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魔族の将、二度目の人生を自由に生きます  作者: 灰銀朔太郎
第三章『魔族の冒険者』

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35/99

第35話



 タマゴ野郎はオレを跨ぐように立ち、振り上げられた剛腕が今にも振り下ろされようとしていた。

 あんなものを喰らったら、叩きつけたトマトになってしまう。

 奴の足にオレの尾をそっと伸ばす、

 わざと挑発して気を逸らす、

 触れられても感覚が無いのだろう、生身の足ではない事が功を奏し尾が巻き付いている事に奴は気付いていない。


 腕が振り下ろされると同時に尾を使い自分の体を引き寄せ攻撃を躱す!


 振り下ろされた腕は床を思い切り叩きつけられ、なんと2階の床を叩き割った。




 崩落する床に飲まれて階下に落ちるその瞬間、なんとかクリヴァールを掴みタマゴの上になるように落ちる。

 まだガラガラと床の残骸が落ちている途中だが、足元の瓦礫からは這い出ようともがく巨大な2本の腕がすぐさま飛び出る。

 だがこちらも2階から1階に落ちた程度でアレが止まるとは思っていない。


 最後のチャンスだ。


 奴が瓦礫の中から姿を現したその瞬間、まだ腕が両方使えた時、仰向けのタマゴに突き立てた時に出来たその『亀裂』にクリヴァールを片手で突き立て、残った全魔力を込めて操縦席に届けと炎を送り込む!


「灼けェッ!!クリヴアァァァルッ!!!」


 クリヴァールの穂先から凄まじい炎が発生しドラゴンブレスの如くタマゴの表面を炙る。

 放出された炎は自分とは逆、目の前に放たれているはずなのに余りの高温に槍を持つ手と顔を熱波がチリチリと焼いた。




 約30秒にも及ぶ獄炎の放射が収まった。

 足がガクガクと震えて膝を付き、クリヴァールを杖になんとか体を支える。


 崩落した瓦礫は赤熱し野盗共の寝床も略奪した物も全てが塵と化していた。






「勝ったと思ったか?」



 タマゴから声がする、もはや顔を上げる事すら億劫だ。


「ぜぇ、ぜぇ…。まだ、死んでねぇのかよ…」


「いいや?効いたぜ?この機械の中に小さな亀裂から炎が噴き出してな、地獄の(かまど)と化した。慌てて足の裏で火を抑えたが…、両足はもう炭だ。ハハハ。胸から下、ほぼ全身に火傷(ヤケド)を負った。座席が溶けて背中に張り付いてやがる、ハッハッハッ…。でもな?火傷ってのは即死する訳じゃねぇんだよ、そんな槍使ってんだ?知ってんだろ…?どうせ死ぬなら…、どうせ死ぬなら道連れだァァァ!!」


 左腕の筒をこちらへ向けるタマゴに対して、オレは避ける体力すら残ってはいない。


 だが、2階の天井を吹き飛ばしたあの光が放たれた瞬間、オレに向けられた奴の腕が斬り飛ばされた。放たれた光は1階の床を削りながら地面に落ちる。



 一体、何が…?



 尻餅をついて見上げると女性の後ろ姿が見える。

 その女性は、金髪で、片角で、手にはあの光の刃が出る筒を持ち、

 そして、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()左側の首元から右の腋に掛けて、まるで半分だけチューブトップになったかのような服を着ていた。




「ゼノ様、遅れて申し訳ありません!後はお任せ下さい!」

「ル、キア…?」

「はい!ゼノ様の従者、ルキアですっ!」





 間違いなく死んでいたはずの、あのルキアが立っていた…!





 ルキアはその手に光の刃を持ち、腕を断たれて呆然とするタマゴを縦に切り裂いた。

 オレが全力で突き立てても亀裂を入れるのが精いっぱいだったその外殻がいとも容易く切り裂かれた。

 直後にタマゴの前面が透明になり、足が炭化した野盗のボスが真っ二つになって転がり出て来る。


「勝ちましたね、ゼノ様っ!」


 そう言ってルキアが抱きついて来た。


「ルキア…本当に?どうやって助かったんだ?いや、間違いなく斬られて死んでいた…はずだ、そうだろ!?」

「はい、間違いなく斬られて死んでいました。ですがこの首飾りのおかげで復活いたしました」

「首飾り…?」


 ルキアは初めて出会った時から肌身離さず首飾りを付けている。

 動いても邪魔にならない、遊びの無いまるで首輪の様な金のチェーンに金色の小さな(プレート)の首飾り、そしてその板には読めない文字書かれていていくつかの宝石が填まっている。


「アーティ…ファクト…なのか?」


「はい。父ミカレが魔王ジズに妻を人質にされた際、自身の妻に送った至宝。アーティファクト『カリタスモニーレ』。その効果は『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』という効果です」


「なん、と…、それはまた…、とんでもない効果だな…」


「はい、父は魔王ジズが約束を守るとは思っていなかったのでしょう、妻の身を案じてこの首飾りを送りました。時は流れて人であった母は寿命を迎え、娘である私の手に渡ったのです。助太刀に入るのが遅れて申し訳ありませんでした。意識はすぐに戻ったのですが動かせるのは首と目と口だけ、右腕は肘から先だけ、鎖骨から下は仰向けなのやら俯せなのやら、とにかく私自身初めて()()()ので再生に手間取ってしまいました」




 オレは恐る恐るルキアの斬られた鎖骨を指でなぞる。

 切り落とされたはずの腕を触る。

 傷一つ残っていない。




 オレはルキアをもう一度ぎゅっと抱きしめた。




「ゼノ様…?」

「死なせてしまったかと、思った…」


 ルキアがオレを優しく抱き返し、頭を撫でる。


「ずっとお傍にいますよ」


「あぁ」


「嫌になったら言ってくださいね?」


「あぁ…」





 そうやってしばらく抱き合っていた。





16話の後書きに書いていた『持たせる予定のアーティファクトがチート』とはこれの事です。


マジで首を斬り飛ばされない限り、火炙りなろうと、潰されようと、水に沈められようと、内臓を生きたまま引きずり出されようと、頭がカチ割られて脳が零れようと、手足がもがれようと、首飾りさえ首にかかっていれば復活します。

逆に言うと今回はかなり危なかったんですけどね、魔導力変換剣で落とされていたのが鎖骨から反対の腕では無く首だったら死んでました。

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