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負けを楽しむとか出来ないし

前回のあらすじ。

「カグラって誰…?」


今回カグラは出ません。


「あ~あ…」

 ソファーに座ったシロが、力なく垂れ、天井をぼんやりと見ていた。

 シロの様子に違和感を覚えたハイジは、「なにかあったんですか?」とこっそりクロに訊ねた。

「ん、ああ」クロは頷いた。「また負けたんだって」

「負けたって…相手はカグラさんですか?」

「違う 違う。そんな誰とも知らない他人じゃなく、玉を転がす機械だよ」

「……パチンコですか…」カグラの事には深く触れず、ハイジは「何が楽しいんですか?」と理解出来ないというふうに言った。

「…じゃあ、行ってみる?」

「……え?」



 クロの一言をきっかけに、三人はパチンコ屋に来た。

「なんで?」

 ハイジは、率直な疑問を口にした。

 シロも、「なんで俺も だよ?」と口を尖らせる。

「社会科見学だよ」ウキウキしているのは、クロだけだった。「パチンコに興味を持つ生徒がいる。なら、社会科見学に行こう。そして、それには引率の先生が要る。いや~、ガキの頃は社会科見学なんて面倒くさいと思っていたけど、大人になるとワクワクするな」

 シロとハイジは理解した。

 自分たちは気紛れを起こしたクロに付き合わされているのだ、と。



 扉を一つ開けると、何やら音が漏れ聞こえてきた。

 もうひとつの自動ドアをくぐると、そこはにぎやかだった。

 というか、うるさい。

 パチンコ玉が弾かれる音、楽しさを演出するための音楽、それらが四方八方からするので騒々しく、近くに居てもまともに会話も出来そうにない。

「うるさい」とハイジ。

「煙草臭い」とクロ。

「さて」とシロは、気合を入れた。

「え、シロさんもやるんですか?」

「たまにシロの服から臭うのは、これか」

「ごちゃごちゃうるせぇ」

「うるせぇって、大声出さないと会話もままならないです」

「俺達の声なんて、小鳥のさえずりよ」

「じゃあ永遠にさえずってろ。さ、て、とぉ~。いくか」

「ちょ、待ってください!」

「見捨てないで。このアウェーの中、俺達を見捨てないで」

 仕方がないと言った感じで、シロ先生が案内するパチンコ教室が始まった。


「なんかイメージと違う」クロが言った。「もっと玉が床に転がっていたり、玉が入ったケースが山積みになっていたりするのを想像してた」

「ここの店は、カードシステムだからな。玉が出たらカードに記録できる仕組みだ」

「……よくわかりません」

 ハイジが言うと、「習うより 慣れろ、だ」とシロがつれなく答えた。

「とにかく、台を選んで座り、左上の挿入口に金を入れる。『球貸』って書いてあるボタンを押して、あとは打つ。以上」

「当たった時は?」

「当たった時 訊け」

「くす玉は?」

「ない」

 当たっても特に祝杯の用意がされていないと知ると、クロは、さっそくパチンコ台が並ぶ通りに足を踏み入れた。

「シロ。よくいう『釘の感じ』って、どう見ればいいの?」

「あの、シロさん」クロに続いてハイジも、「この上の表示は、どう参考にすれば」とシロに訊いた。

「初心者共は難しいこと気にせず、好きな台で遊びなさい」

 雑に答えたシロは、そのままどこかへ消えてしまった。


 ハイジは、「あ、このアニメ知っている」ということで台についた。

 クロは、「ふ~じこちゃ~ん」と言いながら席に座った。

 シロは、色々と悩みながら、ここかなと決めて少し打って台の調子を見ては、ここじゃなかったと移動し、またここかなと決めて打つ。それを繰り返し、五台目で腰を据えて打ち始めた。

 そうやってシロが移動しているとは、クロとハイジは知らなかった。

 また、まさか二人が自分を探していたなんて、シロは微塵も思わなかった。


 クロは、なんかテキトーにやっていたら当たった。

 しかし、当たったことを報告しようとしたが、近くを見渡してもシロの姿が無い。

 どうするかなと困っていると、パチンコ台の画面に『玉を排出してください』という表示が出た。

 いよいよ困ったクロは、

「ねぇねぇ、おじさん。これ、どうすりゃあいいの?」

 と隣の席に座る初老の男性に助けを求めた。


 7の目が揃って、ハイジは慌てていた。

「ど、どうしよう…!」

 近くを見ても、シロの姿はない。

 思い切って店内を一周回ってシロのことを探すが、見付かったのは知らないおじさんと意気投合しているクロだけ。

 席に戻ったハイジは、視覚から得られるだけの情報を整理して、自力で乗り切ることを決めた。しかし、

「か、かくへんってなに?」

 よく数字が揃うし、どうにも玉が出てくるので、なんか怖くなったハイジだった。


 おじさんと仲良くなったクロ。

 なんとか窮地を脱することが出来たハイジ。

 二人は、そろそろやめようかなと席を立ち、みんなの事を探した。

 そうしていて二人が見たのは、「あと…もう千円だけ」と葛藤するシロの姿だった。



 三人は、パチンコ屋から出た。

「あ~、まだ耳がおかしいです」

「服が煙草臭い!」

「うるせぇ、勝組み共が」負けを認めたくなかったシロは、もう千円勝負しようとしたところをクロとハイジにむりやり連れられる形で店をあとにしていた。「俺になんか奢れ!」

「あ。そういえば、普通に換金しちゃった」

 クロが言うと、「なにかいけないんですか?」とハイジが訊いた。

「パチンコで勝ったら、紙袋に駄菓子を詰め込んで帰るイメージが…」

「あ~ そうですね…」

「シロ。今度は、お菓子あげるから」

「もう来ねぇよ!」

 怒鳴るように言うシロだが、また後日来る。そして、また負ける。


負けず嫌いが故に苦い思いをしたことがあります。

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