見てたナタリアがくすくすと笑う。 その首元には僕たちと同じように記憶石が揺れている。


「ケリー、 大丈夫かい?」


アラマンドから僕の様子を聞いたカーヴィン先生が心配そうに僕に問いかける。 僕の方はこれといってとくになんの問題もない。


「大丈夫です、 遅刻してすいません」

「なに、 大丈夫さ。 式までに時間はある」


僕の背中を2、 3回ぽんぽんと叩くとにこやかに笑う。 本当にカーヴィン先生はよく笑う。


「さて、 みんな制服もつけてきたことだし中に入ろうか」


カーヴィン先生は後ろを振り返る。 僕達が昨日ご飯を食べたリビングの扉の横には階段があり、 2階部分には扉が2つ。


「昨日ロザンナがいってたように記憶石に君の名前と姿が記憶されている。 ただ生徒から苦情がでてね、 石が叩けないものもいると。 それでこのペンダントをみんなにつけてもらっている。 このペンダントをつけていれば勝手に記憶石が読み取ってくれるよ。だから絶対に外さないでね」


カーヴィン先生は念入りに僕達に話しかける。


「学校に入ったら絶対に外さないでね。 防犯上の理由もあるから。 頼むよ」


そういって先生はハオユーの肩を叩いた。


「さあ、 ついてきて」


先生が2階へと上がる。 僕ら5人もゆっくり後についていく。 学校ってどんなところだろう。 生徒はどれくらいなんだろう。 仲良くできるだろうか。僕の胸は高鳴る。

2階の扉にも記憶石が飾ってある。 カーヴィン先生の胸元にあるエメラルドグリーンのブローチが光ると扉がすっと開いた。


「ようこそ、 僕の学校へ」


カーヴィン先生が左手を前に差し出してどうぞというポーズをとる。 恐る恐る前へ進むと僕は目の前の光景に度肝を抜かれた。

そこには天井があって、 僕達のいるところが最上階であることを示している。大理石の床に、 丸い石がついた手すり。 僕は下を覗き込むとまたびっくりした。 アラマンドも隣を覗き込む。

その下は螺旋階段がどこまでもつづいており、 途中からは草木が生い茂っていている。 ここは何階なんだ? ほんとに学校?


「1番下の階は大聖堂になってて、 いろんな行事が行われる場所だよ。 君達の転入式もそこでやる、 あ、 プールと街へ行く道もあるから迷わないように気をつけて」

「街? 街なんてあるの?」

「あぁ、 あるよ。 たまに生徒が買い物にいったりしてるよ。 さ、 降りようか」


カーヴィン先生は螺旋階段をゆっくりと降りだす。


「先生、 すごく長いけど式には間に合うの?」


ナタリアが小走りになりながらカーヴィン先生に問いかける。 ハオユーとエミーは黙ってカーヴィン先生について行ってるみたいだ。


「なに、 すぐつくよ。 毎日君達にはこの階段を使うんだ。 慣れてもらわなきゃ困る」


僕達がカーヴィン先生の後ろを歩いていると急に景色が変わる。 螺旋階段の踊り場から教室に行けるようになっている。 横目でチラ見してるとカーヴィン先生の背中にぶつかる。


「すいません、 先生」

「さ、 ついたよー」

「えっ?」


あんなに長い階段だったのに気づけばもう1番下まで来ていた。 上を見上げると小さな白い蝶が飛んでいるのが見える。


「先生、 あの蝶々は?」

「ん? 蝶々? どこだい?」

「ほら、 あの小さい白い」


僕は天井を指差したがカーヴィン先生には見えていないようだった。 目を凝らしてみるカーヴィン先生をアラマンドが引っ張る。


「早く行こうぜ、 先生」

「あぁ、 そうだね」


アラマンドに引っ張られてカーヴィン先生が大聖堂の方へと歩いていく。ナタリアや他のみんなも先生についていく。 僕は何故かあの白い蝶が気になってしばらく見つめているとシャボン玉になって消えてしまった。 一体なんだったのだろうか。


ふわふわと浮かぶシャボン玉を気にしながらも、 僕はカーヴィン先生たちの後に続いた。


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