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魔族の将、二度目の人生を自由に生きます  作者: 灰銀朔太郎
第五章『刃風』

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第56話



 今日も今日とてルキアに連れられてシェクルト教団へ向かう。

 放っておいたら昼まで寝ているし、一人で行かせたらサボると思われている。

 合格がもらえるまではこの生活が続きそうだ。



 午前中の時間、獣人の娘達と文字の読み書きの授業を受けた後は自由時間になった。

 ルキアに『王都からは出ない事』を条件に授業を受けたご褒美として午後は遊ぶ事が許されたのだが、まるで母親のようである。


 いつもの路地で子供達と剣劇ごっこに興じているとシアがやって来る。

 冷やかしてくる子供達を追い払って城下町をシアと散策するのが日課になりつつあった。




 ───────────────────────────────────



 シアと王都内を2人でぶらぶら歩く。


「ゼノ様は、ルキアさんとどのような関係なのでしょう…?」

「ルキアか?あいつはオレの前世の戦友の娘だよ」


 シアにはオレの前世が六魔将ゼノである事はもう伝えてある、別に隠すような事でもない。


「…お二人は、その、お付き合いとか、されているんですか…?」

「ははは、オレは今はガキの姿だぞ?アイツは従者だと自分の事を名乗っているよ」

「お二人の雰囲気が男女のそれに感じる時があります…」

「そうかー…?」


 おぉ、流石だなシア。わかるか、少女でも女だな。

 確かにオレとルキアは同じパーティの仲間というだけでは無い。




 なんだか今日のシアの様子はおかしい。




 ───────────────────────────────────




 街をぶらついていたらだいぶ遠くまで来てしまった。

 クレア王国内の南東エリア、所謂貧民街だ。

 王都は山肌にある王城から順に降り、貴族街、城下町、貧民街となっている。


 シアが腕を組んで来て歩きづらいなぁ、なんて考えていると目の前の道を2人のみすぼらしい風貌の男が塞いだ。


「おい、ガキ。ずいぶんと楽しそうだな」

「良い身なりしてんじゃねぇか、とりあえず2人とも服を脱げ、殺されたく無きゃな」


 お、人攫いか?恐喝か?


「お前ら正気か?オレはガキだが魔族だぞ?」


「ギャハハ!魔族だぁ?ガキが意気がってんじゃねぇよ!」

「おっ!そうだ!小僧、そっちのメスガキ置いていけばお前の命だけは助けてやるよ!どうする!?」

「無かった事にしてやるから失せろ」

「あぁ!?なんだとてめぇ!!?」


「ゼノ様、ここは私が…!」


 シアが前へ出てゴロツキへ向けて掌を突きだした。


「おいシア…」

「アイスジャベリン!」


 シアの掌に生成された氷の槍が射出され、防ごうとした片方のゴロツキの腕に刺さった。

 血は流れない。

 周囲の組織も凍結しているため回復魔法が無ければこの男の腕は肘から切り離すしかないだろう。


「やりやがったな…!クソガキがぁ!!」


 ゴロツキもどうやら本気になったらしい、腰の短剣を抜いて襲い掛かって来た。


「な、なんでっ!?腕にアイスジャベリンが刺さったのに…!!」


 ため息を一つ吐いてシアの代わりにオレが前へ出た。

 ゴロツキの手から短剣を手刀で叩き落とし、掌底で吹き飛ばす。

 すかさずもう一人の男の足を水面蹴りで払い尻餅をついた所に尻尾を鳩尾(みぞおち)に突きつけた。


「て、てめぇ…」

「やめとけ、オレの尾は鉄鎧すら貫通するぞ」

「ぐ…」


「ゼノ様凄いですっ!!」


 後ろから褒めて来るシアを無視してゆっくりと突きつけた尾を離してやる。

 男は尻餅をついたままずりずりと後ずさりをした後、投げ飛ばされた仲間に『おい、大丈夫か?』と声を掛けていた。


 やれやれ。


 オレは懐から金貨2枚を投げてやる。


「その金でレスティアの教会に行って腕治してもらえ。壊死しているから魔法で直さないと腕を失うぞ。それからこんな事してないで真面目に働け」


 そう言って立ち去った。




「ゼノ様っ!流石ですっ!」

「…シア、あれはダメだ」

「えっ…」

「シアは魔法で攻撃した時、アイツ等を殺すつもりだったか?」

「いえ…」

「腕に攻撃魔法を当てた所で相手を激昂させるだけだ。もし相手が魔法やケガにビビって退かなかった場合も考えて攻撃しろ、やるならちゃんと殺す覚悟を持て」

「殺す…」

「でなければシアが殺される」

「…。」

「まぁ、そのくらいの気持ちで攻撃しろって事だ」

「はい、申し訳ございませんでした…」

「下町に戻って、露店で何か食べながら帰ろうか」

「はい…」


 落ち込んでいるシアの頭をぐりぐり撫でてやった。




 ───────────────────────────────────




 シアを貴族街の入り口まで送り届けた後、ヴァルハラガーデンへと向かう。

 そろそろ夕暮れ、1階の酒場兼食堂もそろそろ開く頃だろう。

 城下町を歩いていると見慣れた後ろ姿を見つけた、あれは酒場の看板娘だな。

 クララが前も見えないほど重そうな荷物を抱えて歩いている。


「大変そうだな?手伝うぞ?」

「へっ!?あ!ゼノくん!!」


 ヴァルハラガーデンで寝泊まりし、毎朝毎晩食事をしていたら常連になっていた。

 なんと君呼びである、まぁ見た目10歳ほどだから仕方ない。


「えへへ、お客さんには待たせられませんよ~」

「どうせオレもヴァルハラガーデンに帰るんだぞ?その食材が着かないと店開かないんじゃないか?」

「うっ…そうですね、ではお願いします」


 クララの荷物を半分持ってやり一緒に並んで酒場へと帰る。




 ───────────────────────────────────




「もうすっかりここの席が指定席になっちゃいましたねぇ」


 ルキアが酒場の店内、周りを見渡して言う。


「たまに依頼で数日開けるから席取っとかなくていいって言ってんだけどなぁ、宿泊代貰ってる内はテーブル確保しとくって言われたよ」


 クオンは無言でもぐもぐ食べている。

 あの細い腰回りのどこに消えているのか不思議だ。




「よォ、剣聖の弟子、魔族のゼノってェのはお前かァ?」


 すっと視線を向ける。

 そこにはくすんだ金髪で、黒いコートを着て、明らかに何らかのアーティファクトと思われる翡翠色の剣を腰に下げ、黒金のグリーブを履き、溶岩石の板を背嚢に括り付け片手で背負っている凶悪な笑みの男が立っていた。




ゲイル来たよゲイル!


https://novel18.syosetu.com/n6135kp/12

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