第32話
翌朝朝食を食べながら拗ねているルキアのご機嫌を取り、裏手の井戸で水浴びをしていると小さな少女に話しかけられた。
「お兄ちゃんがあるますさんですか?」
「んん?ああそうだ、オレがゼノ・アルマスだ、何か用か?」
「お兄ちゃんちょーき?しゅくはく客?さんなんでしょ」
「ちょーき…あぁ、長期宿泊か、そうだな。少なくともあと20日ほどは泊まる事になってる」
「私ここの宿屋の子供で洗濯のお手伝いしてるの」
「ふーん?」
「何か洗濯物があったらいってね、カゴ一杯で銀貨1枚だよ」
高いのか安いのかよくわからんが正直助かる。
「そこにカゴが積んであるでしょ?それに洗濯物を入れて部屋に置いててくれればシーツ交換の時に集めて洗濯して、夕方にカゴに入れて返すよ」
「おー、わかった」
部屋に戻って先ほどの少女に洗濯の頼み方を教わった事をルキアに伝えると『知っていたけど自分で洗っていた』という返事が返って来たので『別に金に困って無いから利用しようぜ』と伝えた。
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ギルドへ向かい討伐依頼を探す。
もう護衛は当分やめだ、この王都でのオレ達の評価を上げないとそもそもまともに受けられない。
国の調査隊が遺跡の発掘調査をしたいが野盗が巣くっていてどうにかして欲しいという依頼を見つけた。いつも通り報酬は少ないが一応は国の手伝いだ、評価稼ぎには調度良いだろう。
「この依頼は遺跡に住み着いた野盗の討伐依頼となります、近くに調査隊が野営地を築いているはずなのでそこで詳細は確認してください」
淡々と事務対応を進めるクールな受付の顔をジっと見ていると『何か?』と睨み返された。
一旦、宿に戻り5日ほど空ける事を女将に伝えて旅の準備を終わらせて昼前に王都を出た、前回は10日ほど空けて心配させてしまったからな。
着替えや携帯食料、水などを積載し荷物の隙間に体を入れて眠る。
夜の間は夜が明けるまでオレが火の番をしながら警戒し、日中はルキアが走鳥を走らせる間に眠るというのが恒例化しつつあった。
一番怖いのは日中襲われて走鳥が走れなくなる事だ。
走鳥がやられると荷車を人力で牽く事になりかねない。
東へ向けて進み続けると草木の少なく水の確保に大変そうな荒涼とした大地にテントがいくつか張られて野営地が見えた。
見張りがオレ達の姿を確認したのだろう、何人か護衛らしきものが集まり始める。
「止まれ!ここはクレア王国の正式な遺跡調査隊野営地だ!それ以上こちらへ近づくな魔族!!」
えらく歓迎されているなと思ったら警戒されていただけだった。
王都内を角を隠さず生活しているせいで忘れかけていたが確かに野営地にフラっと魔族が現れたら警戒するか。
「安心しろ!ギルドの依頼を受けて来た。ゼノとルキア、冒険者だ、責任者はいるか?」
ギルドタグを掲げて見せる、少しざわついた後一人の男が野営地からこちらへ歩いて来た。
「魔族が冒険者だと…?子供と女じゃないか」
「おぅ、依頼書の写しもあるぞ」
「なぜ魔族が冒険者などやっている?」
「師匠の修行の一環でな」
背中を向けてマグナスに貰った白い外套のオーロンの紋章を見せる。
「なっ!?それは剣聖様の…うぅむ、わかった、ついて来い」
どうやら冒険者タグよりも、依頼書の写しよりも、剣聖に貰った外套の紋章の方が効果があったらしい。
野営地の中央へ行き説明を受ける。
野盗は古代に作られた塔?の崩れた中と周辺に住み着いて周囲の商人や旅人を襲っているらしい。
数は8人以上。
塔は3階ほど残っており、周りは崩れた建材の残骸が散らばっているような地形だと言う。
「オレとルキアが旅人のフリをして近くを通れば襲ってくると思うか」
調査隊の護衛班長に聞く。
「最近やつらは獲物を狩れていない、オレ達が見かける旅人に注意して回ってるからな。あそこに野盗が住み着いている事はかなり周知され始めている。子供と女相手なら間違いなく食いつくだろうな」
「じゃあそれを返り討ちにする作戦で行こうと思う、かなり数削れるだろ、角だけ隠さないとな」
「我々は調査隊を守るのが仕事で手伝えないが大丈夫か?」
「楽勝だよ。な、ルキア」
「はいっ!」
「ルキアは…ちゃんと人を殺せるか?」
「先に相手から攻撃されれば身を守るために、という理由で戦えますよ」
「じゃあ問題ないな」
「明日の朝、作戦を実行に移す。悪いが今晩はこの野営地に泊めてくれ、それからこいつは土産だ」
そう言って王都で買っておいた酒樽を護衛班長に渡す。
「おぉ、有り難い!国の任務だから支給品の中に嗜好品はあまり無くてな、助かる」
その晩は調査隊と焚き火を囲んで夜を過ごした。




