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魔族の将、二度目の人生を自由に生きます  作者: 灰銀朔太郎
第二章『シェクルト教団』

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第24話



 件の村に着いた、襲われたと聞いたが思っていたより荒れていないようだ。

村の入り口では見張りだろう、人狼が2匹立っているのがここからでも見える。


「どういう手筈でやるんだ?」

「私は基本的に付き添いだぞ?お前とルキア嬢でやるんだ」


マグナスはどうやら見てるだけらしい。


「りょーかい、行こうかルキア」


オレは左手に長剣、右手にクリヴァールを持つ。

ルキアはオレの使わなくなった片手剣を持って後に続いた。


「じゃあルキア、オレは適当に戦うからそっちに向かった奴は任せるぞ」

「はい!」


 別に走って駆け寄るような事はしない、普通に村に訪れたように近づく。

 人狼が何か片言で話しかけて来るが無視。


 片方の人狼がその剛腕を振り上げ攻撃して来ようとしたのを左肩に担いでいた長剣で鼻先から股まで一刀両断にする。

 それ見て慌てたもう1匹が慌てて攻撃をしようとするがクリヴァールを顎の下から突き入れて脳を焼いた。


「ゼノ様流石です!人狼如きでは相手になりませんね!」

「なぁ、ルキア。これオレが何かする必要あんのかね?お前が戦ってるのをサポートした方が良い気がして来たんだが」

「そうですね…。わかりました私が戦ってみます」

「おぅ、危なそうなら助ける」


 ルキアを先頭に集落の中心へ行くと大きな焚き火の跡があった。

 生焼けになった手足が突き出していたり、死体が真っ黒になって積み重なっていたり、食べられた後だろうか?肉の付いてない骨などが焚き火の周りに散乱している。

 骨の大きさから喰われたのは子供、燃やされたのは男と老人だろうか?

 女性の死体は犯されたのだろう、燃やされずに裸のまま転がされており腐乱が始まっていた。


「酷い…」

「あー、そうだな。こういうのも魔族の仕業にされるんだろう?」

「…はい、残念ながらユークリッド大陸に住むほとんどの人間には魔族も魔物もたいして変わりませんので…」


 これはオレ達魔族にも責任がある事だった。

 人と争っていた時代人間を共通の敵として魔族が魔物を従え人間の領土を責めた代償である。


 ルキアと話しているとオレ達の声を聞き取ったのだろう、民家からわらわらと人狼が出てくる。


「ルキア、歓迎されてるぞ。がんばれよ」

「はい」


 ルキアがそう言うと右手に持った片手剣に電気がバチバチッとスパークした。

 最も近い人狼が四足で距離を詰めてくる、狙いはルキアのようなので無視、

 近づいて来た人狼へとルキアは左手を向けて「ライトニングボルト!」と雷魔法を発動した

 左手から凄まじい速さで電撃が放たれ人狼に直撃し人狼は手足を伸ばしてビクビクと痙攣しながら死んだ。

 雷魔法の強さはその速さにある。

 さらにルキアは周りを取り囲みつつある人狼を目で確認し、左手を空に掲げて魔法を発動する


「サンダーストライク!!」


昼間、晴天だというのにどこからともなく雷の玉が空中に現れたと思った瞬間、周りにいた人狼5匹全員に雷が正確に落ちた。


「魔法使えば楽勝だな」

「はい、そうですね。魔法禁止だとちょっと怖いですが…」


 そんな話をしていると集落の奥、一番大きな家から他の人狼より二回りは大きな人狼が現れた。

 手には全く手入れをされていないボロボロの長剣を持っており、その人狼は人間を()()()()

 若い娘が両手を上に縛られそこへ人狼が首を通している、両足は人狼の太ももで縛って固定されていた。

人間のエプロン、いや鎧か?


「悪趣味だな、勝てそうか?」


 ルキアへと聞く、あの状態では人質が居る為か雷魔法は使えない。

 ただでさえ近接が苦手なルキアはあの大きな人狼に勝てないだろう。


「ちょっと、厳しいですね。せめて人質がいなければ…」

「じゃあオレがやるか」


「ヨクモオレノナカマヲ…!ユルサンゾニンゲン!!」

「ばーか、人間じゃねぇよ」


 そう言いながら自身の角を指差して尻尾を振ってやる。


「マ、魔族…!魔族ガ何故…我々ヲ…、人間ハ我ラノ敵デアロウ!!」

「人間が魔族の敵かどうかとか関係ねぇし知らねぇよ、『()()』だぁ?いつからテメェら魔族の仲間になったんだよ」

「…!?」

「お前らはオレら魔族に力で負けて服従してただけだろうが」


 そう言い放って、空へと跳躍する。

 オレの動きに釣られて上を見上げる人狼の口目掛けて槍を投擲した。



 ───────────────────────────────────



「大丈夫ですか?お嬢さん」


 ルキアが鎧にされていた娘を解放し体を隠せるよう布を渡している。


「終わったようだな」


 マグナスが村の広場へやって来た。

 人狼の群れのボスは両膝を地面についたまま仰け反り、口から入った槍が斜めに抜けて背中から飛び出して死んでいた。


「どうだった?」

「どうも糞もねぇ、雑魚すぎて話にならねぇ」

「まぁ、そうだろうな」

「でもルキア一人だったら苦戦してただろうな、多分人質を諦めるか大怪我してたはずだ」

「殺されていた、とは言わんのだな」

「今のルキアはこんな所で死ぬくらいなら人質諦めるんじゃねぇかなぁ」

「ふむ」


「あぁ、それからな。せっかく買ってもらった長剣がダメになっちまった」


 そう言ってマグナスに人狼を真っ二つにした長剣を見せる。

 一撃しか振っていないのに刃がすでにダメになっていた。


「まぁ、人間用の長剣だからな。魔族の力で魔物を真っ二つにするようには出来てはおらんさ」

「大剣の代わりにと思ったが、こりゃ当分クリヴァールと鉈だけになりそうだ」


 こうして人狼に襲われた村の掃討作戦は終わった。

 後は生き残った娘を隣の村に預けて終了だ。



 ───────────────────────────────────



 人狼のボスの生首を証拠に隣の村に戻り、生き残った娘を村長に預けた際、何故か助け出された娘は顔見知りであろう男を見つけたらしく半狂乱になって暴れ出したがオレらには関係の無い事だ。

 空き家へ着くとマグナスとルキアは筆を執っていた。

 マグナスはオレの行動とルキアが従者になった事、シェクルト教の事を国へ、そして人狼事件の顛末をギルドへ。

 ルキアはシェクルト教へオレの活躍を。


「人助けをしてみた気分はどうだゼノ?」

「べっつにー」


 人狼の生首を手に村長の家に報告へ向かう際、マグナスは人々に『これで安心して暮らせます』だの『ありがとうございました』だの散々礼を言われていたがオレやルキアに感謝を伝えた者はいなかった。


「なんだ?俺だけ褒められていたから拗ねているのか?」

「そんなんじゃねーよ、良い気分も悪い気分でもない、普通だ普通」

「フフフ、もっと大きな手柄を立てねばな。俺も今回の事で気付いた、どうやら俺が保護者としてついて回るとお前たちの功績を奪ってしまうようだ」

「別に手柄とかどうでもいいけどな?」

「もうしばらくはジジイとの旅を我慢してくれ。今回の人質を助けた一部始終を見ていてお前は()()()だと判断した。予定よりかなり早いが王都へ向かい冒険者登録させる」

「お?もう自由か?」

「いいや。多分、月に1度くらいか、定期的に会ってお前の報告を聞いたりする事になるだろうな」

「うへぇ」

「それからお前が人に悪事を働いたと耳に入った場合はすぐにまた俺の監視下へ逆戻りになるだろう」


 結局、()()()()()()事に変わりはないんだな。

 まぁ当然か。


「ていうか修業はいいのかよ」

「もう、いい。お前が俺に勝てないのはお前の闘気が俺に及んでいないからだ。それは成長と共に器が大きくなればいつか必ず追いつくと確信した、そうだろう?」

「まぁ、な」

「アウロラスの顎を吹き飛ばした一撃を見ていてわかった。クリヴァールを手にしたお前がアレを使えばお前の攻撃は俺に通るだろう、だがそれはもはや修行ではない。俺は断山剣を抜く事になるしそれは殺し合いだ」


 まぁこのジジイと本気でヤり合えと言われればそうなる。


「一つだけ質問したい事がお前(ゼノ)にある」

「なんだー?」

「前世のお前と今の俺ならどっちが強い?」

「互角かな」

「ほぅ?」

「なんだよ?自惚れじゃないぞ?」

「フフ、分かっているさ。俺は若い頃に魔王と戦っているのだからな」


 そういって無い右腕を少し掲げる。


「勇者クレアと共闘したとはいえ『魔王』を倒したのだ、今の俺にS級と共闘して魔王を倒せるかと聞かれれば死闘は避けられんし、生きて勝てる保証もない」

「殊勝だな?」

「だから俺はお前を後継に選んだのだ、お前なら俺を超えられる」

「そんなモン背負わすな」


 そう言ってオレは壁に寝返りを打った。



「勝手に期待しているだけだ、フフフ」

「(それが背負わしてるってんだよ…)」



 マグナスへ向けて呟き、眠りについた。



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