第31話
目の前でババアことギルドマスター、リウィア・ベルマーレが深いため息をついた。
「面倒はごめんだと言ったはずだが?」
「オレが進んで殺したと思ってんのかババア、6人の内2人はこの間ギルドで揉めた奴だぞ」
「喧嘩すんなって言ってんじゃないよ、殺すなって言ってんだ。アンタならそれが出来る、出来たはずだ」
そう言ってこちらをジっと見てくる。
「まぁ出来ない事はない」
「じゃあ殺しなさんな」
「善処はするよ」
「そうしな、気に障った相手を簡単に殺してちゃ、いくらアンタに正当性があろうといつまで経ってもマグナス様の跡は継げないよ」
「別にジジイの跡を継ぐ気はないんだがな」
「ふん、まぁ気をつけるこったね」
そういうと手をヒラヒラと振って『出ていけ』と言う。
相変わらず無愛想なババアだ。
「こちらが今回の依頼報酬です」
そう言ってカウンター越しに渡された報酬は雀の涙だ。
まぁ森で襲われた件を除けば遠足していたようなものだし、そもそもオレ達を釣る為にかなり下げられた報酬額だったので仕方ない。
なんだかクール受付嬢の態度が更に固くなった気がする。
ヴァルハラガーデンへ戻り食事を取っているとルキアが
「ゼノ様、前回の蟲の件と今回の護衛の件の報告をシェクルト教団に送りたいので部屋で手紙を書いて来てもよろしいでしょうか?」
と言った。
「いいよ、オレはもう少し飲み食いしてから部屋に戻るわ」
そう返して、追加でエールと肉詰めを頼む。
そろそろ部屋へ戻ろうかとなった頃、疲れた顔のクール受付嬢がやって来て一人で飲んでいるオレのテーブルに座り『お嬢さん、私にもエールを』と給仕に頼みこちらをジっと見てくる。
「なんだ?」
「なんだ?ではありません、何か言う事があるでしょう?」
「いや?」
「私がこんな時間まで仕事をしていたのは誰のせいだと思ってるんですかっ!」
怒鳴られた。
そして受付嬢はテーブルに届いたエールを一気に飲み干して『おかわりっ!』と次を注文する。
「なんでオレのせいでアンタの仕事が増えたんだ?」
「貴方が殺した6人のギルドメンバーリストの抹消手続きと、その6人の身内への死亡通達書…」
「おぉ…すまなかったな。奢るよ、アンタ名前は?」
「カリナよ、カリナ・フォスク…」
「ゼノだ、ゼノ・アルマス。よろしくな」
「知ってるわよ…」
「そりゃそうか、ギルドの受付だもんな、ははは」
「ふんっ…」
「まぁ好きに頼んでくれよ、金ならあるんだ」
「…あんな少ない稼ぎで金持ってんの貴方?あっ!すみません!このおつまみの盛り合わせください!」
おぅ、ギルドで合う時とずいぶん違うな、こっちの方がやりやすい。
酒の力か?
給仕に酒のつまみを頼んでいる。
「逆だよ、金持ってるからあんな報酬額の仕事でも気にせず受けてんの」
「ふーん」
ジト目で見てくる。
「貴方あのいつも一緒にいる半魔の女とはどういう関係なの?」
「どうって…従者…かな」
「ふーん」
なんだというんだ。
「貴方って歳いくつなの?」
「わからんな、10歳かそのくらいか」
「400年前の六魔将が蘇ったとかシェクルトが言いふらしてるみたいだけどアレ貴方の事よね」
「多分な」
「ふーん、あっ!おかわりくださーい!」
3杯目だ。
「前世の記憶とかあるの?」
「あるぞ」
「なるほどね~つまり中身は年上なのねー…」
「うん?まぁそうだな、そうなる」
「ふーん」
別に隠しちゃいない、そのまま答える。
ずいぶん口調が砕けて来た気がする。
こっちからも話題を振るか。
「なぁ、やっぱ魔族が王都で冒険者やるってのは大変そうか?」
「貴方今日4回も断られてたもんね~」
「あ、やっぱ全部断られてたのかアレ」
「そりゃそうよー護衛が信用ならない魔族なんてみんな怖いわよー…討伐依頼にしときなさいよ」
「そうだな、考えとくよ」
「そうしなさい、まぁでも、がんばって活動続けてれば評価も変わってくるかもね」
「そうなのか?」
「一応は剣聖の弟子なんでしょ~?みんなそれは知ってるのよ、知っててそれでもあえて魔族に護衛してもらうのはちょっとなぁって、そんな感じね、今は」
「うーん、やっぱり6人殺したのは不味かったかもしれんな」
「次冒険者殺したら許さないわよ、私の仕事を増やさないで!…あっおかわりくださーい!」
ジョッキ4杯目だ。
「…少なくとも私が生きてる間は歳を取らない…、腕も立つ…、剣聖の弟子…将来有望、金持ち…、顔も良い…、もう魔族でもいいかしら…」
なにやらブツブツ小声で言っている。
酔いつぶれた彼女を部屋に運ぶとルキアに『ナンパして来たのですか?ルキアは用済みですか!?』と悲しませてしまった。
翌朝早くに目を覚ました彼女はベッドの上で『あっちゃぁ…』と言いながら頭を抱えてダンゴムシになった後、顔を上げ『忘れてください』と言い残しキリっとした顔でギルドへと出勤して行った。
ギルドのお姉さんと仲良く?なれた!やったぜ!
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