3.カトリーナ、辺境伯領へ
あー、揺れる馬車も爽快‼……と言いたいところだけど、酔った。
街を何カ所か通り過ぎての旅だけど、やっぱり辺境は遠いなぁ。
最後の街で、辺境伯ジムニーナル様の直属の部下がワイバーンに騎乗してやってきた。
「カトリーナ=ウェーブド様でしょうか?お荷物はこちらで全部ですか?あ、私は辺境伯ルドルフ=ジムニーナル様の部下であります。オールと申します。主に辺境伯様の家で執事の仕事をさせていただいています。この度はカトリーナ様をお迎えに上がるという仕事で参りました。さぁ、どうぞ。あ、中央で暮らしていた令嬢様はワイバーンに乗ったことがありませんか?やむを得ません。このオールが支えますので、どうぞご遠慮なく。こいつは飼育しているワイバーンの中でも温厚なやつです。ってえ~‼‼」
私は自分でも驚きです。ワイバーンちゃんが私に懐いてくれています。顔をペロペロ。
懐いてくれるのは嬉しいのですが。ヨダレ…。
なんかいろいろあったけど、無事に辺境伯邸に到着しました。
乗せてくれたワイバーンちゃんにはお礼をしたいところです。
「オール、この子の名前は?」
「特につけていませんよ?」
「うーん、鱗といい、瞳の色といいその深い青色が印象的ね。『ブルー』で。あと、この子の好物は?ここまで運んでくれたお礼をしたいんだけど?」
「こいつ・・・ブルーはリンゴが好きです」
「あら、カワイイ趣味ね。あとでリンゴを持ってくるわ。連れて来てくれてありがとう」
だから、ヨダレはやめて…。
辺境伯様にご挨拶をしないと!
辺境伯様は…強面でムキムキで傷跡だらけの34才。ルドルフ=ジムニーナル様。
対して、辺境伯夫人は儚げな美人!アナスタシア=ジムニーナル様 一応34才だけど、見た目なら私と姉妹って言ってもいいんじゃないかなぁ?
「うふふっ、この人怖いでしょ?この傷を私が治癒したのが出会いなのよ~。このくらいのこと聖女でもできるんでしょ。もっと傷跡も治そうか?って提案するんだけど、断られちゃった」
失敗しちゃったって感じでペロっと舌を出す仕草も可愛らしい!
どうして、この強面の辺境伯がこの儚げな夫人??と思うが夫婦にはいろいろあるんだろう。
次期辺境伯と、アレックス=ジムニーナル様も紹介された。18才らしい。うーん、ツンデレだろうか?ツンしかない可能性も考えられるけど。
概して、『辺境伯で暮らす男は強くなくてはならない』らしい。
とりあえず、ブルーにリンゴをあげた。
だから、ヨダレ…。
あら、他の飼育しているワイバーンちゃんが物欲しそうにこっちを見ているわ。
そんなところへアレックス様がいらっしゃいました。
「アレックス様は専用のワイバーンちゃんがいらっしゃるとか?お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「…ソニーだ。こいつはそこのどのワイバーンよりも速く空を駆けることがことができる」
聞いてない情報まで有難うございます。
私がソニーに乗る事はなさそうだなぁ。何しろ速いんじゃちょっとコワイし。
「母上専用のワイバーンはあいつだ。特殊でな。通常ワイバーンは鱗でおおわれているんだが。っおい!」
モフモフ~‼幸せ~!
「…あー、そういうわけだ。で、名前はウール。父上のワイバーンは、この中で一番の強面をしているあいつだ」
片目に刀傷が、隻眼?なんだろうか?
「名前はブラックだ」
みんな可愛いなぁ。そんな目で見ても簡単にはリンゴをあげないぞ!
「あー、君もここに来たわけだから、自分専用のワイバーンを選ばなくてはならない」
義務なんか!
「あ、それならブルーがいいです。相性もいいみたいですし」
こういうのって相性が大事だよね?
「それなら決まりだな。有事の際に各自専用のワイバーンに騎乗することになる」
ん?ブルーってオールさんの相方じゃなかったっけ?
「はい!ブルーは既にオールの専用のワイバーンちゃんでは?と思います!」
「それでは困ったな。選び直しだ」
ウールみたいにモフモフもいいけど、ワイバーンを主張してるような感じなのもいいわよね。はて、ワイバーンちゃんがたくさんいる厩舎を見る。
たくさんいるなぁ。飼育代高そう。小市民は思うのです。
よし、ファーストインプレッションよね!
「この子に決めた!」
なんか、美ワイバーンて感じ。プライド高そう。乗せてくれるかな?私みたいなの。
「あー、そいつはプライドが高くてなかなか懐かないんだが……」
私からリンゴの匂いでもするの?なんかペロペロ舐められた。ヨダレ……。
「名前ねぇ。『フラン』にする。フルネームは『フランシス』よ。普段は長いから『フラン』て呼ぶけど」
本ワイバーンも気に入ったようで、また、舐められた。だからヨダレ……。
うん、ヨダレは気になるよね。懐いてくれるのは嬉しいけどさ。