思い通りにうまくいかない事も人生とか割り切れないから怒っている
事前に言っておきます。
今回の後書き、ほとんど自己満足な内容です。
謎の手紙が届いた。
それをきっかけに、クロとシロとハイジはもめていた。
だが、それは前回までの事。
「開けるぞ」
手紙が届いた日の翌日、シロがとうとう開封した。
封筒を縦にしてトントンとテーブルに軽く打ちつけ、中身が下に寄ってから、封筒の口をハサミで切る。中身を切らないように、途中で途切れないように、だけど切る幅は最小限に、慎重にハサミを入れた。
封筒の中には、三つ折りにされた一枚の手紙が入っていた。
『前略。 このままではいられないので、再戦を申し込む。日時は――――』
手紙の内容は、無駄のない簡潔なものだった。
手紙を読み終え、とりあえず三人は黙った。出すべき言葉を見つけられずにいたのだ。
数秒の間を開けて「あの」とハイジが恐る恐る口を開いた。
「再戦って、なにか勝負するってことですか?」
「穏やかじゃないな」とクロ。
「いや、以前にも穏やかじゃない事をしたみたいですけど?」
「なんでそう言える?」
「だって、再戦って書いてあるじゃないですか。それってつまり、以前にも何かあったっていう事ですよね?」
「深読みしすぎじゃないのか?」
「そんなこと無いですよ。どこ読んでいるんですか?」
「どこ読んでいようといまいと、どうでもいい」シロが、苦々しく言った。「とりあえず、ここだけは読んでおけ」
シロは、手紙のある一文をトントンと指差した。
それは、手紙の主が再戦にと指定する日時と場所だった。
その中でも、日時の所にシロの指先が置かれている。
「……昨日、ですね…」
目を逸らしたかったが、諦めたようにハイジが言った。
「あちゃ~」事態を重く受け止めることなく、平然とした様子、どちらかといえばふざけているようにも見えるクロの態度。「あれだな、ムサシだな、ムサシ。遅刻のムサシ」
「いや、そんな異名ないし、宮本武蔵も日付くらいは守ったと思いますよ、詳しくないですけど…」
「てことは、ムサシ越え?」
「なに呑気なこと言ってんですか!」
ハイジは、クロのように冷静でいられなかった。
決闘の申し込みを受けていたのに、それを、手紙を開けるガァーがないとかくだらないことで言い合いをしていて、すっかりすっぽかしていたのだ。
ただでさえ穏やかな展開ではなさそうなのに、とんだことをしてしまった。
今にでも討ち入りされてしまわないか、と嫌な想像が脳裏をよぎる。
不安な気持ちで押し潰されそうなハイジは、緊張感の欠片もない社長にではなく、副社長のシロに視線をやった。
その助けを求めるような目に、シロは気付いた。
「……面倒くさいが、行ってみるか…」
「え?」ハイジは驚いた。
「俺達がムサシ越えをしたってことは、相手もコジロウ越えをしているかもしれない。今更かもしれないが、行ってみる価値はあるだろ」
「待っているワケ無いですよ!」
ハイジは「有り得ない」と否定した。
が、手紙の主は、約束の場所で待っていた。
「待たせたな」
威風堂々たる登場をするクロに、「待たせ過ぎだろ!」と手紙の主らしき人が、怒鳴った。
相手の怒声に驚くハイジだが、それよりも「本当に待っていた」という衝撃の方が大きく、「待ち過ぎでしょ!」とつっこみたかった。
コジロウよりも辛抱強く待っていたかもしれない、眼光鋭く、どこか粗暴さを感じさせる二十歳前後の男を前に、ハイジは、言葉を失っていた。この場はどうすればいいの、と取るべき行動がわからず、指示を仰ぐようにクロとシロの方を見た。
だが、どうやらクロも、どうしたらいいか分からないようである。
「シロ、アイツ誰?」
「やっぱ忘れていたのかよ…」
呆れ顔のシロ。だが、クロが忘れている事も予想通りでもあるのだろう、その顔にはまだ余裕がある。
クロは頼りないと判断したハイジは、シロにだけ視線を注いだ。
あれは誰なの、どういう関係なの、その答えを求めるハイジの眼。
クロも、疑問に満ちた眼差しで、シロを見ていた。
「あいつは、アレだ…俺らを正義の味方とするなら、悪の親玉みたいなヤツ」
「本当ですか?」当然のように疑うハイジ。「私たちが正義って……日をまたいで遅刻する正義の味方って、ありですか?」
「そうだぜ」とクロ。「それに、初対面の人を諸悪の根源だなんて」
「初対面じゃねぇんだって、俺とお前は。てか、諸悪の根源って程のモンじゃねぇし」
「けど、悪の親玉だろ? そういったじゃん、シロ」
「諸悪の根源とまでは言ってねぇよ」
「同じだろ」
「違ぇよ。なんか、スケールが違う」
「どうでもいいけど、知り合いなの? 知り合いなら尚更、失礼じゃない?」
「忘れている方が失礼だろ。てか、こんだけ待たせている時点で多少の失礼を気にするな」
「礼儀は大切だぞ、シロ」
「それがお前の心から出た言葉なら、俺はもう何も言えねぇ」
シロが黙った。
クロも黙った。
黙るなよ、とハイジが心の中でつっこんだ。
ハイジの期待に応えてくれないシロ。
そもそも期待されていないクロ。
仕方がないとハイジは心を決め、「すいません」と口を開いた。
「あなたは、何者様ですか?」
「なにものさまって…誰に向かってそんな口をきいてやがる!」
「いや、誰だか知らないし…」
「というか、お前こそ誰だ?」
男に問われ、ハッとハイジは気付いた。
クロが知らないようだから一対二で多数派に居たつもりだった。が、クロはただ忘れているだけである。そして、相手の男は、クロとシロの事を知っている。
つまり、一対三。
この場で少数派は、自分だった。
「あの…私は…」
たじろぐハイジ。
「俺はクロ!」
堂々たる自己紹介。
だが、男に「お前は知っている!」とつれなく流された。
「俺の番じゃないって…。ハイジ、どうぞ…」
「やりづらいんですけど…」
いじけたクロの扱いにハイジが困っていると、「まぁいい」と男が不敵に微笑んだ。
「俺の名前は…」
「あ、ちょっと待って!」クロが口を挟んだ。「俺、知っているはずなんだろ。なんか、思い出せそうな気がする。もうちょっと、ここまで出かかっている」
腰の辺りで手を振るクロ。
「まだまだ かかりそうだなぁ、おい!」
業を煮やし、男は名乗った。
「俺の名前は、カグラ」
「え、ヤガラ?」
「ナグラ?」
「ナイアガラ?」
「おい! 一人、わざと間違えたヤツいただろ! 俺をちゃんと知っているヤツ!」
「てゆうか、そのボケつまらないよ、シロ」
「っせぇよ!」と顔を赤くする、ボケたかったシロ。
「コイツの名前は、カグラ」本人に変わって、シロが紹介し始めた。「なぜか大学生。そして、なぜか俺等にケンカを売ってくる、悪いヤツ」
「おい!」
カグラが、怒鳴るように声を荒げた。
「ひぃっ!」
ハイジは、委縮した。
悪いヤツと面と向かって言えば、それは怒るだろう。それも、見るからに怖そうな人に敬意の欠片も込めずに悪いヤツと言うのは、正気の沙汰とは思えない。
勝手に決め付けるのは良くないですよ、とハイジは注意しようとした。
だが、
「なぜか大学生って、ちゃんと受験勉強したっつーの!」
カグラの口から出た言葉から、なんかアホそうだな、と判断しハイジはホッとした。
「ああ、ちょっと思い出せた」
クロが言った。
ようやくか、とシロとカグラは苦い顔になる。
これでやっと話がスムーズに進むだろう。そう二人は思ったが、
「なぜか大学生のヤツか、なんか知っている気がする」
「「話を戻すな!」」
面倒くさそうなので、クロを黙らせた。
「兎にも角にも」
「つまり、とにかく」
「クロさん、黙って!」
ハイジがクロを黙らせてくれたので、シロは話を進めた。
「そろそろ話に区切りをつけよう。なぜか大学生の男・カグラが、嫌がらせのような手紙を送りつけてきたワケだが…どういうつもりだ?」
「どういうつもりも何も無い!再戦を申し込むと、手紙に書いていただろうが!」
当然の主張をするようにカグラは言うが、
「だから、それがどういうつもりだよ?」
と冷たい態度でシロが訊いた。
「本能に理由はつけられない」
「『飯を食う』という本能に『腹が減ったから』というレベルでいいから、言ってみろ」
そんな知能が低いやり取りが必要か、とハイジが疑問に感じていると、そこに「そうだ、言葉にしなくても想いが伝わるなんて、そんなムシのイイこと考えなさるな」というクロの主張が響いた。
すると、「言葉にして声にして、ちゃんと伝えたけど!」と眉間のしわを濃くしたカグラが声を荒げた。「スカーンと忘れているヤツに言われたくねぇよ!」
カグラが言うと、シロとハイジが、冷たい視線をクロに向けた。その眼は、お前なにを知っている、と問うている。
責める様な態度の二人に応えようと必死に思い出すクロだが、「えぇ?」と悩んでいる。
そんなクロに代わって、カグラが説明した。
以前、街中で偶然ばったり出くわした時に、「あのままで済むと思うなよ」「(心当たりはないけど) 望むところだ」という会話を交わして再戦の約束をしていたこと。
「チャレンジャーとして、そちらの提示する条件をのもう」
「(俺が勝者なのかな?)望むところだ」
ということで、クロが再戦の日時や場所、対戦方法を決めることになっていた。
しかし、クロは、すっかり忘れていた。
クロからの連絡を待ちかねてカグラが手紙を出したことが、今回の事の発端であった。
諸悪の根源はお前じゃん、シロとハイジは呆れた。
新しいキャラクターが出ました。
カグラといいます。
よろしくお願いします。
さて…。
ここに書くことではないのですが、自己満足ということで、よかったら御付き合いください。
サッカー、負けてしまいました。
いろいろな意見があると思います。称賛だったり批判だったり。
そんな中で、私は感謝の言葉を述べたいと思います。
たしかに、結果として出なかったのは悔しいと思います。ですが、この四年間、新しいことに挑戦する姿勢や世界の強豪国相手に果敢に挑んだ姿には、感動しました。一戦一戦に興奮させられたということだけではなく、観ていて、勇気をもらいました。極端な話、生きる希望のようなものをもらいました。精神的に辛い時、観ていて勇気や希望をもらえました。
結果として「残念」という言葉が付くかもしれません。結果が出ないことに批判があるかもしれません。ですが、私は、今回の「蒼き侍たち」の活躍に胸を撃たれました。
私も頑張ろうと思えたことを残したく思い、駄文ではありますが、ここに記しました。
世界の片隅から、少しでも世界に向けて。
「ありがとう」と「お疲れさまでした」と、もう一度「ありがとう」を。
私もがんばります。
以上、自己満足な話でした。
カグラの話は、もう少し続きます。