表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/46

大好きだと言っても過言ではない


 サッカーの世界大会が始まる。

 世間は、自国のサッカーチームが長い予選を突破し、本選に出場できるということもあってか、時として異様な熱気を感じるくらいに盛り上がっていた。どれくらいすごいかというと、テンションの上がり過ぎた若者が暴走行為をして何人か逮捕される程だ。

 ハイジは、サッカーには詳しくないが、それでもこの大会の大きさや自国のサッカーチームのスゴさは理解しているつもりだ。しかし、だからといって、行き過ぎた行動に出る者たちの気持ちは、理解出来ない。街に出て、みんなで喜びを分かち合うのは良いかもしれない。けれども、騒ぎ過ぎて周りに迷惑をかけるのなら、黙って家のテレビで観ていたら、と思う事もある。

 そう、たとえば、この人達のように。

「よう、ハイジ」

「早く来い。死のグループDの試合が始まるぞ」

 クロとシロは、カラフルなアフロのかつらを被って顔には国旗のメークをし、テレビの前でサッカー観戦をしていた。

「……今日、仕事はないんですか…?」ハイジは訊いた。

「こんな日に仕事をするヤツなんていないだろ」

「そんなヤツ、非国民だよな」

「……お二人は、何処の国の方ですか?」

 二人の観ようとしている試合は、自国のチームのものではなかった。



「俺とシロは、とにかくサッカーが好きなの」

「おもしろいからな」

「応援するのはどこのチームでもいいんですか?」

 ハイジが訊くと、クロが、しれっと「今からするのは応援じゃなく、観戦だ」と答えた。

「それにクロは自国も他国も関係なく、選手とか詳しくないし」

 そう言うと、クロとシロは何がおかしいのか、あっはっはと楽しそうに笑った。

 二人のテンションは、何故か高い。

 キックオフして試合が始まった後も「うぉー」とか「うぁー」とか「うぃー」とかよくわからない声を上げながら、テレビ画面にかじりついている。

「「うぉーい」」

 点が決まった時、二人のテンションが一層上がった。

 そして、また、

「うひぇー」

 点が決まって同点になり、試合が振り出しに戻った時も、二人のテンションは上がった。

 どっちの国が勝ってもイイらしい、とハイジは察した。が、

「初戦で負けるなよ」

「ほんと、負けるなよ~」

 とか言っているところを見ると、ひいきにしているチームはあるらしい。

 よくわからないな、とハイジは思った。



「なぁ、シロ。今のは、なんで笛吹かれたの?」

「ファウルだよ」

「……なぁ、シロ。じゃあ、なんで今のは笛鳴らないの?」

「身体入れてただろ」

「あ、チャンス…あ、また笛吹かれたぁ!シロ今のはなんで?」

「だぁ!うっせぇな、黙って見てろ!」

 クロからの質問攻めに、シロが怒った。

 しかし、そこで引き下がるクロではない。

「だって、わからないんだもん」

「知るか!」

「あ、でも、サッカーのルールってよくわからないトコありますよね」クロにフォローを入れるつもりで言ったが、実際にハイジもそう思う事があった。「たとえば、あれ、『オフサイド』とか」

「ほら!」賛同者を得て、声を高くしたクロ。「良い所でいつも『オフサイド』が邪魔する。なにものさ、そいつ?」

「何回目だよ、それ説明するの」

 面倒だと言いたげに顔をしかめるシロだが、「ハイジは初めてだろ」と平然とクロが返した。「ほれ、なにもわからないハイジに教えてやりな」

「その言い方、なんかカチンと来ます」

 ハイジは言った。

 が、無視して『オフサイドとは?』の説明が始まった。

「オフサイドっていうのは、反則の一つだ。基本的にはキーパーを除く守備側の最終ラインより前線でパスをもらう事だ」

「……わかった?ハイジ」

「なんとなく…ダメってことは」

「シロ、説明下手。もう一回やりなおし」

「ああ?」不満気に顔をしかめたシロ。「簡潔で分かり易い説明だろうが」

「分からない点は、二つ」指折りしながら、クロは言った。「『キーパーを除く守備側の最終ラインより前線でパスをもらう事』と『オフサイド』についてだ」

「キーパーを除く守備側の最終ラインより前線でパスをもらう事が、オフサイド。オフサイドとは、キーパーを除く守備側の最終ラインより前線でパスをもらう事だ」

「……シロ、オフサイド!」

「わからないのにテキトーに使うな!なんかムカつく!」



「つまり…」何度か説明を受けて、クロは「オフサイドポジションでパスをもらうとオフサイドか」というところまで理解したらしい。「で、オフサイドポジションってどこ?」

「ディフェンスの最終ラインより前」

「…それは、どの線?」

「引いてねぇよ、んな線」

「じゃあ、誰がどうやって判断するのさ?」

「ピッチの横にいるだろうが、副審が」

「なるほど。じゃあ、アイツを先に倒せば、オフサイドとかいう面倒くさい邪魔者はなくなるわけだ」

「わけねぇだろ、ボケ! 副審倒すとか、聞いた事ねぇよ」

「……新戦術」

 クロとシロがわーわー言っている間に、点が入った。

「「ああぁ!」」

 得点シーンを見逃して、がっかりする二人。

 だが、テレビでは早速、リプレイを見せてくれている。

「シロ! あれ、オフサイドだよ」

「違ぇよ。パスが出てから飛び出しているだろうが」

「副審倒す以外にもオフサイド封じがあったのか…」

 衝撃の事実に、クロは愕然とした。



 ハイジは、思った。

 結局オフサイドの意味が分からない。それに、『ぼらんち』とかいうモノも意味不明。フリーキックの時は、みんなでゴール前に壁を作れば?というか、なんで股間おさえているの?

 不思議なことだらけだ。

 だが、なんだかんだいってテレビの前で興奮しているクロとシロを見ていると思う。

 本当に面白い競技なんだな、って。


サッカーが好きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ