霧島家は大変です!!
初めましてキクエモンと申します。
どうか生暖かい目で見てやってください。
「弟達よ大変な事が今朝判明した」
そう言って俺たち兄弟の長兄、霧島 大和はテーブルを囲んで椅子に座る俺たちを見回した。
余りいいとは言えない目つきに眼鏡をかけ髪はオールバックにした如何にもな我が兄がいつも通りのしっかりした声で俺たちに語りだす。
「実は明日から、我が家に女の子が一人、居候に来る」
「「「・・・・はっ?」」」
俺たちは思わず固まってしまった。
我が霧島家に、女の子が居候にくる?
一体なぜ?
「兄貴、聞きたいことがある」
そう言って俺のもう一人の兄である体格のいい黒い髪を短くそろえた強面の男、霧島 日本は大和兄さんをしっかりと凝視する。
この時、俺は道端を歩いてる時にふと下を見て長さ10㎝程のウ○チを踏んだ時の事を思い出していた。
こいつ、絶対に碌な事を言わない。
「その女の子は、幼女か?」
「ちょっと待て!!」
いきなり何言ってるんだこの変態は?!いや変態だってことは知ってたしこういう質問する気もしてたけど!
「今聞くことはそこじゃないだろ!?」
「そうか?普通は女の子が住むのだったら相手が自分の好みのタイプか聞くのは普通ではないか?」
「普通じゃねえよ!?確かにその女の子年齢とか容姿とかは気になるけどまず聞くのはそこじゃ」
「因みに幼女ではない、大体新羅と同い年の16歳で割と美少女らしい」
「律儀に答えるなよ大和兄さん!?」
「そうが、ものすごく残念だ」
「残念がるなよこの変態!」
日本兄が本気で残念そうに肩を落とす。
これで学校の女子からは「女子に全く靡かない硬派な所が素敵!」等と言われているのだから世の中間違っている。
この男は女の子に靡かないのではない、唯単に興味があるのが幼女だけと言うだけだ。
「大和兄さん!僕も聞きたいことがあります!!」
今度は俺の隣座っている眼鏡をかけた線の細い黙っていれば柔和な優等生に見える、俺より二つしたの弟の一人霧島 倭人が手を挙げて声を出す。
こいつも絶対に碌な事を言わない。
「その子の胸の大きさはどれくらぶぅぅ!!」
迷わず顔面に拳を叩きこみ黙らせる。
まったく、こいつら本当に・・・。
大体胸のサイズまで知っているわけないだろうが!
「胸は割とあるそうだ」
「知ってんのかよ!?てか何で知ってんだよ!」
いくら明日からこっちに来るからって何で知ってるんだこの兄貴!?
怖いよ!?個人情報何時の間にか握られてそうだよ!
「って違うだろ!!まず聞くところはそこじゃないだろお前らいい加減しろよ!!」
「そうだよ、新羅兄さんの言うとおりだよ!」
そう言って俺の言葉に賛同してくれたのは俺の目の前の椅子に座っているのは今年中1になった女の子見たいなかわいらしい容姿をしたポニーテールの
もう一人の弟、霧島 万葉だ。
良かった、まだ真面なのが残っていた・・・。
ほっと胸を撫で下ろしたが、
「まず空いてる部屋の確認とその部屋の片づけと後どうやって歓迎するか考えないと」
「ごめん万葉、それもちょっと違う」
「へっ?」
今聞くところはそこでは無い。
確かにそこも重要かもしれないがまず聞かなければならないことがある。
「まず何でその女の子がこの家に居候することになったんだ?まずそこを聞かせてくれ大和兄さん」
「「「「あっ」」」」
「おいお前ら、その今気づいたって顔は見なかったことにしていいか?」
もう色々とツッコミきれない。
てか大和兄さん、話し出したあんたがまず言う事だろう
まあ、日本兄に話を潰された感があるが・・・。
「フム、実は数日前に母が友人と久しぶりに会ったらしい」
大和兄さんが理由を話し出した。
因みに父は今家に居ない、外国に仕事の関係で出張している。
当の母は今朝早く出かけていない。
てかこういう話は普通母さんから話すものじゃないか?
どうも母さんが原因みたいだし。
「そして話が盛り上がったらしい」
ふむふむ、話が盛り上がったのか。
それから俺たちは大和兄さんの話を静かに聞くが、
「それで家で預かることになったらしい」
「「「「・・・・・・・・はっ?」」」」
「だから、話が盛り上がって家で預かる事に」
「ちょっと待て・・・」
いやさっきから何言ってんのこの兄さん、話が盛り上がったから預かる事に・・・へっ?
「・・・・大和兄さん」
「何だ新羅?」
「・・・・もっと詳しく正確に話してくれるかな?俺頭悪いからちょっと今の説明だけじゃ理解できないんだわ」
「うむ、確かに今の説明では全くわからんな」
「僕も兄さんたちより頭良いけど今のではわからないですね」
「新羅兄さん、倭人兄さんを殴って」
「えっ!?ちょっとまぶぅぅ!!!」
馬鹿な方のメガネを殴って黙らせて残っている全員で大和兄さんを見る。
見られている大和兄さんは居心地悪そうにしているがこちらは今の説明だけでは分らないから仕方がない。
少しの間沈黙が流れ、大和兄さんがバツが悪そうに口を開く。
「・・・・分らないんだ」
「「「はっ?」」」」
大和兄さんの発言に俺たちの声が綺麗にハモる。
因みに倭人は未だに床で倒れている。
「母さんに今朝聞いた説明がそれだけで・・・それ以外分らないんだ・・・・」
「あ~」
「ふむ」
「あ、あはは・・・なるほど」
その言葉に全員が納得する。
つまりはそういう事だ。
うちの母さんは昔から物事を伝えるときに過程をすっ飛ばして結果だけをいう事が有るのだ。
別に毎回そう言うわけでは無い。そういう事が偶にあるのだ。
そして今回がその「偶に」だったという事だ。
つまりは・・・。
「何で家に居候する事になったのか、大和兄さんも知らないと・・・」
「・・・・ああ、すまん」
そう言って頭を下げる大和兄さん。
別に大和兄さんが頭を下げる事では無いと思うんだがな。
だって結果だけしか言わなかった母さんが悪いんだし。
いやでも待てよ、それだと幾つか疑問が・・・。
「なあ大和兄さん」
「今度は何だ?」
「兄さんは何も知らないんだよな?じゃあ何で年齢とか胸の大きさとか知ってたんだ?」
「それは俺も気になっていたぞ」
「確かに」
「ついでに言えばお尻のサイズもぶふぅぅぅ!」
馬鹿眼鏡を殴って黙らせる。
こいつ相変わらずしぶといな・・・・。
「・・・母さんが」
「あっ?」
兄さんが目を逸らしつつ小さな声で語りだす。
「母さんが、何故かそこら辺の事だけ詳しく言って慌てて出かけて行ったんだ」
「「「・・・・ああ~」」」
うん、OK把握した。
てか母さん、容姿の説明とかよりももっと説明することがあるだろう・・・。
「まあ、母さんだし」
「うむ、母さんだしな」
「お母さんだしね」
「まあ母さんだったら仕方ないですよね」
「倭人、復活早いな」
そう言って全員が一通り納得したところで本題に入る事にしよう。
「でっ、どうするよ」
「どうするって、何をですか?」
倭人がよく分らないと言った風に見てくる。
溜息を吐きながらそれに答えることにした。
「その女の子についてだよ、明日来るんだろ?だったら色々と準備しなきゃならないだろう?」
「確かにな、先ほど万葉が言ったように部屋も用意してやらねばならんし」
「歓迎会も開いた方が良いのかな?」
「成程、色々とやる事があるという事ですね」
俺や日本兄や万葉の説明を受けて納得する倭人。
だが、大和兄さんはそれを見て少し微妙な顔をしていた。
「なあお前たち、私が言うのも何だがいいのか?」
「何が?」
「ムッ?」
「いやだからな・・・」
そう言って何とも言えない表情で俺たちを見渡した後、意を決したように言う。
「そのな、明日から赤の他人が住むという事に反対と言うか、嫌悪感というかそう言うものが無いのかと・・・」
・・・ああ、そう言うと事か。
大和兄さんが言いたいことはわかったが、俺たちが言う事は決まっている。
「大和兄さん」
「兄さん」
「大和兄ちゃん」
「お兄さん」
俺たちは大和兄さんを見据えて同時に口を開く。
『だって、もうどうしようもないだろ(でしょ)?』
「・・・・それもそうだな」
溜息を吐きながらも愚問だったと言う風に苦笑いを浮かべて肩をすくめる大和兄さん。
そう、もう今更どうしようもないのだ。
何故なら、母さんはもう家で預かると言ってしまっているのだ。
母さんは普段はおっとりしていて滅多に怒らないし息子たちの我儘も結構聞いてくれる人だが、妙に頑固なところがあり
一度言ったら聞かない時がある。
そして俺たちは分っていた。その言っても聞かない時は結果だけ先に言う時だという事を。
「でだ、まずその女の子を迎えるにあたってしなければならない事は」
「はい新羅兄ちゃん!」
「何だねエロ馬鹿眼鏡君」
「いきなり可愛い弟にすごい暴言!?」
いやだって可愛くないし、と喉まで喉まで出かかった言葉を苦労して飲み込む。
言ったら多分またウザくなるので。
「なんだよ意見があるなら早く言えよ3文字以内で」
「三文字で言えるわけ無いでしょう!僕の扱い酷くないですか!?」
「日頃の行いじゃないかな?」
「否定する材料が皆無だな」
「全くだ」
「兄弟全員酷い!?」
いやだってお前の日頃からの行いが最悪だし、と喉まで出かかった言葉をまたしても苦労して飲み下す。
言うとやっぱりウザくなると思ったからだ。
「でっ?どんな意見が有るんだよ早く言えよ」
「わっわかりましたよ・・・」
ゴホンッと軽く咳払いしてから倭人は胸を張って語りだす。
「まず相手は女性、つまりは異性だという事を考えなければなりません」
「ふむ?」
「普段僕たちは母さんを除いて全員が男性と言うむさ苦しい環境で暮らしています」
言い方はあれだが何だかマトモな話っぽいぞ。
「ふんそれで?」
「当然僕たち男と女性では必要な物が異なったりします、なので女性にとって必要な物がこの家には無いと
いう事もありえます」
「・・・・・・」
何故だろうか、また嫌な予感がしてきた。
兄さんたちも同じなのか何だか微妙な目で倭人を見ている。
「それで倭人君、お前は何が言いたいんだ」
「つまりですね、予め女性に必要そうなものを買っておいた方が良いと思うのですよ」
あっ何だか読めてきたぞ。
「それで?お前は何が必要だと思うんだ?」
「フッフッフ」
聞きたくなかったが仕方ないので促してみると待ってましたと言う感じで変な笑いをもらした。
何だか無性にこいつを殴りたい。
「僕たち男に必要なくて女性に必要な物、それは!!」
「それは?」
「そうそれは、ブラジャーです!!!!!!」
エロ馬鹿眼鏡が力強く拳を握りしめながら立ち上がり宣言した。
俺たちは予想通り過ぎる主張にガックリと肩を落とす。
「僕たちになく女性にあるモノそれはつまり胸、おっぱいです!!しかしながら僕たちは基本男所帯な上に
母さんに至っては普通サイズとはかけ離れたモノをお持ちになっている・・・故に必要な時に体にあった
ブラジャーが無いと言う非常事態が起きてしまうかもしれません!!!だからこそ今のうちに僕たちが
ブラジャーを買い予めストックしておいて何時でも使えるようにしておくのです!!!」
余りにもあんまりな言い草に何だかもうこいつとの縁を今すぐたたっ斬りたくなるがそれを何とか我慢して
一応質問を続ける。
「そうか、それでサイズの方はどうやって調べるんだ?」
「ふっ何を言っているんですか新羅兄ちゃん、そんなものは大和兄さんが知っているでしょう!」
「いや知らんぞ」
「・・・・・えっ?」
目が点になり固まる倭人。
ああ、こいつやっぱりバカだ。
「私が聞いたのは容姿ぐらいでそもそも友人の娘とはいえ他人の胸のサイズを母さんが知っているわけないだろう、見た目胸が
大きいといった具合だ」
「えっえっえ?」
「大体、自分の下着位自分で用意してくるだろう」
「それにな」
俺はゆっくりと立ち上がり倭人の肩を全力でつかむ。
無論逃がさないためにだ。
肩を掴んだとたんに倭人の顔が面白いくらいに歪み青くなる。
「そもそもの問題として、いきなり赤の他人が自分用の下着用意してたら」
「よっ用意していたら?」
「ただ只管に、不気味で気持ち悪いだけだろうがぁぁぁ!!!!
「おぶぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
迷いなく全力で倭人の顔面に教育的指導を行った。
倭人はそのまま床を転がり壁にぶつかって仰向けに倒れた。
そのままピクリとも動かない。
「・・・・やりすぎたかな?」
「いや、倭人にはいい薬だと思うぞ」
「寧ろこれでも反省してないと思う」
「・・・」
日本兄と万葉が倭人を冷たい目で見つめ大和兄さんが処置なしと言った風に無言で首をふる。
兄弟全員にこんな扱いをされる倭人に少し同情しかけるが、自分もそういう扱いをしている事と日頃の行いを思い出してやっぱりやめる。
「変態はとりあえずおいといて他に意見はあるか?」
「はい新羅兄さん」
今度は万葉が挙手する。
まあ万葉なら大丈夫だろう。
俺たちの中で一番真面だし、精神的に大人だし。
・・・末の弟が一番真面で大人なのってどうなんだろう。
んっ?大和兄さんは真面だろうって?
・・・見た目で騙されてはいけない、実は彼にも人には言えないモノがあるのだ。
っとそんな事は今は置いといて、今は万葉の意見を聞こう。
「はい万葉、意見をどうぞ」
「はい兎にも角にもとりあえず部屋の用意をしてあげた方が良いと思います」
そう言って至極真面目に意見を繰り出す。
「明日からここに住むという事はもうどうしようも無い事だし、本人も納得済みの事だと思うけどやっぱり
自分のプライベートエリアはやっぱり欲しいと思うんだ」
「フムフム」
ヤバイ、さっきの変態と違ってすごく真面な意見だ。
「母さんが居るとはいえ基本的に男ばっかりだし女性一人で見知らぬ家に来る負担って言うのはすごいと思うし
せめて一人になりたいときは一人になれて気を抜ける所をできるだけ早く用意してあげた方が良いと思うんだ」
「・・・・」
ヤダ、弟がしっかりし過ぎててダメになりそう。
「それにさっきの倭人兄さんの言う事も一理ある気がするんだ」
「へっ?」
まっまさか万葉君、君もブラジャーとか言い出すんじゃ。
「下着類や衣服は自分で用意すると思うから、タオルとか食器類は新しいものを用意しておいた方が良いと思うんだ、多分
女性なら男が使っていたタオルとか食器類は余り使いたくないと思うから」
「・・・・」
「それとこの近辺の道案内もしておかないとね、一人で買い物とか行くこともあるだろうしある程度近所の地理を把握しておいた方が色々と
便利だし、後最寄り駅の場所とその近くにある施設とかも案内しといたら此方で友達が出来たときに戸惑わなくてすむね」
「・・・・」
「それに学校にも案内しなきゃね、新羅兄さんと同い年と言うことは同じ学校に通うことになるかもしれない、というかこの近くの学校と言ったら彼処しかないし、と言うことは学校の先生についてや人間関係についても説明をしておいた方が後後の人間関係もうまくいくと思う」
「・・・・・」
「それとその人の勉強の進行具合も聞いておいた方が良いと思う、新羅兄さんの学校よりも進んでいたら問題ないけど遅れて
いたらちょっと困るし勉強の範囲もフォローできるように準備を」
「万葉ストップ、ちょっと待て!」
「?どうしたの新羅兄さん?」
万葉が可愛らしく首を傾げる。
その仕草に少し躊躇うが言わなければならないと思い直し、重い口を開く。
「・・・・万葉、兄ちゃんな本当はこんな事言いたくないんだけどさ」
「?」
「これは万葉の為を思って言うんだぞ、決してお前が嫌いとかそう言うわけじゃ無くてな?」
「うっうん?」
「気が利きすぎて気持ち悪い」
「兄さん!?」
万葉が何故!?と言う様な目でこちらを見てくる。
いやむしろ俺の方が何故分らない?と言いたいのだが、可愛い弟にそんな事は言えないので別の手を使う事にする。
「落ち着け万葉、これから兄ちゃんの言う事をしっかりと聞いてくれ、そうすれば俺の言った事が理解できるから」
「うっうん」
「さっき万葉が言ってた事さ、自分がやってもらったらどう思う?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
万葉が固まり俺も沈黙する。
万葉は倭人と違って頭はいいと言うか常識はある。
だから今自分が言った行動を他人にしたらどうなるか、それはわかるのだ。
だから、万葉が泣きそうな顔でこちらを見てくるのは想定内なのだ。
「にっにいさん」
「うん、何だ万葉」
「違うんだ、これはちょっとした間違いで」
「大丈夫だ万葉、わかってるから」
「本当に違うんだよ!?僕は決して倭人兄さん(変態)と同じ様な気持ちで言ったんじゃなくて!!」
「わかってる、わかってるから」
「僕は倭人兄さん(変態)とは違うんだぁ!!」
そう言って机に顔を埋めてしまった万葉にそっと近づき肩に手を置く。
「大丈夫だよ、兄ちゃんはちゃんとわかってる万葉は倭人(変態)とは違うもんな」
「・・・・・」
「ただちょっと気を利かせすぎただけなんだよな?大丈夫、お前が良い子だってことは兄ちゃんが一番分ってるから」
「・・・・本当?」
そう言って万葉が机から顔を上げて涙目でこちらを見上げてくる。
少し泣いたせいか目元が少し赤く、涙で目が少し潤んでいる。
元々が女の子見たいな線の細い体つきで髪の毛もサラサラ、薄い唇に少し垂れ気味な目な上に顔が元々女の子の様なと言うか女の子に見える顔立ちなので(更に言うならスカートを履いても違和感がない)何だか小さい女の子を泣かせてしまったような罪悪感を覚えてしまう。
「ああ本当だ、万葉はいい子だって事は兄ちゃんが一番分ってるから安心しろ」
「・・・・・」
「変態は、日本兄と倭人だけだって分ってるから」
「おい待て、そこの変態と同列とは納得いかないぞ俺はイエスロリータノータッチの精神に則ってだな」
「「黙れ変態」」
「!?」
俺と大和兄さんの同時ツッコミを受けて日本兄は黙る。
ちなみに俺の認識ではここでは言っていないがこの変態の括りに親父と大和兄さんも入る。
何度も言うが彼には人に言えない性癖があるのだ、残念ながら。
そして我らが親父にも・・・・。
「だから安心しろ万葉、お前は俺の自慢の弟だ決して変態なんかじゃない」
そう言って安心させるように笑いかける。
それでも万葉は涙目でこっちを見ていた。
「本当にそう思ってる?」
「ああ思ってるとも」
「本当の本当に?」
「ああ、当たり前じゃないか」
万葉は今だに涙目で俺を見てくるので目を見てこちらの気持ちが伝わるように言う。
「万葉は俺の大切な、大好きな弟なんだから」
「!?」
俺が思ったままの事を言うと万葉は顔を真っ赤にする。
何この可愛い生き物。
「あの、何ですかこれ・・・・起きたら二つ上の兄と弟が恋人同士見たいなやり取りしながら見つめあってるんですけど?」
「倭人静かに、今いい所なんだ」
「いや何言ってるんですか大和兄さん!?てかそのビデオカメラ何ぶふぅ!?」
横から何か失礼な言葉が聞こえた気がしたが気にしない。
今大事なのは万葉を慰める事だ。
「だから大丈夫だ、例え他の誰が万葉の事を何と言おうとも俺だけは万葉の味方だから」
「・・・・・ゃん」
「ん?」
「お兄ちゃん!!」
そう言うと万葉は俺の胸に飛び込んできた。
俺はそれをそっと抱き止める。
「僕変態何かじゃないよね!倭人兄さんなんかと同じじゃ無いよね!?」
「あれ、今実の弟にディスられた気がしたんですけど気のせいですよね?」
「当たり前じゃないか、お前は倭人(変態)なんかと同じじゃ無いよ」
「今確実に実の兄にディスられたんですけど怒っていいですよねこれ」
「やめろ倭人(変態)、それで怒るのは筋違いだ」
「何でですか!?後僕の名前の後に(変態)って言うのやめてもらえます?!」
「おいそこの変態ども煩いぞ、私の『ドキドキ・新羅×万葉 禁断の兄弟愛』に余計な雑音が入ったらどうする編集が面倒なんだぞ」
「「あんたは何やってるんだ!?」」
外野が何か騒いでいるが今はどうでもいい。
そんな事よりも万葉を愛でる・・・・基、慰める事の方が大事だ。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!」
「大丈夫だ、万葉は変態じゃない・・・万葉はいい子だ、倭人と違って俺の自慢の弟だからな」
「そうやってさりげなく僕ディスるのいいかげんにやめましょうよ!?」
「だからうるさいって言ってるだろうこの変態がぁ!!」
「いやさっきから言おうかと思ってましたけど大和兄さんも変態ですよね!?」
「なんだとぉ!?」
「弟二人がイチャイチャしている所をビデオカメラにとって悦に入っているのだから言い訳はできんな」
「黙れロリコン!大体なぁこれはイチャイチャしている所を撮っているのではない、ただ弟たちの成長記録を撮っているだけだ主にBL
的な意味でっ!!!」
「やっぱり変態じゃないですけぁぁ!!!」
「お前が言うな倭人」
「日本兄さんも黙っててください!!」
ああ・・・・何だか気づかないうちに周りがカオスになっている気がする。
だがそんな事はどうでもいい、万葉の可愛さに比べれば全ては些末事
アーッ!!!!
『っ!?何事!?』
突然、男のあれな声がリビングに響いた。
何事かと思い俺たちは周りを見渡し、直ぐにその発生源に気付く。
それは、母さんが忘れたいった、
母さんの携帯電話だった。
『・・・・・・・』
アーッ!!!!
俺たちが沈黙している間にも携帯は聞くに堪えない男の叫び声を上げている。
それも感覚が割と狭い。
てか母さん・・・・
『携帯の着信音は切っておけって言ったのに・・・』
俺たちはそろって頭を抱える。
そう、母さんの携帯の着信音はすべてアレな内容なのだ。
これの他にも、すごく耳触りのいいイケメンボイスで「俺のモノになれよ」と言う声とその後に気弱そうなイケメンボイスで
「ああっ!そっそこはっ!!」とかボイスが流れてアレなやり取りになったり、ただ単純に男前ボイスで「やらないかっ?」と
流れたり、とにかく男同士のアレ(・・)を連想させるボイスが詰め込まれているのだ。
「・・・・どうするよ、これ?」
聞こえてくるアレなボイスは着信から結構経っているのに黙る気配が無い。
かと言ってこんなアレなボイスが出ている携帯には余り触りたくはないと言うか、母親の携帯だしな。
「放って置くしかないんじゃないでしょうか?母さんの携帯ですし」
「うむ、下手に触って余計な事になっても困るしな」
「そうだね、放っておいた方が良いと思うよ」
「そうだよなぁ」
俺を含めた四人が同じ結論に至るが、
「待て弟達よ」
そこで大和兄さんが待ったをかけた。
「どうしたんだ大和兄さん、何かまずい事でも」
「ああ、まずい・・・あれは放って置くことはできないことが今わかった」
「はっ?」
「あれの、画面を見て見ろ」
「画面って・・・・っ!?」
そこで俺たちは気づいた。
その画面には発信者の名前がはっきりと記してあった。
霧島 卑弥呼。
俺たち兄弟の母親の名前だった。
「・・・・そう言えば、母さんって二台持ってたっけ携帯」
「うむ、二つあれば一つ忘れても大丈夫とか言う意味の分からない理論だったな」
「と言うか何であの人自分の携帯にかけてるんですか・・・・」
「様が有るなら僕たちの携帯か家の電話でも良いのにね」
「恐らくだが・・・・電話帳の一番上にあったからだろう」
大和兄さんの言葉に納得すると同時に脱力した。
母さんは、持って行っている携帯の方にもう一つの携帯の番号を『お母さん』と登録しているのだ。
・・・・色々と突っ込みたいがもう慣れてしまった事なので今は置いておくことにする。
問題は、あの携帯に誰が出るかだ。
何故そこで悩む?等と考えてはいけない。
これは間違いなく、厄介事だ。
この家族で過ごしてきた年数が告げている。この電話は出てはいけない。
いやまあ家族なので出なくても帰ってきてからひどい目に会うのは分っているそもそも出なければ話が進まないも
分ってはいるが出たくない。
例え誰が出ても結果が変わらなくても、俺は出たくない。
「・・・・倭人お前出ろよ」
「はっ!?何で僕が」
「倭人兄さん、偶には役に立ってよ」
「万葉!?」
「そうだぞ変態、お前ができる事と言ったら電話に出て対応することくらいだろう?」
「日本兄さんそれは酷すぎません!?」
「倭人」
大和兄さんが満面の笑顔で倭人に近づき両肩に両手を置く。
「がんばれよ」
「アンタら鬼かぁぁぁぁぁ!!!!」
倭人の叫びが木霊する。
だが俺たちはそれを生暖かい笑顔で見ていた。
「いやなんですかこの空気!?もう完全に僕が出る事が決定したみたいな感じやめてくれません!?」
「倭人何言ってるんだ、みたいな感じじゃなくて決定してるんだぞ?」
「より酷い!!」
「頑張って倭人兄さん、大丈夫、誰が出ても結果は変わらないから!!」
「じゃあ僕じゃなくてよくありません!?」
「誰も、死刑宣告を自分で聞きたいとは思わんだろう」
「それを弟に聞かせるのはいいんですか!?」
「何でもいいが早く出ろ倭人、母さんがそろそろ怒るかもしれん」
「だぁぁぁもう!わかりましたよ出ますよ出てやりますよ、出ればいいんでしょうこんちきしょー!!!」
そう言うと倭人は肩を怒らせながら携帯に向かう。
すまんな、倭人・・・俺は最初に聞くのは何だか嫌だったんだ。
例え結果が変わらなくてもな!!!
・・・あっヤバイ今すぐ一週間位家出したい。
そう思ってると倭人が電話にでて話をしていた。
最初の内は普通に話していたのだがその顔が段々と面白位に青くなっていく。
どうしたと言うんだ?
「・・・・えっ、ちょっと待ってください母さん、そんなの聞いてないんですけど・・・えっちょっと待ってホント待っていやだから
もっとちゃんとした説明を!!!って母さん?・・・・母さん!!!??」
電話が切れたのか携帯を耳から話して呆然とする倭人。
その顔色はやっぱり青い。
本当にどうしたんだこいつ?
「おいどうしたんだよ倭人、珍しく顔色が悪いぞ」
「・・・・・来るって」
「はぁっ?」
何が、と言う言葉の前に倭人が告げる。
「大和兄さんが言ってた女の子が、今から来るって・・・・」
「「「「・・・・・」」」」
「しかも、そのまま本格的に居候するって・・・・」
「「「「・・・・・はっ?」」」」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
その瞬間、俺たちの声は見事にハモった。
その頃の母と女の子
「陽子ちゃん、待たせてしまってごめんなさいね?」
「いえ、そんな事は」
電話を掛けると言ってどこかに行っていた卑弥呼さんが帰ってきて私はほっと息を付きました。
何も知らない街、初めて来た街。
その中で唯一の知り合いである卑弥呼さんが戻ってきて実の所私は安心していました。
私、月ヶ瀬 陽子は両親が仕事の都合で海外に行くとなった時に一緒に行くことになっていました。
けれど私はこの日本から離れたくない理由があり、しかしその理由は両親に話せないものでした。
そう、好きな漫画が今から行く国では刊行されていないのです。
だけどそんな理由で外国に行きたくないと言っても「ふざけてるのか」と言われるのは目に見えています。
それでも話せないながらも何とか両親を説得して何とか日本に残れるように努力をして、その努力を後押ししてくれたのがこの卑弥呼さんでした。
その日、私たちの家に卑弥呼さんが久しぶりに訪ねてくださいました。
卑弥呼さんは私が小さい時分からよく家に遊びに来たり母と私と三人でお茶をしたりとよくお会いしていたので、よく知っている方です。
卑弥呼さんは5人の男の子を生んだとは思えないぐらい若々しい外見で小さい時は「卑弥呼お姉ちゃん」と呼んでいました。
流石に今ではそう呼びはしませんが、今でもそう呼んでも違和感が無いくらいの若々しさを保っています。
卑弥呼さんは母と学生時代からの友人らしく、とても仲がよろしいです。
そんな卑弥呼さんは昔から私にも優しく、よく相談にも乗ってくださいます。
だから私は、つい昔からの癖で困り事を卑弥呼さんに相談してしまったのです。
私は、外国に行きたくないと・・・。
すると卑弥呼さんは、
『じゃあ、うちに来る?』
そう言ってくださいました。
私は一瞬止まってしまいました。
だって外国に行きたくないと言ったら次の瞬間に『うちに来る?』と言われてしまったのです。
混乱している私を余所に卑弥呼さんはキッチンから戻ってきた母と楽しげに話されてその勢いのままに私を家に預かると母に言ってくださったのです。
するとどうでしょう、母は今まで私が行きたくないと言っても聞かなかったのに。
『そう?ひ~ちゃんが預かってくれるなら安心ね!』
そう言って申し出を快諾したのです。
・・・・正直に言うと子として、親がそう簡単に娘を男の子が五人もいる家庭に預けていいのかと思わないこともありませんでしたが、それ以上に日本に残れるという事が嬉しくて仕方がありませんでした。
そう・・・私は日本に残らなければならなかったのです。
だから、卑弥呼さんにはいくら感謝してもたりません。
そして卑弥呼さんは私がお礼を言うと、
『いいのよ、気にしないで』
とほほ笑んでいってくださいました。
卑弥呼さんはきっと天使です!
「それにしても陽子ちゃんがうちに来るなんて初めてね」
「そうですね」
そう言われて、少し不思議な感じがしました。
卑弥呼さんはよく私たちの家に訪れていたのは先ほども言った通りですが、実は私たちが卑弥呼さんの家にお邪魔したことは一度もありません。
そう言えば子供の頃に一度卑弥呼さんに「卑弥呼お姉ちゃんのお家に言ってみたい!」と言ったところ卑弥呼さんは「いっ何時かね」とすごく困った顔をして言っていたのを思い出しました。
何故あの時あんなに困った顔をしていたのでしょうか?
「・・・・初めて?」
「?どうしました卑弥呼さ」
私は最後まで言えませんでした。
私の隣で卑弥呼さんは、完全に、まるで石像のように固まっていたのです。
「ひっ卑弥呼さん?」
「・・・・陽子ちゃん」
卑弥呼さんが笑顔を浮かべて優しげな声で私に話しかけてきます。
ですが、その笑顔は何だかすごく硬い笑顔でした。
だって頬がひくひくしてますし。
「何ですか?」
「陽子ちゃんて、私の、息子たちに会った事ってあるっけ?」
「いえありませんけど」
一度も家にお邪魔したことが無いので、後一度も卑弥呼さんが息子さんたちを連れてきたことが無かったので。
そう言った時卑弥呼さんの笑顔は完全に固まりました。
「卑弥呼さん?どうしたのですか、さっきから」
「いっいえ、何でもないのよ?」
そう言う卑弥呼さんですが、表情はとてもそうは言ってません。
何だか友人の頼みを引き受けたのはいいけど後戻りできない段階になって問題点を思い出したみたいな表情をしています!
これは・・・私が力になってあげるべきですね!
いつもお世話になりっぱなしでこれからお世話になる卑弥呼さんに恩をお返しするいい機会です。
例え解決できなくても話をするだけで楽になるという事もありますし。
「卑弥呼さん!」
「なっなに、陽子ちゃん?」
「何かお困りごとでもあるのですか?あるのだったら私に言ってください!!」
「うっ・・・べっべつに困り事なんて」
「ウソです!だって卑弥呼さんすごく困った顔をしています」
「・・・・」
「お願いです卑弥呼さん、私では力になれないかもしれませんけど、話をするだけで楽になるという事もありますよ?」
そう言って卑弥呼さんを見る。
こういう時は誠意が大事です、誠意をもって接すればきっと話してくれます!
しばらく見つめていると卑弥呼さんはやがて、観念したように溜息を吐きました。
「陽子ちゃんには敵わないわね」
「いえそんな」
「わかったわ、お話ししますでもその前に聞きたいことがあるのだけれど」
「なんですか?」
そう言うと卑弥呼さんが真面目な顔で私を見てきます。
これは、きっと真面目なお話に違いありません!
「陽子ちゃん」
「はい!」
「あなた・・・BL・・・基、男同士の恋愛を見て興奮する男ってどう思う?」
・・・・・いきなり、ハードルが高かったです。
「・・・・へっ?」
「男同士だけじゃないの、女性同士の恋愛も見ていて興奮するの・・・それってどう思う?」
「どう思うと言われても・・・」
・・・え~と卑弥呼さん、あなたは何がいいたいのですか?
と言うか何を言わせたいのですか?
「え~と、卑弥呼さん?」
「ごめんなさい、忘れて・・・」
そう言うと卑弥呼さんは目を逸らしてしまいました。
何という事でしょうか、私はお役にたてなかったようです。
「ごめんなさい卑弥呼さん・・・私ではお役に立てなかったようで・・・」
「いえそんな事ないわ!気にしないで!!」
そう明るく言ってくれる卑弥呼さんですが、どうも無理しているのが分ってしまいます。
ああ、私はどう答えればよかったのでしょうか・・・。
「あの陽子ちゃん、もう一つ質問していい?」
「!どうぞ!!」
卑弥呼さんがまたお話ししてくれるようです!
今度こそ期待に応えなければ。
「あの、ね」
「はい」
言いよどむ卑弥呼さん、余程話しにくい内容なのでしょうか?
「・・・・ろりこ、小さい女の子が好きな男ってどう思う?」
「へっ?」
不覚にも間の抜けた声が出てしまいました。
ごめんなさい、ホント何て言ったらいいかわかりません。
「ええと、つまりは子供好きと言う」
「ごめんさい、忘れてお願い」
ああっまた申し訳なさそうに目を逸らされてしまいました!
何という事でしょう、敬愛する卑弥呼さんの期待を二度も裏切ってしまいました・・・。
私は何と答えたらよかったのでしょうか、自分の到らなさに自己嫌悪に陥りそうです。
「何度もごめんなさい陽子ちゃん、後二つ良い?」
「任せてください!」
何と!!卑弥呼さんがまた私に機会をくださいました。
こうなれば今度こそ卑弥呼さんの困りごとを払しょくできるちゃんとした意見を!!
「・・・弟を溺愛し過ぎる兄とそんな兄が大好きすぎる弟がいて、イチャイチャし過ぎて時々付き合ってるんじゃないのこの子たち?って思う位仲がいい兄弟ってどうしたらいいのかしら?」
「・・・・」
何て、答えたらいいのでしょう?
私にはわかりません。
「それとね・・・」
「はっはい」
「四六時中おっぱいとかパンツとか言う変態ってどうしたらいいと思う?」
「とりあえず警察を呼んでください」
私の手には余ります。
「ごめんなさい、今まで話したことは全部忘れて頂戴」
「あの、多分無理です」
話の内容が余りにも奇抜すぎて頭を抱えている卑弥呼さんには悪いのですが、どうも忘れられそうにありません。
「・・・陽子ちゃん、本当に何度も悪いのだけれどこれが本当に最後だからいい?」
「はい?」
何だか嫌な予感がしますが、卑弥呼さんが最後にくれた機会です!今度こそは!!
「今までの例で言った全員が家族だったら、どうする?」
本当に何て答えたらいいんでしょうか。
いや待ってください・・・もしかしたらこれは。
「・・・成程、そういう事ですか」
「よっようこちゃん?」
「大丈夫です卑弥呼さんこの月ヶ瀬陽子、全て承知いたしました」
つまりこれは、試練ですね!!
卑弥呼さんの今までのよく分らない質問、これは私を試すための問題。
そう、私がどのような回答をするかによって私の人間力を測ろうとそういう事ですね!!
ああ!何という事でしょうそんな事も気づけずに私何と愚かしい!!
しかしわかったからにはどうという事はありません、だって試練なのですから答えはあるはずです!!
・・・まあその答えが今まで分らなかったのですが。
いや待ちなさい陽子、昔お父さんが言っていた事を思い出すのです!
そう、私がどうしても分らない問題にぶつかった時にお父さんはいいました
『諦めていいんじゃね?』
チョイスを盛大に間違えた様です。
お父さん何の役にも立ちません。
そうです、仕切り直しです。
そうです陽子、昔お母さんが言っていたことを思い出すのです!
そう、私がどうしても分らない問題にぶつかった時にお母さんは言いました。
『諦めてもいいんじゃない?』
またもチョイスを盛大に間違えてしまいました。
お母さんも役に立ちません。
そうです、思い出すのです陽子・・・昔偉大なる師父ブルー○・リーが言った言葉を!
『ア○リカこそが、世界最大の汚職国家だよ』
違います。言った人すら違います。と言うか今の状況と欠片も関係ないです。
ええい、もうこの際誰かの名言を頼りにするのはやめましょう。
そう、考えて答えが出ないそんな時は!
考えずに感じればいいのです!!!
・・・何故でしょう、無意識に正解を引き当てた気がしましたが気のせいという事にしておきます。
考えずに、感じたままの答えを言えばきっと卑弥呼さんは私を認めてくれます!!
私が考えずに感じた答え、それは・・・。
「家族ならば、認めてあげればいいのではないでしょうか?」
「・・・・」
「例えカップリング厨でもロリコンでも度が過ぎた兄弟愛でもどうしようもない変態でも、それが家族ならば私は受け入れます」
「どうして?皆変態には変わりないのよ?」
そう、家族ならば私は受け入れます。
だってそれは・・・
「だって、変態なだけがその人ではないのでしょう?」
「!!」
「人間、変態な部分はあるのかもしれません・・・けれどその人たちは変態なだけがその人たちではないのでしょう?」
「それは・・・」
「そう、きっと変態にもいい所は有る筈です!」
例えそれが圧倒的に変態な部分が目立っていいところが霞んでしまっても、必ずいいところは有る筈です!!
「私は、そう思います」
「・・・・」
「卑弥呼さん?」
最後まで言い終えると何故か卑弥呼さんが目頭を押さえていました。
一体どうしたのでしょうか?
「陽子ちゃん」
「はい?」
「あなたは天使?」
何故ですか。
その頃霧島家
「おいぃぃぃぃ!!どうすんだこれ!?出迎える準備なんて一つもできてねえぞ!?」
「馬鹿な!!確かに明日来ると言っていたぞ!?」
「何だかなんやかんやあって早まったって言ってました」
「なんやかんやってなんなのさ!?」
「『なんやかんやは・・・なんやかんやよ♪』って言ってました」
「母は33分持たせる気の様だな」
「持たせんでいいわぁ!?いや明日までは持たせてほしかったけど!!」
俺たちは混乱の最中にあった。
だって明日来ると言われていた少女が急遽これから来ることになったので。
有ると思っていた余裕が無くなる、これで焦らない人間はそうはいないと思う。
しかし、マジで何すればいいんだ?
部屋の準備か、歓迎の準備か・・・と言うか準備が必要なのか?
そもそもこの件は母さんが俺たちに何の相談も無しに決めた事であってそこから発生する責任は全て母さんが取るべきでは無いだろうか?
そうだ、いっそ何もしなければいいんだ。人間なんてやろうと思えば葉っぱ一枚でも生きれるんだから準備なんて必要ないんだ!
何だ、簡単じゃないか。
そうと決まれば話は早い!
「よしっ!今日一日布団に入って寝ていよう!」
「そこぉ!現実逃避するなぁ!!!」
スコーンと言い音を立てて丸めた新聞紙で殴られた。
何故だ・・・。
「何故殴ったし?」
「お前がいきなり黙ったと思ったら現実逃避を始めたからだろうが!!」
「現実逃避?はははやだなぁ大和兄さん、俺は現実逃避何て情けない真似何てしてないよ。ただ安息を求めて夢の世界に旅立とうと」
「それが現実逃避だろうが!!」
大和兄さんが俺の胸元を掴み前後に揺するが、俺の意志は固い。
そう、夢の国が俺を待っている!!!レッツ現実逃避!!!
「お兄ちゃん、気持ちはわかるけど逃げちゃだめだよ!」
「そうだな万葉!兄ちゃんが悪かった!!」
「立ち直りはや!」
「これがブラコンの力か・・・」
「貴様らそんな事言っている場合か!!早く準備をしないとまずいだろう!!」
「いや新羅兄さんと万葉をビデオで撮ってる人に言われても説得力皆無ですから」
「皆、少し良いか?」
っと俺たちが絶賛大騒ぎしている時に静かだが良く通る声で日本兄さんが呼びかける。
「何だよ日本兄さん、何かいい案でも」
「いやそもそもの話なんだが」
そう言い一息置くと日本兄さんはぽつりと言った。
「別に、何の準備もしなくていいのではないか?」
「「「「「はっ?」」」」
何で?っと俺たちが表情を作ると日本兄さんは腕を組んで話し始めた。
「そもそも俺たちは明日女の子が来ると言われただけで何か準備しろとは言われていないだろう?」
「「「「・・・・・・・」」」」
「大体、母さんが自分で呼んだんだ準備は自分でしているのではないか?」
「そっそう言えば」
「どうした倭人?」
ワナワナと震えている倭人に視線を向けると恐る恐ると言った具合に話した。
「昨日の夜、母さんが使っていない部屋を片付けていたような・・・」
「「「・・・・」」」
「うむ、やはりな」
日本兄さんが納得して頷く。
てか待て、という事は・・・。
「俺たちの今日の騒ぎは・・・」
「全部が全部・・・」
「徒労、という事だな」
「僕は何の為に何度も殴られたんでしょうか」
『いやそれは自業自得だろう(でしょ)』
「やっぱり兄弟の扱いが酷い!!」
兄弟の納得に一人嘆く変態は放って置いて俺たちは溜息を吐いた。
「何だか妙に疲れたな・・・」
「そうだね・・・」
「全くだ」
「何故こうなったのか・・・」
「あの~皆さん、無視ですか?もう慣れたからいいけど』
「しかし、あれだな」
俺たち全員が疲れ果ててグデっとした時、日本兄さんが不思議そうに言った。
「なぜこうも俺たちは疲れ果てるまで大騒ぎしたのだろう」
「何故ってそりゃ女の子を迎える準備をしなきゃって話になって」
「だから何故女の子を迎える準備の相談だけでここまで大騒ぎをしたのだ?」
「・・・・」
急に静まり返る俺たち。
確かに、女の子を迎えると言うだけでここまでの大騒ぎしたのは何故だろう?
そう思い、不思議に答えはすぐに出た。
「それは日本兄さん、不安だからじゃないか?」
「不安?」
「そう、不安だよ」
俺たちは今まで正直な所、女性と余り関わって生きてこなかった。
大和兄さんは付き合うよりもくっつくのを見る方が好きだったし、日本兄さんはロリコンだし、倭人は変態の癖に初心だから女性と余り関わる機会が無かったし、万葉は実は家族以外には人見知りするので友人自体が少ないから異性と関わるなんてことも余りなかった。
皆それなりにモテるのにな。
俺?俺は・・・まあ聞かないでくれよ、軽く鬱になるから。
そんなわけだから女性自体に余り免疫が無い俺たちにとっては女の子と同棲すると言うのは、別の家でもそうなんだろうけどかなりの大事件だったのだ。
「だからさ、俺たちは全員慌ててしまったんだと思うぜ?」
「・・・そうか」
「そうだね」
「そうですね」
「まあ、そういう事だな」
全員が苦笑いを浮かべる。
少し気恥ずかしかった。
まさか全員が会う前の少女に振り回されることになるとは・・・。
「・・・ねえ、兄さん」
「何だ万葉」
そんな時、万葉が酷く真面目な表情でこちらを見てきた。
何だろうか?
「僕たちが不安に感じてたって言うのはわかったけど、それじゃあ今から来る女の子も同じじゃないかな?」
「それって・・・ああっ」
そこで、やっと気づく。
俺たちは今まで見ず知らずの少女が来ることに不安を感じていたけど、
それじゃあ、これからくる女の子は?
両親とは離れて一人、見ず知らずの家にいきなり一人で住むことになる。
しかも恐らくは母さん以外の全員が初対面なのだ。
下手すると、いや間違いなくそっちの方が不安は大きいだろう。
「そっか、不安だよな」
「そうだよね」
どうするか、そう皆に問おうとしてやめる。
俺が言おう。
「なあ皆」
「なに?」
「はい?」
「むっ?」
「何だ?」
「その子が来たら、皆で笑顔で迎えないか?」
たった一人で来た女の子だけど。
一人じゃないと伝えたい。
きっと不安だろうけど。
大丈夫だよと伝えたい。
怖がられるかもしれないけど。
怖くないと伝えたい。
方法なんて分らないし、考えてる時間も余りないだろう。
だから、取り敢えず最初はせめて、笑顔で迎えてあげたい。
だってこれから一緒に生活するのだ。
仲良くやっていきたいじゃないか。
そう思い、兄弟たちに言う。
そう言うと、
皆言った。
『そうだな(ですね、だね)』
「さあ、ついたわよ!」
「ここが・・・」
そこは、普通の民家よりも少し大きい一軒家でした。
家族7人が住んでいると聞くと少し手狭な気もしますが、これで十分なのだそうです。
その家を見ながら私は少し不安になっている自分に気が付きました。
卑弥呼さんの息子さんたちと、仲良くできるかを。
両親から離れ、卑弥呼さんのお家に厄介になる事を決めた私ですが、やはり不安です。
初対面の人たち、それが五人も、しかも全員が男の子です。
正直に言いますと、私はかなり不安になっていました。
そんな私の肩に卑弥呼さんはそっと手を乗せてくださいます。
「大丈夫よ陽子ちゃん、私の子たちは皆いい子だからね?」
そう言って、静かに微笑んでくださいます。
不安を取り除くように。
「卑弥呼さん・・・」
「まあ性癖に若干の問題は有るけれど」
「何か言いましたか?」
「いいえ、何も言ってないわよ?そんな事よりも早くお家に上がって!息子たちも待っていると思うから」
そう言って私を促す卑弥呼さん。
・・・そうですね、ここで不安がっていても何も始まりません。
ここが今日から私がお世話になるお家、ならば私はここで頑張ります。
頑張ってここのお家の、霧島家の5兄弟と仲良くなって見せます!
覚悟を決めてドアの前まで立って。
卑弥呼さんに進められてドアノブに手をかけて。
ゆっくりとドアノブを廻して。
扉を開けた、そこには。
『霧島家へようこそお嬢さん!これからよろしくお願いします!』
真面目そうなお兄さんが、ちょっと怖そうなお兄さんが、私と同い年くらいの男の子が、メガネをかけた少年が、女の子の様な少年が、
みんな、笑顔でそこに居てくれました。
だから私も、その笑顔に答えようと思い、
不安もあるけれど、この人達となら大丈夫だと信じて、
笑顔を、返します。
「月ヶ瀬陽子です!今日からよろしくお願いします!」
最後までお読みいただきありがとうございます!