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救世主の残念な日常  作者: 朝夢 瞬
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左手は大切にね

「意識のない者全てを、操ることができる??」俺はそっくりそのまま返した。それと同時に、拍子抜けしていた。それならなんとかなりそうなものだが。


「その、のうりょ•••いや違ったそのマイボルのどこが脅威なんだ??」ミカはそんなこともわからないのか、というような視線をこちらに向けながら説明した。「意識のない者を操れるということは、寝ている者を操れるということと等しい。つまり、今の天使界と悪魔界はそのマイボルの持ち主そのものとなっている。」


俺はそこでやっと気づいた。今起こっている事、そののうりょ•••マイボルの恐ろしさを把握した。しかし、まだ重大な疑問が一つある。これがわからなければ今までの過程が無、となってしまう。


「なんで、人間の救世主が必要なんだ??」そう、これこそが最大の謎である。いくら意識のないものを操れるとしてもその代表者をなんとかできるはず、いやもしできなかったとしたら、俺一人じゃ無謀すぎるだろ。自分なりに考えていると答えが出た。


「もしかして、救世主ならその操られている者を救えるとか??」「おぉ、会ってから初めて察しがいいと感じた。」俺は、褒め言葉と嫌味の中尋ねた。「救世主は何ができるんだ??」


すると、ミカは「救世主完全マニュアル~これであなたも救世主~」を取り出してこちらに渡してきた。俺は右手でそれを受け取るといかにも胡散臭いその本を開いてみた。


「え~と、なになにこれを読めばどんな人でも救世主。例えば、一人だけで補修を受けてしまう人でも、鍵をかけ忘れてしまう人でも••••」


俺は、わざとらしい咳払いをすると、何故か破れている本を引き続き読み始めた。「救世主の能力を簡単に説明すると、四つです。マイボル『真救世主』が手に入る、攻撃力防御力が上がる、自分の現在の強さに合わせた武器が手に入る、です。


『真救世主』は再生といくつかのマイボルの無効化です。(詳しくは34p参照)しかし、操られている者を解除するには、意識をなくさせるか、心を開かせる必要があるので、要注意」


ここまで読むとミカが「何ができるかわかった??」と本を取り上げた。救世主ってのもいろいろできて悪くないな。「てか、再生できるのかよ!!」俺が叫ぶと「そう書いてあった。現に再生してる。」と冷静に対処された。


えっマジで??俺は自分の体を見てみた。確かに服は血だらけだが、再生している。しかし、左手は今だに布団の上に転がっているし、左足なんか鎌ささったまま再生しちゃってるし。


「左手や左足はどうすればいいんだ。」「こうすればいい。」ミカは思いっきり鎌を抜いた。「少しは痛いんだぞ!!容赦しろよ!!」しかし、その言葉とは裏腹に左足の傷は再生を始めていた。


「だったら、この左手はどうするんだよ。」俺は自分の左手を、自分の右手で持ち上げるというシュールな光景のなか尋ねた。「こうするにきまっている。」とミカはいうと俺の左手を俺の体の切断面にくっつけてどうだとばかりにドヤ顔をしていた。


「あの~いい気持ちのところすみませんが、再生してないんですが。」俺の左手は再生することなく、俺の元制服を血で汚しただけだった。ミカはハッとして目を見開くと精密機械のように、左手をつけたりとったりを等間隔で繰り返していた。


そして、「無理!!」と左手を投げ捨てた。「いや、無理じゃねーよ!!後、投げてんじゃねーよ。」俺は、左手を化石のように慎重に持ち上げると「じゃあ、どうすればいいんだよ。」と何故か不機嫌なミカに言った。しかし、ミカは「無理なもんは無理。」「諦めて。」「残念。」とこちらに小麦k・・・米の粉まみれの服の背中を向けながらいってきた。こっちがすねたいよ。


しかし、根気よく聞いていくと、「時を戻せば。」などと興味深いことをいってきた。「そんなことができるのか!?」俺が叫ぶと振り向きながら頷いた。「なんだ、そんなことができるなら早くやってくれよ。」これで身体面の問題は全て解決だな。んっ?待てよということは「救世主の、問題も解決するんじゃないのか。」「それは無理。」即答かよ。


「そんなに簡単に救世主の力が取り消せるのならば、わざわざ人間を頼ったりしない。」ミカは大真面目に言ってきた。「そうか。まあ、とりあえず早く頼む。やっぱり手がないのは気持ち悪いからな。」もう救世主は我慢しよう。こんな可愛いサポートもいることだし。無口だが。


そんなことを思っているとミカが言ってきた。「時を戻す前にいくつか注意点がある。その全てに同意してくれないと戻せない。」「わかった」もう俺には決心しかなかったので、すぐに答えられた。



「一つ目。私のマイボルの名前は《自時回壊》というのだが、このマイボルで時を戻すと戻された時間から今にいてるまでの間の時に亀裂が入る。簡単に言えば、運命が少しおかしくなる。」「例えば、どんな感じなんだ。」


俺の質問の後、少し例えを考えていたようだったが、すぐに浮かんだらしい。説明はすぐに再開された。「例えるなら私が一週間時を戻したとする。そのときに近くにいた人と救世主はその一週間の記憶もそのまま時が戻る。もちろん、自分は好きなように行動できる。前と全く一緒のことだってできるし正反対のことだってできる。しかし、他の人は全く同じような行動をする。まあ、こちらが違うことをした際の反応は違うが前の一週間を元に動く。そして運命が変わるというのは、そこで前と全く違う行動をする者が現れこちらに接してくるいうことなんだ。」


『運命が変わる』 その言葉の重みをまだ俺は知る由も無かった。 左手の大切さならわかったが・・・

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