46ということでアイツの話
いつもと少し感じの違う話です。
おはようございます。
リポーターのクロです。
本日、とある理由により、俺は動いています。
何をしているのか、気になってくれるでしょうか?
気になってくれているという前提で、話は進みますよ。
実は、今日の俺は、シロの一日に密着しようと思っています。
わーわー、ぱちぱち。
さて、シロが何をしていようがどうでもいい、なんて思っているクールな方も大勢いらっしゃると思いますが、もうシロの家の前まで来ているので無視して始めたいと思います。
それでは、はじまり はじまり。
現在、朝の七時。
個人情報なので住所は言えませんが、静かな川沿いにあるアパートに、シロは住んでいます。
おやおや、目が覚めたようです。
ベッドの上で身体を起こし、寝惚け眼をこすっています。
枕元にあるリモコンを手に取り、テレビのことも起こします。
情報によると、シロは毎朝とある朝の情報番組の星座占いを見るそうです。
十一位から二位まで順に発表し、もったいぶったところで最下位と一位を言います。
さて、シロの順位はどうだったのでしょうか?
「……………」
リアクションがありません。
どうやら、良くも悪くもない、五位とか七位だったのでしょう。
こういう時、シロは、ケータイの方の星座占いや血液型占いをチェックします。
黙って運命を受け入れればいいのにと、星座占いと血液型占いの二冠を達成した俺は、しょうがないなと呆れるのでした。
パンと牛乳で簡単な朝食を済ませたシロは、朝の八時半前になると、行動を開始します。
九時開店のオープンに合わせてパチンコ屋に並ぶようです。
この日は、新台入替。昨夜のテレビCMで何度も言っていました。
シロのテンションも、若干高いように見えるのは気のせいでしょうか?
気のせいではないはずです。
シロは、蝋燭の火くらいの炎を眼に灯し、パチンコ屋に入るのでした。
何が楽しいのか、シロは、しょっちゅうパチンコ屋に足を運びます。たまに勝ったと言って御機嫌になり、食事やスイーツを御馳走してくれますが、そんなことは稀で、かなりの確率で負けて不機嫌になります。全く、理解に苦しみます。
さて、この日はどうだったのでしょうか?
シロは、一時間ちょっとでパチンコ屋から出て来ました。
不貞腐れた表情を隠しもしません。
負けたのでしょう(笑)。
パチンコを終えると、シロは出社します。
何様でしょうか、いつも社長の俺より遅く来るのです。普通なら怒るところかもしれませんが、俺は、何も言いません。今 余計な事を言うと、不機嫌なシロの怒りに油を注いてしまうかもしれませんし。
出社してきたシロは、自分のデスクに着きます。
が、何もしません。パチンコで負けたショックを引きずっているのでしょう。「あ~、くそ」と愚痴をこぼしながら、椅子にのけぞって座り、天井をぼんやり見ています。
まぁ、パチンコの勝敗に関係なく、この日も、あっ 間違った、この日は、仕事がありません。
やる事がないのだから、ヤル気のないシロの態度も大目に見ましょう。
うんうん、と満足気に頷いていたら、シロに睨まれました。
割引シールの貼った惣菜パンと野菜ジュースが、パチンコで負けた日のシロの昼食です。
昼過ぎになると、シロは次の行動を開始します。
「バイト行ってくる」
そう言ってシロは、事務所を後にしました。
普通に考えて、おかしな話です。職場に来ているのに、そこからまたさらにバイトにいくなんて。ですが、勘弁してあげましょう。このバイト収入がシロの生活を支えているし、偶然にもこの日、ウチの方には仕事がないのですから。
ということで、俺も仕事がないから、シロのバイト先まで追跡しようと思います。
シロのバイト先は、うちの事務所が入っているビルの下の階にある喫茶店です。
近場ですね。
そこでシロは、コーヒーを淹れたり軽食を作ったりするキッチン業務から注文を受けたりするホール業務まで、ほとんどのことをします。
「あ~、だりぃ」
気だるそうな動きが目立ちます。
そんなシロに、喫茶店のマスターから「おい、きびきび動け」と注意が入りました。
「オヤジ、今晩も俺 まかない欲しい方向で」
「……またギャンブルで負けたのか…」
「サンドイッチでも食べながらポーカーでもしようか?」
「はぁ~」マスターは、呆れて言葉も出ません。
勤務態度の悪いシロですが、クビにはなりません。その理由は、マスターの温情が九割、シロのモノ覚えの良さを評価されているところが一割といったところでしょう。
シロは、大概のことを一度で覚えます。教えられた仕事はもちろん、混雑時の難しい注文も、メモも取らず余裕で覚えてしまいます。2~3回しか来たことないのに調子こいて「いつもの」と注文してくる面倒くさい客に対しても、「前回も前々回も違うので、こちらとしても対応しきれません。お冷だけでよろしいですか?」と冷静に対応していました。
やる事はやる男なので、それなりに使えるのでしょう。
ところで、この職場には少し問題もあります。
「シロ、今度のフェアのアイデア、考えてきてくれた?」
ミタラシとかいう女が、慣れ慣れしくシロに話しかけて来ました。
なんでもこのミタラシさん、この喫茶店のマスターの娘さんだそうで。だからシロは、どんなに不愉快に思うことがあっても、強く言い返せません。
「考えましたよ、考えた。けど、何も思い浮かばなかった」
「ちょっと!」ミタラシさんの声が高くなりました。「絶対考えてないでしょ」
「考えたって。パチンコやっている時に、そういえばそんなことを言われていたな 程度に」
「問題外!」
怒られたシロは、宿題を出されました。この年になって宿題とは、愉快ですね。
「というか、おい。そこの」
ヤバい、見付かったようです。シロが鋭い目付きでこちらを睨んできます。
まずいな、と俺は直感しました。朝からこそこそと尾行するようなマネをしていたなんて、ばれたら、何を言われるか分かったものじゃありません。
そうだ、丁度 客席にいる事ですし、この場は誤魔化してしまいましょう。
「ウェイター、ホットミルクを頼む」
「帰れ」
お冷をぶっかけられました。
シロの一日でした。




