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魔族の将、二度目の人生を自由に生きます  作者: 灰銀朔太郎
第八章『フォルクヴァングの老いた虎』

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第82話



 街に入って驚いた。

 奴隷の国だなんて言うから帝都みたいなのを想像していたが、獣人も普通に歩いている。


「獣人が普通に歩いてるな」

「そうですね」

「何かおかしい事なんですか?」


 サニティアはオレとルキアが首を傾げている事が不思議な様だ。


「ああ、おかしい、この国ではな。帝都じゃ獣人が首輪も無しに歩くなんてありえない」

「街の入り口の門番の口ぶりだとクレア王国もルマロス帝国もフォルクヴァングに手が出せないみたいな言い方でしたね。独自のルールで動いている別の国の様に感じます」

「実際そうなのかもしれないぞ?」

「とりあえずもう日も暮れますし宿を探しましょうか」

「そうだな」


 貴重品を荷車から背嚢へと移し、街の入り口にあった厩舎へと金を払って走鳥を預けた後、サニティアと手を繋いでルキアを先頭に宿を探した。


「ここにしましょうか?」


 ルキアが選んだのは河に面した1階が大きな酒場になっているかなり三階建ての大きな宿だった。

 飯を食うには困らなさそうだ。


「サニ…姉さんはここでいいか?」

「姉さん…。ええっと、はい、何か問題があるんですか?ゼノ」

「1階が酒場だと五月蠅いかな、と思っただけだ、よ」


 うーん、ぎこちない。


「人の少ない小さな宿よりも逆に安心かもしれませんね」

「姉さんが良いなら問題はない、母さんここにしよう」

「はい、部屋は…二部屋でよろしいですか?」

「母さんに任せる」


 オレとルキアは同室で構わないがサニティアはどうするのか?という意味だったのだろう。

 オレは3人同室でも何ら構わないしサニティアも文句は言わない、ルキアの好きな様にさせよう。

 ルキアを先頭にオレ達は酒場兼宿屋へと入った。




 ───────────────────────────────────




 まるでどこかの宮殿の様な豪華な一室、その部屋に相応しく美しい金の髪と白い肌をした絶世の美女が恍惚の表情で天井を仰いでいた。

 部屋の中には水音が響き渡り、美女は肩幅よりも足を外股に広げてこの部屋にまるで相応しくない格好をしていた。

 美女の足元にはこれまたこの美しい部屋に相応しくない巨大な金色の猪が一頭、『フゴフゴ』と鼻を鳴らしながら鼻先を突っ込んでいる。


「あぁん…、いいわぁ、ヒルディス…」


 美女が(ふけ)っていると『コンコン』と扉をノックする音が聞こえた。


「あー、フレイア様また浮気してるー」

「本当だ」


 茶色い髪から猫耳の生える双子の獣人が入って来た。


「あら、ベイグとトリエグ…。ん…、ダメじゃない…勝手に入ってきちゃ…。あん…」

「ちゃんとノックしたよー」

「ノックした」

「入室の許可は出してないわよ?ノックしてすぐ入って来たら意味ないでしょ~?」

「たしかにー」

「確かにね」


 二人の獣人はこの光景を目にしてもまるで動じていない。


「それで?一体何の用なの?」

()()()()が街に入って来たー」

「3人、親子」

「親子ぉ~?」

「金髪の母親、白髪の少年、白金の少女」

「あら、顔も良いの?」

「当然」

「へぇ~、じゃあ白髪の少年は私がもらっちゃおうかしら」

「そう言うと思ったー」

「残りの母親と娘は好きにしていいわよ」

「わかった」

「わかったー」


 鼻先を突っ込んでいた金色の猪の頭を『ぺちぺち』と叩いて美女が止めさせる。

 猪は『ブモッ…フゴッ…』と言いながら命令に従って足の間から離れた。


「じゃあ()()()()()お願いね?この街が揺らぐ事なんてあり得ないけれど、最近帝国が無くなって王国がこの地に入り込んでいるから、気を付けなさい」


 フレイアは喋りながら床に膝をついて動物の様に四つん這いになった。


「ベイグ、トリエグ。作戦は夜なのでしょう?貴方達も混ざっていく?」


 フレイアが妖艶な流し目で誘うと双子の獣人少年達は『浮気だー』『浮気だ』と言いながらけらけら笑った。



 ───────────────────────────────────




 ルキアがカウンターのオッサンに3人2部屋で予約を取っているのを後ろからサニティアと共に眺めながらオッサンを観察する。

 明らかに宿屋の主人じゃない、()()だ。

 服を内側から盛り上げている体、腕や顔に走る傷痕が違うと告げている。

 そして青いバンダナ腕に巻いていた。


「あの、別に同室でも良かったんですよ?」


 小声でサニティアが話しかけて来る。


「あー、気にしなくていい。サニティアを気遣ったのも勿論あるがアレはルキアがオレと二人きりになりたいだけだぞ」

「そ、そうですか…」


 サニティアが気まずそうに顔を逸らした。

 話していたらすぐにチェックインが済んだようでルキアがこちらを振り返った。


「2階、階段を上ってすぐの部屋を二つ借りられました。裏手に井戸もあるそうです。食事にしましょうか」

「久々に手の込んだ料理が食べられそうでテンションが上がって来たぞ」

「レスティアス以外の料理を食べるのは初めてです…」




 三人で混み始めた一階の酒場のテーブル席を囲んで乾杯をする。

 ちなみにサニティアは酒は飲まないそうだ。

 とりあえず名物料理を2,3品持って来てくれと頼んだら大きな魚の姿蒸しが最初に運ばれて来た。


「おっきいですねぇ…」


 ルキアが驚いている。


「食べきれるか不安です」


 サニティアも皿からはみ出している魚に若干引いている。

 三人で魚を食べ始めるとテーブルの中央にエビのトマトソースソテーが大皿に乗って運ばれて来た。

 フォークで刺して一つ口に放り込むとトマトの味が濃く、とても美味しかった。


「食べきれるかは置いておいて美味いな、うん」




「女二人と少年でその量は苦しかろう」


 茶色いブーツ、茶色い外套、茶色い鍔広帽で青いスカーフを首に巻いた隻眼の獣人がオレ達のテーブルに座った。


「ご一緒してもよろしいかな?ご婦人よ」


 ルキアがチラっとこちらを確認してくるが敢えて無視する、ルキアに任せよう。


「え、えぇ。私たち三人では食べきれなくて困っておりました」

「はっはっは、ここは美味くて量が多いのが人気の理由でな。おーい!こっちにジョッキで酒をくれ!!」


 男が給仕に声を掛けると、きびきびとした動きで厨房へ向かって行った。


「おじさんもヴァナヘイムなの?」

「お、よく気付いたな小僧」


 楽しそうに尻尾をゆらゆらさせてこちらへ視線を向けて来る。

 子供のフリをして情報収集させてもらうとするか。

 ちなみに『おじさん』と呼びはしたが年齢がわからない、獣人は成人した後の年齢がさっぱり読めないのだ。 


「俺はオーズってんだ、放浪するのが趣味だが一応ヴァナヘイムの構成員もやってる」


 そう言いながら首元の青いスカーフを軽く摘まんで見せた。


「かっこいい!ヴァナヘイムってどんな仕事するの?」

「街の治安維持だな。あとは取引、商売が上手く行くように監督したりだな」

「商売?」

「あぁ、この街の名産品はちょっと特殊でな、人間を売ってるんだ」

「えー、かわいそう!」

「無理やり連れて来られた…奴も中にはいるんだろうが、そう酷い話でも無いんだぜ?何もかも失った時、最後に売れるのは体と時間だけだからな」


 そういって隻眼の獣人はグイっとジョッキを飲み干した。


「この街では普通に獣人が過ごせるんだね」

「ん?小僧は帝都から来たのか?だったら不思議だよなぁ…。まぁここの商品は獣人だけとは限らないからな。人間も売られてる。たまーに魔族、極稀にエルフが売られる事もあるんだぞ?」

「エルフも!?」


 あいつらエルヘイブンから出て来る事もあるのか、前世も合わせて一度もお目にかかった事は無い。

 容姿に優れていて耳が長く、魔族並みに魔力が高く、魔族並みに長寿らしい。

 オレが子供のフリをして情報を聞き出すのをルキアもサニティアも食事をしながら静観している。


「あぁ、本当に極稀にだがな」

「誰がエルフなんて買うの?」

「そりゃ言えない、顧客情報だからな。守秘義務って言うんだぜ、覚えときな。だがまぁ、とんでもない大金が動く。」

「へぇ~、どこで人間を売ったり買ったりしてるの?」

「街に来る時に港の大きな船を見たか?」

「うん」

「あれは『セスルームニル』っつってな、あそこの船内が取引会場になってんのさ。ギャンブルは街で出来るが人身売買は船で行われる事になってる」

「へー!おじさん物知りだね!」

「ふふん、まぁな」


 テーブルのエビをツマミに2杯目のジョッキを一口飲んだ。


「ヴァナヘイムって良い人達なんだね?」

「ん?あぁ~…どうなんだろうな…」

「違うの?」

「俺はヴァナヘイムの一員ではあるんだが、内情にあまり詳しくないというか、蚊帳の外というか、飼われているというか…」

「ネコだから?」

「あぁ、ネコだから飼われてるんだ」

「あはは」

「まー、しばらくはこの街にいるだろうから、何か困ったら言え。助けてやる、飯の礼だ」

「猫の手も借りたい時に頼るよ!」

「言うなぁ小僧…、そっちの、奥方とお嬢さんも何かあったら頼ってくれ、こう見えて腕は立つのだ」

「はい、ありがとうございます」


 ルキアの礼を受け取ると満足したのか一つ頷いた後にエビをもう一匹摘まんで口に放り込んで席を立つ。


「夜風に当たって来る、酒はあまり強く無くてな。馳走になった、ありがとう」

「いえいえ、どうせ食べきれませんでしたので」


 礼を言うとオーズは店の外へと出て行った。




 ───────────────────────────────────




「そろそろ時間かな、行くぞトリエグ。いつまでやってんだ」

「もー待ってよー」


 すでに服を来た猫獣人のベイグが豪華な船室の窓から空に浮かぶ月を見上げ、双子の片割れトリエグが服を着るのを待っていた。


「そんなに急いで行かなくとも獲物はすでに網の中でしょう?」


 魔力灯の明かりに肌を汗で艶めかしく光らせたフレイアが、横たわる猪の腹を枕にして床に寝そべり、双子へと言葉をかける。


「フレイア様も水浴びした方が良いよ、今日はオーズ様が帰って来てる」

「だーいじょーぶよぉ、呼ばないと向こうからはこっちに来ないし。あの人あんまり船に近寄らないし。それに許可なくここまで入って来られないもの、うふふ」

「着替えたー」

「よし、行くぞ」

「気を付けていってらっしゃい」

「はーい!」



 服を着終わったトリエグを連れてベイグが部屋を出て行く。

 双子を見送ったフレイアはそのまま猪の太ももを撫で回し『さぁヒルディス?夜はまだ長いわよ』と微笑みかけた。



フレイア様と双子とイノシシのR-18

※スカトロ・獣姦注意


https://novel18.syosetu.com/n6135kp/19

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