第3話
さて…まずは漁るか。
ボロのままで裸足という訳に行かない。
汚らしい奴隷商の服に興味はないが、受け取っていた金の入った袋は頂こう。
中身はなんと金貨200枚ほど入っていた。
金貨1枚でどれほどの生活費になるのかさっぱりわからんがこれが大金であろう事は想像がついた。
次は魔法使いの男のフード付きの黒いローブも頂く、これなら角も隠せるだろう。
身長が足りないせいで思いっきり地面に引きずる…。
それどころか歩くだけで裾を踏むなこれは、剣で裂いて長さを調節した。
靴は、魔法使いの草履を履く事にした。
というより2人の護衛も奴隷商も靴のサイズが合わないので消去法だ。
奴隷商護衛の方を漁ってみるが銀貨と銅貨が数枚入った財布しかめぼしい物は見つからなかった。
剣?剣は刃こぼれしている上に片手で正眼に構えて見るとなんと曲がっていた…、ゴミである。
魔法使いの持ち物を漁っていると指輪が目についた。
鑑定の魔法は持ち合わせていないが魔法使いが指に嵌めていたのである、害はないであろう。
自分の指には大きすぎたので魔法使い護衛がしていた冒険者のタグから鎖を拝借し指輪を2つとも通して首からかけた。
おおー!!おぉ…?
魔力が僅かに増えた気がする、僅かに。
仕方ない、人間にとっては10が20になる宝具でも元が1000あれば+10された所で1010
誤差である。
もう片方の指輪の効果がわからんな、解毒や解呪など耐性系の魔法具は鑑定にかけなければ判別がつかん。
これも一応貰って行く。
魔法使いの護衛のロングソードを背負い、奴隷商のショートソードを腰に佩いた。
ここでようやく気付いた。
食料も水も無い。
首輪を外して魔力が解放された時、旅の荷物を乗せていたであろう馬車は奴隷商の物も魔法使いの物も
逃げだしていた。
人より圧倒的に強いとはいえ魔族も腹は減る。
人間のように1週間で死ぬという事は無いが空腹は感じる。
そもそもこの身体は奴隷商に捕らえられてから満足に食事を取っていないのではなかろうか。
水は歩けばそのうち川に着くだろう、食事は・・・動物でも狩って食べるか。
そういえばこの時分の自分はどれほど魔法が使えただろうか?そう考えながら掌を上に向け火を出してみる。
ボッと言う音と共に握りこぶしくらいの炎が出た。
ちなみにオレは魔力総量は多いが魔法はヘタクソである。
安心した、これなら焼いて食べられるだろう。
魔物は人間や動物に生のままかぶりつき、腹に腕を突っ込んで内臓を引きずり出し、骨までバリバリ噛み砕く種が多いが魔族はそんなに野蛮では無い。
食事は人とそんなに変わらん。
この見た目では例えフードを被っていても人間の街に入る事は難しそうだな。
小さな村はもっと無理だ。他所者は素性を探られる、顔も見せないフードの子供が村の一員になどなれはしない。
さーてこれからどうしようかね。