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第26話 黒い心

 ジュールに襲撃されてから半刻ほどが経った。屋敷の玄関に気配があった。敵意はない。味方だ。


「アオイ、無事か?」


 アルデイだった。


「うん、アルデイ。この通り!大丈夫だよ」

「闇の魔素が戻ったのか?」

「完全じゃないけどね」


 アルデイは壊れた窓を見て唸った。


「何があった?」


 アオイは事の顛末をアルデイへ語った。


「では魔素のバランスは元に戻ったのか?」

「そう思う…。完全じゃないけどね」

「よかった。アオイが命を削りながら戦う姿は見たくないからな」


 アルデイの言葉にアオイはさみしそうに笑った。


「業の深い力だけどね」


 だがアオイの言葉にアルデイの答えは明確だった。


「力はどう使うか?だ。そうだろう。その力でアオイもヒスイも事なきを得た」


 ヒスイはアルデイの言葉を至言だと思った。アオイがそこへ帰結することを願った。そして…、


(良かった。本当に良かった)


 ヒスイの目からは涙が流れていた。


「あれ?嬉しいはずなのに…」

「ヒスイ」


 アオイはそっと静かに泣くヒスイに寄り添った。ヒスイが泣き止むまでアオイは静かに寄り添っていた。




 

 夕方前に三人で気まぐれ屋へ戻った。


「アオイさん、無事でしたか?」


 すぐにアサインが奥から走り出て来た。


「アサインさん、心配かけたね」


 すぐにエリオットも顔をのぞかせた。


「はじめまして。情報部B級騎士エリオットと申します」

「情報部のアオイです。しばらくお世話になります」


 アオイはちょこんと頭を下げた。


「アルデイ様が飛び出して行った時はどうなることかと思いました」

「うん、危なかった。侮り難い敵だ。だけどエリオットさん、私達は侯爵の足取りが知りたい。生きているなら救い出してあげたい」


 これは“気まぐれ屋”に戻る途中に三人で話をした。三人の創意だった。


「はい、ディスターブを探っているのですが…。侯爵の足取りはつかめていないです」


 しばらくの沈黙。


「混沌の魔団の本拠地となっている場所は目星が着いていますので捜査を続けます。あと、少し遅れているのですが、本日王都から騎士が15名到着しますので人手をさけるかと思います」


 ちょうどそこにノックの音が聞こえた。


「アマノさんの忘れ物を受け取りたいのですが…」


 その声にアオイとヒスイは聞き覚えがあった。


「あの声ってアルカディアじゃないか?」


 アオイとヒスイは顔を見合わせて頷いた。聞き間違うはずがない。王都で別れたアルカディアだった。




 

 ディスターブは機嫌が悪かった。ブエノスが許可も取らずにバールミン侯爵を連れ出したからだ。だが、ブエノスへ抗議する勇気もなかった。何より今ディスターブが頼りにしている大量の魔剣はブエノスから支援されたものだった。


(あの魔剣がなければ、俺の騎士団は王都の近衛騎士団に勝てない)


 ディスターブが無謀なクーデターを起こしたのは魔剣の存在ゆえだった。ディスターブはブエノスの機嫌を損ねたくなかった。


(あの魔剣が攫ってきた子供達の魔素を刻印して作っていたとは…な。騎士団が子供を材料に装備を整えていることを知ったら侯爵はどんな顔をするか?)


 ブエノスは攫った子供の魂を利用して魔剣を作っていた。最近では刻印を応用し、亜人や魔物にも施して化け物のような生物を作り出していた。


(あの戦力を使えば王国を乗っとることもできるかもしれん。しかし、ブエノスは気に食わない)


 ディスターブは、ブエノスの“無価値な物を見るような目”が嫌いだった。


「どいつもこいつも俺をばかにする!」


 完全に自分を見失いかけていた。そこへバールミン領騎士団長オーブが報告に現れた。


「ディスターブ様、ブエノスが侯爵を連れ出したのは侯爵邸です。しかもブエノスはその場所をわざとリークしています」

「あいつは何を考えている!!」


 ディスターブのいらだちは最高潮だった。


「あと…。ディスターブ様、非常に申しにくいのですが…。ブエノスがすぐに来るようにと…」

「ええい!俺を何だと思っている!」

 




 ディスターブがブエノスのところへ行くと頭巾を被った混沌の魔団の信者が刻印魔法に使う魔石へ魔素を込めているところだった。


(いつ見ても不気味な奴らだ…)


 ディスターブは魔団の信者を一暼し、ゆっくりと視線をブエノスへ向けた。


「ブエノスさま、お呼びでしょうか?」


 こびへつらう声が自然と出た。


「バールミン侯爵を囮にしてアオイを誘いだす。お前たちは攫った子供達をこの通りに配置しろ。その後、騎士団で屋敷を守れ」


 ブエノスは一枚の羊皮紙をディスターブへ投げ渡した。ディスターブは慟哭した。


(…何が守れ…だ。どうせ、子供は刻印魔法の生贄にするのだろう?)


「できるか?」


 ディスターブは静かに答える。


「かしこまりました。騎士団を動員して仰せのままに配置、警護いたします」

「それではこれを使うと良い」


 ブエノスは腕輪と魔剣をディスターブへ渡した。


「魔素封じの腕輪だ。嵌められた者は魔法が使えなくなる。ただし、膨大な魔素を持つ者には使えない。使い方を誤るなよ」


 こんなものが何の役に立つ。魔剣の方が数万倍役に立つわ!!!————ディスターブのこころはブエノスへの嫌悪で燃え尽きてしまいそうだった。だが、取り繕う。


「ほう。使い手でも人質とすることができますな」

「そうだ。では頼んだぞ」


 ディスターブは一礼して執務室を出た。


(本当に不気味な奴らだ、気味が悪い)


「オーブ!バールミン侯爵邸へ行く。子供も一緒だ!」


 ディスターブは人が呪えそうなほどの呪詛を撒き散らしながら、侯爵邸へと急いだ。





「何でアルカディアが班長なの?」

「はい!私を含め、10名が情報部へ出向しております!ここへは近衛騎士団としてではなく、情報部として着任しています!」


 ハキハキと答えるアルカディアに苦笑しながらアオイはヒスイを振り返った。


「情報部ならバールミン侯爵を奪還しても良いということだよね」

「はい、そういうことだと思います」


 アルカディアはアオイとヒスイの曲解した解釈に頷くことができずにおろおろしていた。————本心はヒスイの肩を持ちたいのだが…。

 エリオットが自信なさげな顔で報告してくる。


「アオイさん、ヒスイさん。侯爵の所在がわかりました」

「場所は?」

「はい、侯爵邸の3階、侯爵の執務室です」


 アオイもヒスイも違和感を覚えた。


「エリオットさん、いくら何でもタイミングが良すぎませんか?」

「我々情報部の力です!と言いたい所ですが我々もそう感じています」


 それまで黙っていたアルデイが、


「うむ、罠であろうな。ブエノスは刻印魔法を得意としている。何らかの仕掛けがあると見た方が良いな」


 アオイを見ながら唸るように言った。


「アオイ様、こちらの御仁は?」


 アルカディアが生真面目に挨拶をする。


「ああ、アルカディアに紹介してなかったね。竜騎士アルデイ」

「アルカディア、アルデイだ。よろしく頼む」


 アルカディアは目を白黒しながら平伏した。アルデイはアルカディアの様子を一暼し、鼻を鳴らしてアオイに向き直った。


「俺は戦力にならない。長い時間戦うことができないからお前の足を引っ張ってしまうだろう。アオイ、どう攻める?」

「ブエノスの狙いは最終的にはヒスイだと思う。だから侯爵が囚われている所には私一人で行きたい。そのための援護にヒスイを含めた皆にお願いしたいのだけど…」


 アオイはヒスイに思いっきり睨まれた。アオイは決心した。アオイとヒスイはお互いに半身なのだと。


「ヒスイ。一緒に侯爵を助け出そう。エリオットさん、できるだけ詳しく侯爵邸を図解して」


 エリオットは大きな机に白墨で侯爵邸の見取図を描いた。


「アルカディアとアサインさんは2班を編成して。それぞれ2箇所、正面玄関とここ、キッチンへの通用口から侵入。正面玄関は派手に突入して敵兵を揺動。

もう一班は通用口を確保すること。私とヒスイは騒ぎに乗じて、ここの窓を破って侵入する。侯爵を確保したら通用口まで走るからもう一班は侯爵を連れて撤退。

殿は私とヒスイ。最終は光の玉を上空に上げるから、その合図があったら必ず撤退すること」


 そして、アオイは少しのためを作る。


「班の編成が終わったら奪還開始だ!」


 アオイは皆を見渡した。ヒスイはその作戦がうまくいくように願った。


 




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