プロローグ
遺跡都市ジ・オークス…かつて古代文明が栄え、そして一度滅びた都市。
現在の都市は遺跡の発掘を生業とするトレジャーハンターが集まり自然発生的に街になったものである。
住人の殆どは元トレジャーハンターであり現在でも現役のトレジャーハンターが多い。
ジ・オークスで発掘される古代文明の遺産はこの遺跡でしか発見されない貴重な物が多く、それ故に世界各地からそれを求める者が後を絶たない。
その為、この都市は年々賑やかさを増している。
そんな遺跡都市のトレジャーハンターの中でひときわ異質の存在があった。
トレジャーハンターと言えば聞こえはいいが要するに墓場泥棒のようなもの。
中にはすごい技を持つ者や卑怯な者、手口が見事な者など常人には及びもつかないスキルを持つ者も多いが彼はそういった輩とも全く異質だった。
何故なら、彼は猫なのだ。
猫だけど二本足で歩き、言葉をしゃべり、自立して人間社会で生活している。
彼以外のネコは勿論野生動物の猫として暮らしている。
そう、彼だけが特別なのだ。
何故彼だけがそんな猫になってしまったのか諸説は色々あった。
ある噂では遺跡の影響で人が猫になっただの…某国の実験で改造された猫が脱走しただの…。
本人曰く遺跡で見つけたアイテムを見つけたところ、そうなったらしい…のだが。
そう、遺跡から発掘されるアイテムの中にはそんな不思議な力が宿っている物があるのだ。
そしてこれも重要な事なのだが遺跡から発掘される特殊アイテムを使うのは誰でもと言う訳には行かず、使える者は数が限られていた。
人はこの特殊アイテムを使える人間を遺跡体質者と呼んだ。
この人間のように振る舞う猫もまたそんな遺跡体質者の一人なのだ。
遺跡体質の反応の強い者は多くの場合どんなアイテムでもより強くそのアイテムの能力を発現させる事が出来る。
このアイテムはOKだけど他のでは無反応と言う事は基本的にはありえない。
その為、より強く反応する遺跡体質者は重宝されていた。
しかし遺跡体質者と言えどもその能力はこの遺跡都市周辺でしか力を発揮出来ない。
そもそもつい最近まで遺跡体質者と言うのはいなかった。
そこで今考えられている中で一番有力なのがこの都市から発生される何らかの力が生物に影響を及ぼし、何世代も掛けてそう言う体質へと変化したと言う説だ。
つまり遺跡から距離が離れてしまうとその力の加護が得られなくなり能力も発揮出来なくなると言う訳だ。
まだ仮説にすぎないもののこの説で全て説明出来てしまうため学会でもこの説が一番支持を得ていた。
どうやらこの遺跡にはまだ我々の知らない幾つもの謎が隠されているようだ。
遺跡体質者の出現でそれを研究する研究者も続々とこの都市に集まってくるようになった。
やがてその全てが解き明かされる日がいつかは来るのか…それはまだ誰にも分からない。
長々と説明を続けたが、そろそろ本題へと入るとしよう。
これはそのトレジャーハンターの猫がある日の騒動を記録に残したものである。