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魔族の将、二度目の人生を自由に生きます  作者: 灰銀朔太郎
第六章『黒風白雨・黒翼白刃』

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第60話


 朝からルキアとクオンを伴って冒険者ギルドに来ていた。


「おっ、よォやく来やがったかァ!」


 なぜかゲイルがギルドのロビーにいる。

 誰かと待ち合わせだろうか?


「さて、何か面白そうな依頼はあるかなっと…」

「おい待てコラ無視すンな」

「…何してんだお前、妹と帰省してたんじゃないのか?」

「昨日の夕方にこっちに帰って来たんだよ」

「何の用だよ?もう剣聖とは戦わせてやっただろ」




 実は数日前あまりに五月蠅いので森の家へと連れて行き、ジジイとゲイルを引き合わせてやった。


 アーティファクト無しの勝負で結果はゲイルの惨敗。

『ルキアの首飾りがあるから殺さない程度に満足するまで付き合ってやってくれ』とジジイに頼んだら、顎が砕けて右目は潰れ、左腕はぶらんぶらんで左足は膝から千切れかかってようやくゲイルが諦めて戦うの止めた。


 ゲイルには目隠しをさせて低級回復薬を飲ませて誤魔化し、首飾りで全身の傷を治してやった。

 まだ信用し切れてはいないコイツにルキアの首飾りの秘密を隠す為だ。


 目隠しを取ってやると全身の傷の具合を確かめた後、「すげぇ薬だな。潰れた目も骨も脚も全部治ってやがる…」と驚いた後に「途中からどうせ死ぬなら『轟音靴フラゴール』『岩漿剣ラーヴァ』『暴風剣ヴェントルナード』で完全武装して殺し合いすれば良かったと後悔していた、アーティファクトがあれば結果は変わってたかもしれねェ…」と抜かすもんだから『剣聖も断山剣ラピスガドルを使うぞ?』と言ったら黙っていた。



「俺も冒険者になろォと思ってなァ」

「へぇ、頑張れよ?」

「お前の仲間に入れてくれ」

「止めた方がいいと思うぞ、オレは金が欲しくて仕事で冒険者やってる訳じゃないからな。半月仕事無しとかザラだぞ」

「ゲッ…」

「勝手にやめちまったとはいえお前元帝国将軍だろ…金無いのかよ」

「すぐ使っちまうし帝国内ならなんでもツケで済んだからなぁ」

「お前の財布の紐は妹に握ってもらおう、この事はクララに報告するぞ」

「くっくっく、すでにもう妹にはバレてるンだな、これが」

「あぁ、だから王都に帰って来てすぐなのに金稼ぎ(ココ)に来てるのか…」

「そういう事だ」

「じゃあ尚更一人の方がいいな。依頼は何人で達成しようと報酬料は変わらねぇ、一人で達成すれば総取りだ」

「仕方ねェ…、一人でやるかァ」

「D級か?」

「当然」

「討伐系の依頼はほぼC級からだぞ」

「マジかよ…」

「簡単にCに昇級したいなら誰もやらなさそうなタダ同然の討伐依頼をボランティアで受けないとダメだな」


 懐から金貨を1枚取り出して投げてやる。


「なんだァ?憐れみかァ?」

「餞別かな、後輩の新しい旅立ちの」

「まァ、そういう事なら貰っとくか…」

「受付に行って手っ取り早くC級に上がれる依頼くれって頼んで来いよ。茶髪でメガネの無愛想な女いただろ、アイツおすすめだぞ」

「おー、無愛想な女だな!」


 声がでかい。




「どの依頼にしましょうかねぇ…」

「思い切って他国の配達依頼でも受けて見るか?」

「ゼノ様もしかしてレスティアス神聖国に行きたいとか考えてます?」

「ダメか?」

「ダメではないですけど魔族は入国できるかも怪しいですよ?」

「女神レスティア転生させてもらったオレでもか」

「一応レスティアス神聖国のにもシェクルトの関係者が入り込んでいるので、魔族を裏切り人に与したゼノ様が復活した情報くらいは伝わっていると思いますが、そこに暮らす人々にはまだ広まってなさそうですねぇ」

「うーん、おっ、これ面白そうだぞ」


 オレが見つけたのはユークリッド大陸北東に()()()廃都オーロン、そこの調査隊へ物資を運ぶ補給兵の護衛だ。


「これは…廃都オーロンですか、また随分遠いですね」

「走鳥使ってどれくらい掛かるだろうか?」

「片道1月以上は確実です」

「物見遊山に行くには遠いなぁ…」


 ルキアとそんな事を喋っていたらギルドの正面入り口から兵士が駆け込んで来た。

 何かあったのだろうか?

 受付嬢に何か書類を見せると血相を変えた受付はギルドマスターの部屋に駆けて行く。


「何かあったのか?」

「穏やかではない雰囲気でしたね」


 するとギルドマスターの部屋に駆けこんだ受付嬢がすぐに部屋から出て来るなり、もう一つあるカウンターの同僚に何か耳打ちをした。

 もう一人の受付嬢の顔色がサッと一瞬で変わる。

 そして二人の受付嬢はギルド内掲示板に張り出されている全ての依頼をなんと()()()()()()


「おいおい」「なんだなんだ」とギルドのロビーに居た冒険者達も異変に気付いてざわつき始める。


「何が起きてンだこれ?」


 先ほどロビー内で別れたばかりのゲイルが話しかけて来る。


「こっちだって知らねーよ」

「いくつか予想はつくが」

「なんだ?」

「王都内にいる冒険者を王都から出したくないから依頼の受注を締め切ってンだろォ?これ」

「まぁ、そうかもな」

「じャあ、戦争なんじゃねェか?」

「どことだよ」

「ルマロスかねェ、誰かさんが皇帝ぶっ殺しちまッたからなァ?大義名分はあらァな」

「ストルトが死んで、お前がここにいて、あの国に戦争ふっかけるような行動力ある奴いるのか?」

「いや、いねェな。権力にしか興味の無いブタみてェな大臣がいるだけだ。あいつに政治丸投げして出て来た俺が断言する、あの豚にそんな度胸はねェ。そもそも人がついて来ねェよ」

「ふーん?」

「そっちの銀狐族の嬢ちゃんの前でする話じゃねェが獣人の国を侵略したのは()()()()()()()()からだ。一旗揚げてェ農家の次男三男や冒険者崩れ共が参加して侵略した訳だ。獣人を奴隷にして財産を成し、ルマロス帝国を手に入れた今、国力的にクレア王国に劣るルマロスがクレア王国に宣戦布告する旨みが一切ねェ、誰もついてこねェよ」

「じゃあどこと戦争なんてするんだよ」

「レスティアス神聖国はあり得ません、ルドラ王国もです」


 横からルキアが口を挟んでくる。


「どこにあるのかも定かじゃない引き籠ってる長耳族のエルヘイブンももっとあり得ないしな」

「クレア王国に隣接している大国はこれくらいでしょうか?」

「細々とした小国はあるが、それくらいだなァ…」


 三人の頭に浮かぶの一つだけだ。




「魔族か…」




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