第89話
「じゃ、はじめるか」
左肩に吸生蛮刀サングイス担ぎ、右手にクリヴァールを握って構えた。
フレイアは棒立ちのままだ。
「そちらからどうぞ。安心して、殺さないから」
「じゃ、お言葉に甘えて…!!」
サングイスを担いだままクルリと体を右に一回転させて魔槍を横薙ぎに振り抜く。
節約しても無駄撃ちになるだけだと判断して最初からかなりの魔力を槍に流した結果、振られた槍により俺を基点として扇状に紅蓮の大津波が発生、棒立ちのフレイアを飲み込んだ。
しかし人間を一瞬で炭化させる炎の波涛が甲板を駆け抜けた跡には微笑を湛えたままのフレイアが涼しい顔で立っていた。
よく見ると球状の淡い光がフレイアを包んでいる、魔力障壁だ。
オレのクリヴァールは使用者の魔力を燃料に火炎魔法へと変換する、熱線も爆炎も火炎魔法だ。
つまり普通の魔法と同様に魔力に阻まれれば減衰する、その魔力障壁が強力だった場合はご覧の通りである。
全魔力を注ぎ込んでヒルディスの様に熱線を照射すれ貫けるだろうか?
今まで戦った誰よりも強く彼我の戦力差が全く読めなかった。
「凄い魔力ねぇ、流石は魔族の将軍を務めていただけあるわぁ」
「前世の話だし全盛期にはまだ遠く及んでいない、そんな事よりオレの炎が全く効いていない様に見えるが?」
「そんな事ないわよ?もう少し頑張れば届きそう」
「本当かよ…」
「本当よ~?アーティファクトには2種類あるの。神が作った神製と天空国家ミラ製、知っているわよね?」
「あぁ」
「厳密にはこの首飾りの様な例外はあるけれど、ほぼその二つに分類されるわ」
「同じアーティファクトでも性能が段違いに強力なのが神製だろ?」
「えぇ、そして今挙げた二つの内の後者、ミラ製のアーティファクトは天地大戦で神々と戦う為に作られた物よ。当時のミラ人が使っても効果があったのだから魔族の中でも魔力に秀でた貴方が使えば当然私にも通用するわ」
いやでもそのミラ人、負けて空に浮かんでた国ごと海中や地中に埋まってんじゃねぇか…。
「それに私、戦闘は苦手なの」
これは本当の様な気がした、何の女神か知らないが戦いの神という雰囲気が全くしない。
だがそれは神の中ではだ。
甲板を蹴って突進を開始するとフレイアの周囲に魔力の淀みを察知した。
走りながら少量の魔力を通したクリヴァールを振り、薄く炎を飛ばすとフレイアに向かった炎に『ボッボボッ…ボッ…』と穴が空く。
慌てて宙に飛び上がって回避した。
恐らく風魔法、当たれば鉄板をも拉げさせるであろう不可視の圧縮された空気の塊が直前までオレの居た場所を複数通過したのがわかった。
そのまま空中で右手のクリヴァールを逆手に持ち代え、背中を反らして右手を振り上げながら魔力を込め、眼下のフレイア目掛けて斜め下へと投擲する。
クレア学園でカエラム相手に使った技、あの時の様に万全に魔力を込める時間は無かったが今オレが出せる最強火力の一撃『インフェルノ・ストライク』である。
オレの手を離れたクリヴァールが炎を纏って紅い線となり軌跡を描き、まるで隕石の様にフレイア目掛けて落ちる!
甲板に着弾した瞬間、『カッ!!』と閃光が視界を白く染めた。
チッ、避けられたか…。
着弾する瞬間フレイアが槍を躱すのが見えた。
まぁ『殺さない』とは言われていたが『避けない』とは言われてないもんな。
閃光が迸った直後、隕石が着弾したかのような大爆発が起こり、フォルクヴァングの住民が酔っ払いも含めて飛び起きるほどの轟音が鳴り響く。
空中のオレの体はその爆風でさらに上空へと舞い上げられた。
停泊中のセスルームニルが大きく傾くほどに揺れ、海面に波が立ち、その爆心地である甲板にクリヴァールが突き刺さっていた。
フレイアがオレよりも低い位置で宙に浮かびながら驚き、その槍を見下ろしているのが見えた。
オレは自由落下しながら左肩に担いでいたサングイスの柄を両手で握り、船を見下ろしていたフレイア目掛けて全力で振り降ろす!!
サングイスが女神フレイアの身体を一刀両断するその直前、オレに気付いた彼女が右の片手、その掌をオレへと突き出す。
フレイアにサングイスの刃が届く数十センチ手前でオレの蛮刀が不可視の魔力障壁に阻まれた。
だが『バリィィィ…ン』と音を立てて魔力の壁が砕け散りその魔法の残滓が宙に散る!
咄嗟に張ったとはいえ障壁を越えられるのは予想外だったのであろう、今度こそフレイアは目を見開いた。
終わりだ。
オレの蛮刀が彼女の右の掌に当たり。
その刃が手首まで切り裂いて。
そして止まった。
「凄い…自分の血なんて見たのはいつぶりかしら…」
手から流れ出た血が腕を伝って肘から垂れるフレイアは呆然と、いや陶然とした表情で己の右手に食い込んだサングイスの刃を見つめていた。
「おい、素手で受け止めてんじゃねぇよ。化物が」
「うふふ、だから言ったでしょう?もう少し頑張れば届きそうだって」
そう言うと彼女は裂けた右手でサングイスの刃を掴んだまま、オレをセスルームニルへと蹴り落とした!
甲板に叩きつけられる直前に両手で爆発魔法『フランボルス』を真下に放って落下速度を殺し、甲板を転がりながら着地を成功させる。
これは浮遊魔法や飛行魔法が使えない者が空から落ちた時に使うやり方だ。
掴んだ獲物を空中から落として殺すハーピィみたいな魔物がいるザハンナ大陸に生きる魔族に取っては割とポピュラーな回避方法である。
転がった勢いのまますぐに起き上がり顔を上へと上げるとオレのサングイスを左手で持ったフレイアがすでに目前まで迫っていた。
慌てて上体を後ろへ反らしてその刃を避ける!
サングイスの刃がオレの顎先を掠めてセスルームニルの甲板に『ガギィン!!』と当たって止まった。
「殺さないんじゃ、なかったのかよ」
「避けられなければ直前で止めるつもりでしたよ?」
フレイアがにこりと微笑みながら左手のサングイスをくるりと回して柄をオレに向けて言った。
「はい、お返ししますね」
「どーも…」
「しかし今のは凄い威力でしたねぇ」
殺し合いをしている最中だと言うのにフレイアが甲板に突き立つクリヴァールを振り返って見ながらそう話しかけて来た。
「この船、神製なんですよ?まさか突き立つとは」
「オレは船をぶち抜くつもりで投擲したんだがな…」
「いやいや、これは本当に凄い事なのですよ?あの槍はミラ製なのですから」
「あ~…、やっぱりそうなのか。こっちのサングイスもだろう?」
「えぇ、そうですね」
同じアーティファクトでも神製はミラ製と比べて効果がぶっ飛んでやがるからなんとなくだが判別が付く。
切った相手からエナジードレインして使用者への回復魔法とするサングイスと使用者の魔力を火炎魔法に変換するクリヴァールは、こういっちゃなんだが控え目な能力だ。
まぁ前者は一体多で無双の力を発揮するし、後者は使用者の魔力量で魔王や竜をも屠り得るんだが。
「船、傷つけて悪かったな」
「気にしなくていいのよ?これくらいの傷ならば自動修復するから」
オレは警戒してフレイアを視界に収めたまま甲板に突き立つクリヴァールへと歩き、魔槍を引き抜いた。
「さぁ、そろそろ気は済んだかしら?」
サングイスの一撃を受け止めたフレイアの右手はいつの間にか全快していた。
彼女を倒すならば『インフェルノ・ストライク』を直撃させるしかないが不意打ちでもしなければ当てられる気がしない。
クリヴァールの熱線に全魔力を注ぎ込むにはすでにオレの魔力残量が心元無かった、熱線はあのヒルディスにも撃っている。
猪からの連戦、そして先ほどの『インフェルノ・ストライク』でかなりの魔力を消耗してしまっていた。
万全の状態であったならば試す価値もあったかもしれない。
すでに地平線は白み始めていた。
「古代魔法は使わないんだな?あんた魔法戦の方が得意なんだろう?」
「?」
古代魔法とはすでに現代に使用者がほぼいない低級、中級、上級魔法より更に上の魔法の事である。
「あぁ、極大魔法の事ですね。そんなの使ったら街が消えちゃうじゃない」
「なるほど…」
魔法専門相手に戦士が力負けとはな…。
オレはフレイアを見つめたまま、引き抜いたクリヴァールの穂先を自分の胸へと当てる。
全力の一撃を素手の片手で止められ俺の心はすでに折れていた。
「ずいぶん、つまらない事をするのね…?」
ようやくフレイアが今日初めてその微笑を止め、呆れたような表情を見せた。
「どうしてもアンタの檻の中で何百年も飼われる気にはならなくてな」
「そんなに私の物になるのが嫌なのかしら?自死を選ぶほどに?」
「ははは、死んでるも同然だろう?飼い殺されるんだから」
フレイアが自身の両肘を抱えるようにして空を仰いで少し考える素振りをした。
「はぁ…、仕方ないわね…。わかったわ、解放してあげましょう」
「いいのか…?双子も猪も殺されてしまってアンタには何も得る物が無いが」
「トリエグもベイグもヒルディスも、その魂はちゃんと共にあるわよー。それに貴方にはまだやってもらいたい事がありますし…」
そしてフレイアは怪しく微笑んだ。
「それに何も取らずに解放するなんて言って無いわ」
「…?」
「ちゃーんと貰うわよ?」
フレイアがそう言った直後、彼女の首飾りが煌めいた。
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東の空が明るみ始めた頃、ルキアとサニティアは街の外れに外壁にくっついて建つ窓の無い物置の様な小屋へと辿り着いた。
「音が、止みましたね」
サニティアが今来た道を振り返り返ってルキアへと話かけた。
「恐らくゼノ様が『腕試しさせろ』とか言って戦いを挑んだのでしょうね。どうせ殺されないしあわよくば倒せないか、とか考えて」
「あぁ~…、しかし最後の爆発は凄かったですね、もしかすると倒せてしまったのではないでしょうか?」
「どうでしょう。相手が魔族や竜人、竜種などならその可能性も充分ありますが相手が相手ですし…。それに先ほどの音がゼノ様の物とも限りませんよ?」
「そう…ですね…」
小屋の前で話していると小屋の入り口の扉が突然開いた。
「人の家の前でうるせぇぞ、入るならさっさと入れ」
「あっ、オーズさん。こんな朝早くに申し訳ありません…」
「いいから入れ」
オーズに招き入れられて小屋の中に二人で入り、木箱を椅子代わりに座った。
隻眼の獣人は、先ほどまで寝ていたのであろうベッド代わりの並べた木箱の上に戻ってゴロンと横になる。
「フン、やっぱり俺の予想通りになったか」
つまらなさそうに女二人を一瞥し、ベッドの傍の酒瓶を掴むと栓を抜いて中身を『グビッ』と一口飲んで手の甲で口元を拭った。
「で?どうなった?」
「埠頭で何人かのヴァナヘイム団員を蹴散らしたら金色の猪が現れて…」
話を始めたルキアがヒルディスの事を話したらオーズが露骨に顔を顰めた。
「ゼノ様がそれを倒したのですが」
「倒したのかッ!?」
「はい、かなりギリギリだったように感じましたが、なんとか」
「奴は魔法耐性を持っている上に城壁をぶち抜くほど頑丈だからな…、よく勝てたな。それで?奴はどうなった?」
「死にましたよ、腹を割られて地面に内臓を撒き散らして」
「は…ははっ…ふはははははッ!!そりゃ良いッ!傑作だ!!ははははは!!!」
オーズが木箱の上で大笑いを始めた。
「あ、あの…?」
「ちょっと、ちょっと待ってくれ!はははッ!」
笑いながら木箱の上に胡坐をかいて酒を呷る。
「ぷはぁっ…。はぁ…はぁ…はは、あー…酒が上手い!はぁ、ははは」
「オーズさんは、あの猪に、その…、何か恨みでもあったのでしょうか?」
ルキアが躊躇いながらオーズに聞く。
「ん?ふふ、アイツはな、フレイアのお気に入りの愛人の一人だよ。自分がフレイアの一番のお気に入りですみてぇな面してここ数年はいつもフレイアの隣に居てな、気に入らねぇ野郎だった」
ルキアとサニティアが固まった。
「えぇっと、愛人?ルキアさん、金色の猪ってあの帰り道に埠頭で死んでいた巨大なアレですよね?」
サニティアがルキアに確認をする。
「はい、恐らく…」
「それで合ってるよ、フレイアには動物とか獣人とかそういうの関係ないからな」
「えぇ…」
ルキアは引いて、サニティアは絶句した。
「あのぅ、浮気されて腹が立ったりとか、しないんですか?」
「もうとっくの昔に諦めてるさ。この街に流れて来た当時、槍の腕を買われてヴァナヘイムに入団し、フレイアに見初められ、あんな女神のような美しい女が、いや、実際女神だったんだが…、それが俺の物になった時は舞い上がったもんさ…、まぁすぐに本性を知る事になるんだがな、ふふっ…」
オーズが『実際は俺があの女の物になったってのにな』と自虐的に笑った。
「英雄色を好むとは少し違うがあの女はこの街の支配者だ、奴隷の売買を取り仕切ってんだから気に入った商品のつまみ食い、容姿の優れた男娼を囲うくらいはしょうがねぇと俺も目を瞑ったさ。あぁ、俺の片目は常に閉じているんだがな、ははは」
彼のジョークにルキアもサニティアも笑わないがオーズは気にした様子も無く続ける。
「犬やら山羊やら豚やら動物と交わるのも『まぁ、そういう癖もあるか…。いや、だからこそ獣人の俺が選ばれたのやもしれん…、どうせ孕む訳でもあるまいし好きにさせてやろう』なんて当時は思っていた」
二人は口を挟まずオーズの話に耳を傾けていた。
「だが、くだらん首飾りの対価に矮人共に好き勝手抱かれて来た時に流石に愛想が尽きたよ。しかし、そうか…あの猪が死んだか…、ふふっ、ざまぁみやがれ」
よほど気分が良かったのかオーズは『そうかそうか…』と呟きながら新しい酒瓶に手を伸ばして栓を開けた。
あの金色の猪が死んで気が晴れたのも、彼女がドワーフにその体を許した事が今でも許せないのも、今も彼女にその心を囚われているからなのではないだろうかとルキアは思った。
本当にどうでもいいのなら、フレイアのお気に入りが死んだ所で何とも思わないだろう、と。
「それで?あのイノシシ野郎が死んでどうなった?」
「女神フレイアが埠頭に現れ、船の上へと案内されました。そこでゼノ様がサニティアを返すように頼むと当然断られ、それ所かゼノ様と私も一緒に飼ってやるという申し出を受けました」
「実に彼女らしいな」
「その後、ゼノ様が名乗った瞬間フレイア様の気が変わられました、『お前が手に入るなら女二人は解放する』と」
「そして俺の予想通りになったという訳だ?ふむ、名乗ったら…?もう嘘だという事にはとっくに気付いているがあの小僧は、そしてお前達は何者だ?」
「ゼノ様は魔族です、そして私は半魔族、それからこのサニティアはレスティアス神聖国の聖女です」
酒瓶を片手にオーズは呆然となった。
ゼノとルキアの正体にでは無い、サニティアの素性にだ。
「驚いた、宿を全焼させる小僧も母親役のアンタも魔族だろうなと見当はついていたが…、そっちのお嬢さんは聖女だったか…」
『なるほどなぁ』と独りごちて、オーズは酒を飲んだ。
「まぁ、魔族のガキ一人で聖女を救い出せたと思えば…」
「ゼノ様はただの魔族ではありませんッ!!」
ルキアがテーブル代わりだった積まれた木箱を『バンッ!!』と叩く。
「あ?本当にお前の息子だったのか…?」
「ゼノ様は…、ゼノ・アルマスです!」
その名前は酒にしか興味の無いオーズでも知っていた、魔族の中でも有名人だ。
「ゼノ・アルマスが子供の姿でこの現代に蘇ったとかいう話は本当だったのか…。あの紅い槍…そうか…、子供の姿だから気付かなかった、老いたな俺も…」
「ゼノ様はクレア王国へ魔王ジズの息子が侵攻した先の戦争にて師を失いながらもそれを討伐した英雄です」
「なるほどな、それならアンタがそんなに熱くなってるのも理解出来る…。しかし魔王を倒すほどのゼノでも女神には流石に勝てなかったか…」
「先ほどまでは戦闘音が聞こえていたのですが…、どうなったかまでは…」
「船の方角から聞こえた轟音の正体はあの小僧か…」
オーズはそう呟くと酒をもう一口飲んで酒瓶の栓を閉め、木箱の上に横になってしまった。
「あの…?オーズさん…?」
「諦めろ」
「そんなっ…!!」
「あの小僧がどうにかして自力で帰ってくる事を祈るんだな。俺はアンタ達がこの街をさっさと出る事をオススメする」
「どうにかならないのでしょうか…?」
「ならんな、いや…待てよ…?」
ルキアとサニティアが期待の目をオーズに向ける。
「あの小僧は自分の意思でフレイアに飼われる事を選んだんだな?」
「はい、そうですが…?」
「だったらどうにかなるかもしれん…が、まぁ望み薄だな」
「自分の意思かどうかが関係あるのですか?」
「大アリだ。さっき言ったドワーフに体を許して作らせたくだらん首飾りだがな、それは魅了のアーティファクトだ」
ルキアとサニティアが驚愕に息を飲む。
現代に新しくアーティファクトを作った事もそうだが、その効果に驚いた。
魅了は吸血鬼などの限られた魔族くらいしか使い手がいないが悪名高い精神汚染魔法だ。
相手を薄っすらその気にさせる低位の物から自我が残るが体の自由を奪う物、完全に支配出来る物など使い手によってその効果は様々である、彼我の魔力差があればリジェクトする事や抗う事も可能だが…、女神の作った魅了のアーティファクトが低位な訳が無かった。
「そんな…、そんな重要な事を何故さっきここを出る前に教えて頂けなかったのですか!?」
「言えばそこのお嬢ちゃんを諦めたのか?」
「…ッ!!私とゼノ様が!そのアーティファクトにッ!魅了にかけられるとは思わなかったのですかッ!?」
「おいおい、俺に当たんなよ…。それに俺はこの結果を予想してただろ?フレイアがあの首飾りをアンタやあの小僧に使うとは思わなかったね」
「何の根拠があって…」
「長い間フレイアの傍にいたんだ、だからわかる」
「…。」
「フレイアは欲しい者を無理矢理力づくで自分の所有物にする癖に、相手にそれを選択させたがるのさ」
「どういう事ですか…?」
「首飾りより前から居る俺はもちろん、あの双子も、イノシシ野郎も、ヴァナヘイムの団員達も、魅了なんか使われちゃいない自分の意思だって事だ。近年はフレイアの傍から離れていたがな、彼女はあの首飾りを滅多に使わない。何故かって?無理矢理従わせた所でそこに愛が無いからだ、はは」
「ゼノ様は…、自分の意思でフレイア様に従う事を選んでいました」
「なら、あの首飾りにはかけられていないからまだ自我が残ってるって事だな?そこに賭けるしかねぇ。自棄になって自殺しようとでもしない限りフレイアはアーティファクトを使わんよ」
「…。」
「問題はさっきの戦闘音だなぁ、アンタ達二人が解放された後に首飾りを使われている可能性もある」
「アーティファクトは使わないと貴方がさっき…」
「絶対とは言ってねぇよ」
「なっ…」
「眠りたきゃ勝手にそこらの木箱を使っていいぞ~」
そう言うとオーズは『話は終わりだ』とこちらに背を向けて寝返りを打ってしまう。
ルキアとサニティアは顔を見合わせた。
「どうしましょう、ルキアさん…」
「どうしましょうね、本当に…」
フレイアとゼノ
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