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プロローグ
「いいかい、あのお山の上のお屋敷には、決して近づいてはいけないよ」
この村の子どもなら、必ず大人からそう言い聞かせられて育つ。
お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん。お隣のおばさんも、お向かいのお兄さんも、日曜学校の先生も、教会の神父さんも。
少しずつ言葉は違っても、皆言うことは同じ。でも、誰も皆、その理由を教えてくれない。
ただ、ダメだと言われても、納得なんかできない。
ちゃんと、理由を説明してくれなきゃ、どうしてダメなのか分からない。
ねえ、どうしてダメなの?