第6話
『すごいですゼノ様っ!大漁ですねっ!』
『あー、よく釣れた』
フォレストディアやワイルドボアの肉が連日続いていたからな。
オレも飽きていたから今日は魚を釣った。
ん?あれ?これ夢か?
アリオスとか言う奴の変な盾にぶっ飛ばされたような覚えがあるんだが・・・。
『ゼノ様は釣りがお上手なんですね?』
『いや?釣りは初めてだぞ?襲った商人の荷物に釣り竿があったからな、拝借して釣り針に虫をつけて川に垂らしてただけだぞ?』
『え゛っ゛!!?』
ん?あぁ虫か、虫は嫌いか、そうか。
この後、焼けた魚を複雑そうな顔で食べていた。
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ん?場面が飛んだな。
行商が通りかからないかシアが見張り、オレはシアの後ろで岩の上に寝転がっている。
オレが一人で森の野宿生活をしていた時に行商から奪った際、物資の中から見つけた短眼鏡を手に真面目に見張りをしているシアに投げかける。
『商人から奪った物だけで生活するのも限界があるなー?』
『ゼノ様は村に買いに、は行けませんよね、この近くにあるんでしょうか?』
『あるぞー、山の麓、森を抜けてすぐの所に小さな村』
『私が行って参りましょうか?』
『はは、拾った時は「置いて行かれたら死んでしまいますぅ」とか言ってたのに』
『…言ってません』
『いーや、言ってたね』
『言ってません!』
『はいはい』
『言ってませんからね?』
『わかったって、一人で森を抜けられるのか?』
『ええ、下級ですが攻撃魔法と回復魔法が使えますし、この森には動物は出ても魔物は出ませんので』
『じゃあ頼むかな、悪いが何が必要か分からん、シアの判断で適当に見繕って来てくれ、金ならあるんだ、ほら』
そういってオレの代金だった金貨の詰まった袋を渡す
『えぇ…なんですかこの大金…、全部金貨じゃないですか…』
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また場面が飛んだ。
『えーと…。そ…ら…に…。 えーと…。く…せし…ありきしか…。だめだ難しくて読めねぇ…』
『あれ?難しかったですか?表紙から伝承を集めた子供向けの簡単な本かと思ったんですが…』
シアに文字の読み方を習っていた時だな。
『あっ!ほらっ!かなり省かれていますがクレア伝説も載ってますよ!』
『…クレア伝説だと?』
『はい!この国、クレアの名前の元となった大昔の勇者様です』
『なん…だと…(おい女神!おい!!大昔ってどういう事だっ!!!)』
『そういえばゼノ様はクレア伝説に出てくる裏切りの将軍と同じ名前ですね?』
『へぇ…』
大昔ってどれくらい昔なんだろうか…。
そのままってのはオレだけに適用される条件だったのだろう。
いや、オレ自身も全くそのままでは無いんだが。
しかし大昔って…。
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また場面が飛んだ
『そうだ、シア。これやるよ』
『?』
シアは首をかしげならこちらへやってくる。
オレは自分の首に掛けていた魔法使いの男から奪った指輪2つを通したネックレスを指差す。
『わぁ!いいですかっ!?』
シアは目をキラキラさせて喜んでいる。
オレにとってはゴミみたいな効果しか無い指輪だがシアには大きな恩恵があるだろう。
『つけてやるよ、背中向けろ』
『はいっ!!』
『片方は魔力が上がる、もう片方の指輪の効果は分からん、身体能力が上がった感じはしなかったから、多分耐性系の魔道具だと思う。お前魔法使えるって言ってたからな、魔力の指輪の方は結構有用だと思うぞ』
返事がない。
シアは聞いているのかいないのか、うわの空でネックレスに通された2つの指輪を長い間見ていた。
こんなに喜んでくれるならくれてやった甲斐があるというものだ、うむ。
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またまた場面が飛んだ
まさかこれが走馬燈という奴なのではないか…?
また死んだのかオレ…。
女神レスティアよ、転生して3か月経たずに死んでしまった、やりなおせさては頂けないか。
『おい、これはなんて読むんだっけ』
『…すみません、少しお花を摘んで参ります』
『いらん、この洞窟に花なんか飾ってどうするんだ』
『そういう意味ではなくて…』
『あぁ、うんこか、はは』
『分かっているなら聞かないでください!!』
シアはからかうと面白いなぁ
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「おい、起きろ」
突然オレのシアの声が野太くなった、誰だお前、オレは今この2か月ほどの短い人生の走馬燈を楽しんでいるんだ。
邪魔をするんじゃない。
「起きろって」
渋々目を開くとアリオスが鉄格子越しにオレを木の棒で突いていた。
どうやらまだオレは死んでいないらしい。