ぷろろー
読んで頂けたら嬉しいです。
「死ぬわけにはいかない…」
戦場を駆け抜けながらリャンは呟いた。
状況は最悪。自陣は劣勢。雨のせいで銃の狙いはイマイチ定まらない。乗る馬の足はいいように取られ、スピードが出せない。
銃をしまうと馬の脇につけといた弓を取り出す。そして背負っている矢を手に持ち構える。
自分はひとり敵陣を走っている。向かうは自陣。一緒だった仲間はすでに全員やられていた。
林の中、敵の姿が見える。
「敵は北西217m、風は北に4m、馬の速さは40km/s、湿気多め、雨量多し」
ギシギシと軋む弓の音がする。相手はまだ気づいていない。
“シュッ”
弓の力を存分に受け、矢は雨風を切る。
「よし」
矢は敵の右目を貫いた。
あと何人やれば帰れるか。道中には何人の敵が現れるか。どれだけの時間がかかるか。
彼女に会いたい。
結婚を約束した彼女に。
その時だった。
「敵だ!馬に乗っている!」
見つかった。敵は五人。
「…くそっ」
素早く弓を構える。敵に馬はない。ここを切り抜ければどうにかなる。
一矢目。大声を出した男の足を射抜く。ミスだった。
深呼吸をして、心を落ち着かせようとする。
「集中だ、集中…」
敵も矢を放つ。ギリギリ馬の後ろにそれる。
素早く構え、二矢目。狙うは次の矢を構えた敵の眉間。
放たれた矢は一寸の狂いなく飛ぶ。
だがしかし、それは空気中で静止した。正確には、空気中に溜まった水の塊によって。
雨はその塊に寄り集まる。
理解が追いつかない。
その時、敵の弓は馬の足を貫いた。
馬と一緒に転ぶ。
素早く体制を立て直すと、目の前にはさっきまでいなかったはずの女が立っていた。
青いローブに身を包み、フードから覗く目はスカイブルーに美しく輝く。右手には珍しい細工の施されたダガー。
彼女は言う。
「あなたは、敵?」
さっきまでいた男たちの姿はもうない。
「敵なのね?」
弓を構える。早く帰らなくてはならないのだ。
「ああ、敵だろうな」
彼女は薄く笑う。
そして、彼女の言葉を最後に記憶は途切れる。
「なら、あなたは今から仲間入りね」
水の塊は弓に形を変え、さっきの矢で僕の頭を射抜いた。
彼女との約束を果たせずに僕は死んだ。
最近生きている意味は何なのかとよく考えます。なんで人は生きているのだろう?
わからないことだらけですが、これを書くことも一つの生きる意味になるかなと思います。
ぜひ感想をください。