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死神の血濡れた手  作者: 紫月
序章
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2.新天地にリスポーン

生き返るだと?

死神ならそんなことも可能なのか、だが


「生き返ったとしてもまたあの血と泥濘に塗れた生き地獄に放り込まれて、死ぬだけだろ……。」


俺は死神イシュタムに目をやると、

イシュタムは黒髪を揺らして首を振った。


「いや、 お前がいた世界とは違う、別の世界に行く」

「別の世界?」

「そう、穏やかで平和な世界だ。そこでちょっとした問題を解決する手助けをしてくれればいい」


彼女はそう言いながら、俺の手を強く握りしめた。


「どうだ?」


正直、胡散臭いにもほどがある。死神にできないことが俺にできるわけがない。それに、彼女が言う「ちょっとした問題」が、絶対に「ちょっとした」もので済むはずがない――そんなことは火を見るより明らかだった。


だが、俺には関係なかった。自分の犯した罪から逃げられるなら、どんな選択肢でもよかった。この血に塗れた手を二度と見なくて済むなら、それに越したことはなかった。


「わかった。お前の提案に乗ってやる。」


俺は彼女の手を強く握り返し、決意を伝えた。

すると、イシュタムが突然俺を抱きしめ、身体が黒い闇に飲み込まれた。次の瞬間、意識が途切れた。



〜〜〜〜


「……起きろ!」


うるさい……。何の音だ……。

もう少し寝かせてくれ……。


「起きろって!」

「うるさい!」

耐えきれず目を開けると、目の前に黒髪と赤い瞳の女――イシュタムが顔を覗き込んでいた。


「うるさいとは何だ! 曲がりなりにも私は神だぞ。少しは敬意を持て!」


彼女は腰に手を当て、ぞんざいに扱われたことに憤慨しているようだった。


「……ここは?」


周りを見渡すと、先ほどまでの暗い闇の底のような空間は消え、目の前には美しい草原が広がっていた。心地よい風が頬を撫で、遠くの山々が青く霞んでいる。


「今後は言葉には気をつけろ、 まあ、転生はうまくいったみたいで何よりだ。」


ミハイルはイシュタムを無視して立ち上がると目の前の美しい景色にしばし見とれた。


「綺麗な場所だな……。」


穏やかな日々を想像しながらイシュタムを見ると、彼女は満面の笑みで答えた。


「この世界はな、200年にわたる戦争の真っ只中。

私の手伝いの内容は、その戦争をさっさと終わらせることだ。」


戦争を?終わらせる?この俺が?

というかその前にコイツ普通に嘘つきやがったな。


「穏やで平和な世界って言っただろ! 話が違うじゃないか!」


イシュタムに詰め寄ろうとしたその瞬間、地響きのような音が草原の奥から聞こえてきた。


「ウォオオオオ!」


雄叫びを上げながら近づいてくるそれは、

「おい詐欺死神、俺の見間違いじゃなければ、あれはランスを持った騎兵に見えるんだが」


「ああ、 ランスを持った騎兵の集団だな」


「転生するにしても、最初は街中とかの方が良かったんじゃないか?!」


心の中でイシュタムに罵詈雑言を浴びせながら、俺は必死で身を隠せそうな場所を探した。

「おい、イシュタム! お前、死神なんだろ? なんとかしろ!」

「無理だ。この世界に転移してる間は、死神の力は使えん。」


「じゃあお前、なんでここにいるんだ!」


役立たずの死神に心底失望しながら、俺は頭をフル回転させた。

かつて兵器を設計していた頃の記憶を呼び起こす。馬に金属の鎧、そして長い槍を考慮して弱点を考える。

川に飛び込むか? だが、水深が浅ければ身を隠せないし、槍や弓には無防備だ。


いや戦うなんて考えるな、とにかく身を隠せればいい

辺りを見回すと、近くに雑木林が目に入った。

「イシュタム、あの雑木林まで走る、着いて来い!」

「わかった!」

息を切らしながら全速力で走り、金属音と馬の蹄の音が背後で大きくなる恐怖を感じつつ、なんとか雑木林に飛び込み騎兵たちの進路から逃れることができた。


「……ふう、なんとか助かった。」


姿勢を低くして、通り過ぎる騎兵の装備を観察する。


「博物館でしか見たことなかったが……動いてるのを見ると、なかなか迫力があるな。」


金属の鎧に身を包んだ騎士たちは、どこか男心をくすぐるものがあった。


「どうだ?この世界に来た甲斐があったろ?」


イシュタムが得意げに近寄ってきた。足音を立てないよう気を遣っているらしい。


「お前、純粋な人間を騙して良心が痛まないのか? つーか、お前がここに来る必要あったのか? 何の役にも立たねえじゃん。」


苛立ちと疑問をぶつけると、イシュタムは少し申し訳なさそうに答えた。


「騙したのは悪かったな。だが真実を話しても、お前、協力してくれなかっただろ?」


騎兵隊はすでに通り過ぎ、草原は静けさを取り戻していた。

太陽の位置からすると、騎兵は東から来たらしい。まずは人里を見つけないと、情報がなさすぎる。

ミハイルは雑木林を抜け、平原を東に向かって歩き始めた。


「ミハイル、どこに行くんだ?」


「街か村を探す。この世界の情勢がわからないと何も始められない。どうせお前は何も知らないんだろ?」


「はは、その通りだ!飲み込みが早いな! 賢い男は嫌いじゃないぞ、ミハイル。」


役立たずの死神を連れて、

太陽が照らす平原を進んでいく

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