掟の無い食パン
「食パンに掟はない。特殊なんだ、だって食パンに野菜とハムを挟むとサンドイッチになれる、ジャムを塗ればジャムパンになる、焼けばトーストに。こんな感じ、だから食パンには掟が無いんだ、カメレオンは体の色を変えられる。だからカメレオンが緑であると云う掟は何処にも無いんだ。それと同じさ」
「そう。とても面白い話だわ、太郎は何かを対義して考えるのが好きなのね」
「もちろん好きさ僕は普通じゃないからね対義しながら考えるのが好きなんだ」
「ふふふ、とても面白いわ、カレーパンとメロンパンはカラスで食パンはカメレオン、それと掟・・・。あら、長電話になちゃったわ、もう夕食の準備をする時間だわ」
「そうだね、もう電話を切る時間だ」
「ふふふ、今日の話はとっても面白かったわ、また明日、バイバイ」
「こうやって電話の最後にバイバイって言うのも1つの掟なんだよ・・・バイバイ」
そして太郎は母が電話を切った事を確認してから受話器を置いた。
ふとベランダに目を向けると、いつもと同じ右目を怪我したカラスがこっちを睨んで止まっている、
(いつもと同じように)もうすぐ巣に帰るだろう、それまで辛抱。(いつもと同じように)
いつもと同じこの時間、カラスが巣に帰る少し前。また今日も同じ事。明日も多分同じ事。