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ぶらり買い物道中


 クロは、買い物に出ていた。

 今日の夕飯であるハンバーグの材料を買いに行くのだ。

「ひき肉、タマネギ、卵、パン粉等など」

 事前に用意した買い物メモを、声に出して確認する。

 これで大丈夫…のはずだった。



「よお、クロ」

 背後から声を掛けられ、肩を叩かれた。その威力は決して強くなかったが、突然ということで、クロは、少しよろめいてしまう。そして、よろめいてしまったが為に、小石につまずいて、買い物メモを手放してしまう。その買い物メモは、突然の強風に乗り、逃げるように飛んでいってしまった。

「あっ」

 困ったな、とクロは、声をかけてきた相手・カグラのことを責める様な目で見た。

 その視線から良くないことをしてしまったと察したカグラは、「すまん」と謝った。「あの紙、必要なものか?」

「うん。アレがないと、今夜シロが餓死する」

「が、餓死?」

 それはまずい、カグラは慌てた。

 すぐに物体を引き寄せるという特異な能力を使い、飛んでいきそうな紙を捕まえた。

「ほれ」カグラは、買い物メモをクロに渡した。

「あ、ありがと」

「どういたしましてというか、俺のせいみたいだからな」

「この御恩、きっとシロは忘れません。迷惑だけど親切な人がいたと、きっと話します」

「恩はいいから、俺のことを覚えて!」

 はて? どこかで会ったことあっただろうか?

 疑問に思ったクロだが、「急ぐので」と軽く頭を下げ、その場を後にした。



「お、チビ助」

 買い物に行く途中の道で、クロは、同じ方向へ行くアニマの背中を見付けた。

「げっ…!」

 振り返ったアニマは、顔をしかめた。

「げ、とは失礼だな」

「ごきげんよう。では」

「知り合いによそよそしくされると結構傷つくぞ」

「ついてくるな」他人のフリから一転、悪態をつく。「ストーカーで訴えるぞ」

「ついていかないよ。俺、買い物の途中で忙しいから」

 ほら、とクロはエコバックを掲げてみせた。

「買い物って、どこに?」

 肩から提げたカバンにエコバックを折り畳んで入れているアニマは、嫌な予感がした。

「今日 卵が特売なとこ」

「げっ」クロの答えに、あからさまにアニマは嫌そうな反応をする。

「なにさ、そのリアクション?」

「卵の特売なら、駅の方のスーパーでやっているはず」

「駅って、反対方向だけど?ていうか、ちゃんと行く前にハイジから『そっちじゃなく、こっちです』って教えてもらったし」

「ちっ」

 アニマの反応で、クロは察した。

「よし、一緒に行こう!」楽しそうに、クロは言った。

「やだ!」拒絶反応が強いアニマ。

「だってどうせ、早い者勝ちの卵 買いに行くつもりだろ?」

「行くよ!」そう言い切ったうえで、アニマは「まさか、あんたもとか言わないよね!」とわかりきった質問をした。

「俺も、って言ったら?」

「帰れ! それか、一キロ以上離れて歩いて」

「ムリ。ていうか、ここから事務所まで一キロも離れてないし。それに、今日 卵買わないと、シロが餓死する」

「しろ!」

「うわっ! 外道、そして非道!」



 アニマを半ば無理やり御供に加えたクロは、買い物への道を歩いていた。

 すると、まだスーパーに着いていないというのに、前から歩いてくる野菜を見付けた。

「お、パンプ」

「クロさん!」まるで人懐っこい子犬のように喜ぶパンプ。「どうしたんすか?子守りの依頼っすか?」

「なに、この失礼なカボチャ?」アニマが、不愉快そうに顔を歪める。「割るよ」

「いきなり過激っすね!」

「謝っとけ、パンプ。このチビ助、見た目これだけど お前と同い年だよ。それに激強」

 そう言ったクロは、アニマにふくらはぎを蹴られた。

 クロとパンプは、一緒に謝った。

「じゃあ、デートっすか?」

「砕くぞ」

 身の危険を感じ、パンプはカボチャ頭を抱えた。「と、ところでクロさん、どちらに?」

「買い物だよ」エコバックを掲げてみせたクロは、「今日はハンバーグを作る」と言って買い物メモを見せようとした。だが、「あれ?」とポケットに入れていたはずのメモがないことに気付いた。「買い物メモ、どっか行った」

「え、行っちゃったんすか?」

「あ~あ、まずいね。アレがないと、シロが餓死する」

「そんなバカな」パンプは苦笑した。「だって、たかが買い物メモですよね?なくても大丈夫じゃないっすか?」

「パンプ…」クロは、神妙な顔をして「俺が、買う物を覚えていると思うか?」と問う。

「……思わないっすね」

「あ~あ、パンプ…」

「え、俺のせいっすか?」

 パンプは、苦笑いするしかなかった。

 どうしたものかね、と悩むクロ。

 そんな彼に、アニマが「ハンバーグでしょ?」とシレッと言った。「別にメモ無くても買う物くらいわかるでしょ」

「「……マジッすか?」」

 スゴイな、とクロとパンプは感心し、改めてアニマに同行を頼んだ。



 スーパーに着いた一向。

「あ、カゴは俺が持つっす」

 パンプはアニマに恩を売っておこうとした。が、「いや、いい…」と拒否された。

「おい、パンプ。まずはどうする?」

「クロさん、絶対やると思った」

 クロは、売り物のカボチャに話しかけていた。

「おい、遊ぶならアタシは自分の買い物だけして帰るぞ」

「「すんませんっした」」



 野菜売り場でタマネギを三つ、精肉コーナーでひき肉をカゴに入れたところで、「おやつも買おう」とクロが提案した。

 お菓子売り場に走るクロとパンプ、そんな彼らの後をしぶしぶアニマはついて行く。

 そこで、「おっ」とクロが声を上げた。

 先にその場にいた人物と知り合いらしい。むこうも、「クロさん」と声をかけて来た。

 しゃがんで商品の陳列棚を見ていたその人物が、立ち上がった。立ち上がると、ガタイの良い長身な男であることがわかる。

「クロさん、どうしたんですか?」眠そうでも鋭い目付きで、クロの隣に立つパンプやアニマを観察するように見て、男は「そのメンツ、何かの遊びですか?」と訊いた。

「いや、買い物」

「ああ、その子供の付き添いですか」

「いや、むしろ逆」

「ん?」理解できないといったように、男は眉根を寄せた。

「あ、あの、クロさん…」すいませんが、とパンプが話に割って入ってきた。「そちら、どなたさんっすか?」

「俺も興味あります」男も、紹介するように求めた。「喋るカボチャとなんて初めて出会いましたから」

「あ、俺、いちおう人間っす」

「この喋るカボチャはパンプ、俺の後輩。そして、こっちの子供は、チビす…」

「アニマ」食い気味で、アニマは言った。

「これでもお前と同い年だ」

「「えぇ!」」

 同い年なの? と三人は驚いた。

 驚く三人をまぁまぁとなだめ、クロは「それで」と続けた。

「このでかいのは、アメ助だ」

 アメ助と紹介された男は、不満気にクロを見つめた。

「クロさん、その呼び方、勘弁してくださいよ」

「え、なんで?」

「なんでって、そのアダ名がいまいちだからですよ」

「アダ名って、アメ助、本当は何て言うの?」

 クロは、初耳だと、驚いたように言う。

 アメ助は本名を教えようとした。が、口を開きかけ、「いや、やっぱいいです」と考えを改めた。「どうせ教えたって忘れる。このやりとりも何回したことか…」

 諸々を諦めたアメ助は、「アメ助です」と頭を軽く下げた。

 どうしてアメ助というのだろう? と、パンプとアニマは不思議に思った。

 だが、その理由はすぐにわかる。

「アメ助、またアメ食べてるの?」

「はい」アメ助の口の中で、コロコロとアメ玉が動いた。「食べない理由がないですから」

「絶対からだに悪いよ」

「はい。医者にもそう言われました」

「医者に行ったの?」

「はい。舌先に出来たザラザラが気になって医者に行ったら、アメの舐め過ぎって言われました」

「じゃあ少しは控えろよ」

「でも、生物として食べることをやめたら、その先にあるのは死ですよ」

「…ま、たしかに」

 アニマが気持ち悪さすら感じる会話は続いた。

「今夜、うちハンバーグだけど、来る?」

「いや、バイト入っているんで。それより、肉料理には果物が良いって聞きました。だから、はい、これあげます」

 そう言って、アメ助はクロにパイン味のアメをあげた。

 ついでにと、パンプとアニマに、アニマには二つ、アメをあげた。

「じゃあ、失礼します」

 買い物カゴにアメばかり入れたアメ助は、レジの方に向かって行った。



「よし、あとは何買う?」

「クロさん!」何事もなかったかのように買い物を続けようとするクロに、パンプが待ったをかけた。「なんで俺は夕飯に誘ってくれなかったんスか?」

「そこじゃないだろ!」

 アメ助のことを聞けよ、とアニマがつっこんだ。

「何か聞きたい事ある?」

 クロが訊ねた。

 そう訊かれると、これといって知りたい事はないことに、二人は気付く。

「じゃあ、買い物を続けよう」



「葉っぱはどれを入れれば?」

「あんたごときがそんなもの入れなくてもいい」

「クロさん、出来た物 売ってますよ」

「じゃあ、それ買ってく?」

「ここまでアタシを付き合わせといて?」

「何言ってんだ、パンプ!」

「すんませんっす!」

「シロは、俺の情念こもったハンバーグを食べたいはずだ」

「気持ち悪っ」



 買う物を買い、会計に並ぶ。

「あ、あれって…」

 パンプが何かを見付けた。

「アメ助じゃん」

 それは、先に買い物を終え、外にいたアメ助だった。

 アメ助は、買ったばかりのアメの包みを取り、それを舐めながら帰り途を歩いていた。

「俺、アメリカの子供以外であのサイズのキャンディ舐めている人、初めて見たっす」

「アメが小さく見えるね。アメ助、無駄に図体でかいから」

 クロはそう言うが、アメ助の舐めているアメは、アニマの顔くらいの大きさはある。

 決してアメは小さく見えない。

「でかいヤツが、でかいアメなめている」

 パンプとクロにつられ、変質者を見るような目で、アニマはアメ助のことを見ていた。

 すると、三人の視線に気付いたのか、アメ助がこっちを見た。

「あ、気付いた」

「手を振っていますね。手というか、アメ」

「あんたの後輩でしょ! 恥ずかしいから、外でああいうことさせないで!」

 アニマは迷惑そうに言った。

 しかし、その思いがアメ助に伝わるワケもない。

 何事もなかったかのような無表情で、アメ助は、アメを舐めながら帰った。



 クロが買い物を終えて帰ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさい」

 出迎えたのは、ハイジだった。

「あれ? シロは?」

「小腹が空いたからコンビニに行くと…」

「なんでさ!」怒りから、クロの声が高くなる。「ひとがせっかくハンバーグ作ってあげるって言っているのに!」

「出掛けに気になって後で思い出したんですけど、そのハンバーグって昨日の話では?」

「……あれま」


新しいキャラクター、アメ助です。


クロとシロの後輩で、アメが大好きな大男。

よろしくお願いします。

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