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最初の呼び方で失敗したことがあります


 焼きプリンを食べ、ハイジは落ち着いた。

 落ち着くと、自分の起こした行為が急激に恥ずかしくなった。

――面接してもらった所に盛大にツッコミを入れながら乗り込んでしまった!

 ハイジは後悔して、赤くなった顔を隠すように足元に視線をやった。

 クロとシロも、焼きプリンを食べ終えた。

 四個入りのヤツを買っておいてよかったと思いながらも、二人は、別の事を感じていた。

「じゃあ、お茶淹れるね」

 そう言うと、シロは席を立った。

「あ、手伝います」

 シロの後に続き、クロが席を立った。

「あ、私、手伝います」

「「いいから、いいから」」

 クロとシロは、ハイジの前から一度消え、小さく声を揃えて言った。

「「なんか監視されていたみたい」」

 ちょっと変わった人が来ちゃったみたい、と二人は困惑した。



 お茶が入ったので、それを飲み、一息つく三人。

「……あの…」場の空気を慎重に読み、ここかな、とハイジは恐る恐る口を開いた。「すいませんでした」

 ハイジが、頭を下げた。

「「いえいえ!」」

 恐縮したクロとシロは、顔の前で手をブンブンと振った。

「いくら気になったとはいえ、ひそひそと盗み見るようなマネしてしまって」

「秘書 秘書と?」

「そういうの、今要らないから」

 下らないこと言うクロを、シロはたしなめた。

「まぁ、俺らだからよかったよ」クロは、急にソファーに浅く座り、偉そうにハイジにアゴを向けた。「気付いていて敢えて放置していたから、俺ら。全く気付かないようなヤツ等はともかく、ちょっと気配を感じたからってすぐに怯えて警察とかに通報しちゃうような二流ども相手じゃなくて、よかったよ ホント」

 嘘つけ、とシロとハイジは心の中で思った。

 しかし、「まぁ、はい」たしかに警察沙汰は困るな、とハイジは思った。それに、「待てなかったからというのはありますが、事前に調べなかったというのは本当に私の落ち度だと思っています」と反省していた。

「少しは調べてきてくれないと困るよ」クロは言った。「『サンタになりたい人、募集』って書いてあったからって、サンタのイメージでクリスマス以外は休みだと勘違いして応募されても困る、みたいな。事前の準備もあるし、みたいな」

――いや、うちサンタじゃねぇし、サンタの職務内容なんて知らねぇし

――てか、まず監視されていたことをつっこめよ

 シロは、つっこもうとしたがやめた。

 なんとなく、悪ふざけするバカと天然ボケの二人を相手にして、ツッコミ役に回ることは損な気がしたのだ。



「あの…すいません…」

 モジモジとした態度で、ハイジが言った。

「ん?」

「それで、面接の合否については?」

「ああ、合格だって」

 シロが言った。

 それは、今晩カレーだって、というような気軽さだった。

 その軽さもハイジは気にかかったが、それよりも気になったことがあった。

「あ、あのぅ…」

「ん?」

 意を決し、ハイジは言った。

「しゃ、社長さん」

「んん?」言われた瞬間、クロの口角がニンマリと上がった。「え、何だって?」

「すいません」

「いや、謝らなくていいから」

「以前伺った時に覚えられていなくて、というか、人の顔を覚えるのが苦手というか、頭がバカで」

「ちょ、落ち着いて」慌ててシロが言った。「まず、深呼吸でもしようか」

「深呼吸したら、リピート・カモン」

「黙れ、お前!」

『社長』と呼ばれたいだけのクロの頭に、シロの拳骨が落ちた。

 ハイジは、やっぱり、と思っていた。

 やっぱり、こっちの『クロ』と呼ばれている人の方が社長だ、と。

――社長なのに、偉くなさそう

「あれ? なぜか蔑みの視線を感じる」



「しゃ、社長さん…?」

 なんか変な感じがすると思いながらも、ハイジは言った。

「なんか変な感じがするな」とシロ。

「ふてるなよ、副・社長」

「不貞腐れているワケじゃねぇよ」

「今度、『私が社長』ってタスキをあげるから」

「黙れよ、シャチョさん」

「やめろよ、その怪しげなイントネーション」

 二人の言い合いを見て、やっぱり変だよなと感じ、ハイジは「何とお呼びすればいいですか?」と思いきって訊いてみた。

「社長で」とクロ。

「オーナーで」とシロ。

「…おい、俺より上に行こうとするな」クロは、不満気に唇を尖らせた。

「してないけど?」

「しているだろ?オーナーって支配人、支配する人でしょ」

「あ、そうなるかもなぁ」

「よくわからないけど、俺もオーナーの方がイイ。横文字がイイ」

「あの!」ちょっと怒ったハイジ。「なんとお呼びすれば?」

「……トム」とクロ。

「…ジェリー?」とシロ。

「あ、またすぐ上に行こうとする!」

「なんで? どっちが上も下もないだろう、この場合」

「いや、なんかジェリーの方が勝っているイメージだ。ずるい!」

「じゃあ、トムとか言うなよ」

「トムって、あっちだよ、クルーズの方。前のボケと繋がっているの!俺が、ファースト」

「知らねぇよ!モノ忘れ激しいくせに、そういうどうでもいい事は覚えているのな!」

 このすぐ後、ハイジは、強めの咳払いをして二人を黙らせた。



「クロです」

「シロです」

「よろしくお願いします」

「「はい……」」 


名前を間違えたら失礼だと思い、役職みたいなもので呼んだら、それも間違えてしまった経験があります。その他にも、覚えるために変なあだ名をつけて本名を覚えられなくなったり…あと……。

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