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ショタ転生~魔族の将、子供の姿で自由に生きます~  作者: 灰銀朔太郎
第一章『そのままとは一体…。』
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第9話



「おーい、身元引受人が来たぞー」



アリオスがまた棒で突いてくる。

そうか、そうなってしまったか。

どうやら人間に飼われる事になりそうな展開に現実逃避する為、鉄格子に背中を向けてごろんと寝返りを打つ。


「そんな奴は知らん、追い返せアリオス」

「いやぁ、俺には追い返すなんてとても出来ない相手でなぁ」


背中を向けていてもわかるぞ、また無精髭をぞりぞり撫でているんだろう?

ふむ、アリオスが追い返せないほど身体的か身分的に強い奴か…。


チッ、しょうがねぇ、起きるか。


渋々むくりと身体を起こし腹をぼりぼり掻いていたが、部屋に入って来た()()()を見た瞬間全身が総毛立ち、飛び退いて鉄格子から距離を取った。


なんだこのジジイ…バケモンだ…。


「邪魔するぞアリオス、…この小僧が『ゼノ』か?」

「はい、マグナス様」

「ふぅむ、強いな。確かに成長すれば魔族の将くらい簡単に務まるだろう」


オレの前世がバレてないかこれ…。


「自己紹介させてもらおう、俺はマグナス・オーロン。『剣聖』と呼ばれている」


銀色の髪の老人はそう名乗った。

白い外套から見える左腕は丸太の様に太い。

ん?右腕が無いのかこのジジイ?


剣聖ねぇ…、別に驚きは無い。

騎士団長のアリオスはあの変な盾さえなきゃ今のオレでも勝てるが、このジジイは無理だ。

何百と死線を越え、培ってきたオレの感が、前世でもギリギリだと告げる。

片手なんてものはなんのハンデにもならない。

圧倒的な強さを感じる。そんなジジイが無名な訳がない。


「それで?ジジイは一体オレに何の用だ?」


ちらっとジジイの隻腕に視線をやりながら聞く。

てかこのジジイの背負ってる()()()みたいな板なんだあれ。

まさか剣か…?


「小僧、俺の弟子にならんか?」

「アリオス様が、弟子をとられるんですか?」

「おぅ、コイツなら俺の()()になれる器だ、俺の夢を叶えられる器だ」


「ふざけんな、誰が人間なんかの弟子になるかよ」


はーあほらし。

そしてオレはまた横になって、『失せろ』と手をヒラヒラしてみせる。


「断っても良いのか?」

「…どういう意味だ…?」

「お前にある選択肢は俺の弟子になるか、頭のおかしい魔法使いの実験台になるか、処刑されるか、一生幽閉されるかの4つだけだぞ。」


弟子になるか、実験台になるか、処刑されるか、幽閉…。



おいっ!消去法で1択じゃねぇか!!

そういうのは選択肢って言わないんだよ!!!



「あー、わかった、わかった。あんたの弟子になるよ。年寄りの寿命が尽きるまで気長に待たせてもらうさ」


しょうがねぇ、と起き上がって胡坐をかく俺が軽口を叩いた瞬間、ジジイはおもむろに背負った戸板の様な剣に左手を伸ばす。


「あっ!マグナス様!ちょっと待っ」


慌てるアリオスを無視してジジイは()()()()()()()()






建物が割れた。

文字通りに、真っ二つに。

俺とジジイを隔てていた鉄格子も、壁も、床も、屋根すらも、何もかもが割れた。





「なんだそのデタラメな剣は……」


軽く振り下ろしただけだぞ?

あんなもの全力で振ったら城どころか山すら割れそうだ…。

あちゃあ、とアリオスは目を覆い、天を仰いでいる。

屋根が割れて星空が綺麗だ。






「前世の年を含めたらお前も俺とさして変わらんだろう?」



『剣聖』はニヤリと笑った。





 ───────────────────────────────────





シア・グレイスは1か月ぶりに自室に戻り、高級なベッド上に手足投げ出していた。


「ゼノ様はどうなられたのでしょう…。」


父親にあの魔族の事について聞き取りを受け、その最中何度も悪い人ではない、殺さないでくれと頼んだが聞き入れてもらえるかどうか…。

多分殺されはしない、はず、多分。


好きになった。魔族と将来結婚できるのか?などと問えば悪い方向に話が進む事はまだ10歳ほどのシアにも予測出来ていた。


シアの父、七星『神槍』カエラムは娘を溺愛していた。

今のうちに殺しておこうなどと言い出しかねない。


「やはり私が、私自身が力を付け、強くなる他ありませんね…。」





翌朝、1か月ぶりにグレイス家の食卓に家族全員が揃っていた。

青い髪をオールバックに整えた父の機嫌も良さそうだ。


「お父様お願いがあるのですが」

「んん?どうしたんだいシア?何か欲しい物でもあるのかい?」

「今日から兄様と一緒に槍の訓練に参加してもよろしいでしょうか?」

「ん~まだシアには早いんじゃないかなぁ、それにシアはそんな事する必要はないと思うよ?」

「1月山で生活して護身の術くらい身に着けるべきだと思ったのです」

「む、確かにシアも槍を学べば攫われたり暴漢から身を守れるか…。」


「そうですよあなた、私もシアの年頃には棒を振り回していましたよ」

「そうだったね…。」

幼少の頃妻に棒で追い回された思い出がカエラムの脳をよぎった。


にこにこと父の返事を待ち微笑むシアにでれっとしてカエラムはこう返した。




「わかった、今日からシアも兄のパルアと一緒に訓練を受けなさい」


「はい!!」



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