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ショタ転生~魔族の将、子供の姿で自由に生きます~  作者: 灰銀朔太郎
第一章『そのままとは一体…。』
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第2話




揺れる馬車の振動で頭を打ち目覚めた。







うわ、やられたわ……。






枷に繋がれた手を見る、明らかにガキの掌だ、貫頭衣のようなボロ布の服から伸びる手足は短く細い。


腰の裏に吊るしたナタを逆袈裟に抜き打ちで放つ前世の得意技を使える第三の手だった尾も細く短い。


枷に嵌ったままの手で耳の上を確認する、頭突きの要領で相手の胸板を鎧ごと何度も貫いてきた自慢の前へせり出したかっこいい角も明らかに短い…。







これがそのままだと!!?







魔界最強の剣士がパッと元の世界に現れるイメージでいた、まいったな。



周りの状況を見渡してみる。

やけに白い肌、角や尾が生えた子供が数人、オレと同じ様に繋がれており皆一様に表情が暗い

どういう事だ?

魔王が死んだ魔王軍は人間と戦う為にこんな子供の魔族まで徴集し始めたというのか?



ガタゴトと揺れる馬車の荷台であろう幌の中でそんな事を考えていると急に馬が止まった

どこかへ着いたようだ。






「おい!ガキども降りろ!!」

そういって馬車の中へ入って来たのはなんと人間だった、角も無い、肌も普通、瞳も普通のただの人間だった。

乱暴に鎖を引き魔族の子供たちを外へ連れ出していく。


なにが起きているのか理解が追いつかない。


徴兵ではなかった。

奴隷である。

人間が魔族を、である。

子供とは言え人間よりも遥かに力も魔力も多い魔族が、人間の奴隷である。


その事実に衝撃を受け思考停止していると遂に自分の鎖も引かれ馬車から降りる。





そこは森の中だった。





森の中、少し開けた空間に篝火が焚かれいる。


正体を隠す為だろう、フードを目深に被ったおそらく人間であろう者が奴隷商人と護衛の男の他に2人いた。

奴隷商人の男に金が詰まっているであろう袋を渡していく。

中を開け、少し確認した後に奴隷商人の男は受け取った袋の数と同数の奴隷とその枷の鍵をフードに引き渡した。

奴隷を受け取ったフードは自分の馬車に奴隷を押し込み去っていった。

助ける?無い無い、魔族だろう?脆弱な人間相手だ、己で自由を勝ち取ってみせろ




「最後はお前だ、来い!」




首の鎖をグイと引かれよろめく、こいつは殺す。



「見てくださいこの魔族!白い髪!前へ伸びつつある角!赤い眼!竜の様な尻尾!まるで()()()()()()の様でしょう!?」

「おぉ!確かに!伝説に出てくるゼノそっくりですな!これはよい材料になりそうだ!!」



材料だと?このオレを材料だと抜かしたかこの人間。

確かに魔族は角にも心臓にも瞳にも魔力は宿る。

魔族を材料に薬を作れば、例え子供の魔族でもそりゃあいい薬が出来るだろう。




気に入らねぇ。




状況把握の為に黙って成り行きを見守っていたが我慢の限界だった。

というより相手に侮られた怒りを飲み込む事など、前世でも魔王軍に入るまでしか経験した事はなかった。


目の前のフード男は魔法使いだな?魔族に比べればまるで子供のようだが魔力を感じる。

ただの人間が魔力操作で魔力を抑えるという事は経験上ほぼ無く垂れ流しが基本だ。

加えて魔族を材料になどと戯けた事を言っている、そんな研究をするという事は魔法使いと見てまず間違いないだろう。



金を受け取った奴隷商が鍵を魔法使いに渡す瞬間、尾で奴隷商の腰にあった剣の柄を掴み、引き抜いた勢いそのままに手を斬り飛ばす。

奴隷商と魔法使いが状況を理解するより早く、剣をフードの中に突き立てた、即死だ。

剣を抜いた反動を活かして奴隷商を蹴る。


ようやく事態を飲み込めた奴隷商の護衛が足をもつれさせながらこちらへ向かって来ようとしたがこっちは無視。


素早く魔法使いの護衛に駆け寄り、剣を抜こうとしていた腕を手枷の付いたままの手で抑える。

尾で掴んだ剣をサソリのように相手の首元、鎖骨の辺りへと突き立て、振り向き様に護衛の剣を拝借してそのまま奴隷商の護衛に向き直った。


なんと奴隷商の護衛は魔法使いとその護衛が瞬殺されたと見るや否や森の中へ慌てて逃げて行くところだった、マジかよ。


「お、おい!どこへ行く!!助けろ!!!」


奴隷商が護衛へ怒鳴るが安心しろ、逃がさん。


魔法使いの護衛の剣を尻尾で掴み直して投擲。

逃げる護衛の背中に刺さり前のめりに倒れ動かなくなった。

フハハ、どうだ俺様の第三の腕は。


魔法使いの護衛に突き立てた剣を引き抜いて地面にへたり込んだ奴隷商を見下ろす。

しまった、イラっとして行動に移ったが何を聞くべきか考えていなかったな。


「お、おお前!こ、こ、こここんな事をして!こんな事をしてどうなるか!!」

「うるせぇ」


剣の切っ先で奴隷商の片目を突いてやる。


「うぎゃあぁあぁああぁぁぁ!!」

「楽に死ねるか、苦しんで死ねるかはお前次第だ」


そう言いながら苦しむ奴隷商を視界に収めつつ、落ちた奴隷商の手から鍵を広い手枷を外す。

そして手探りで鍵穴を見つけて首輪を外した。





外した瞬間魔力が吹きあがった。





あー、なんか呪いが付与されてたなコレ。

呪いで力と魔力を制限してたのか。


なんとなくおかしいと思ってはいたんだよなぁ、前世のオレは物心ついた時から剣を振るい大人の()()相手に引けを取らなかった。

子供の姿とはいえ、人間の奴隷商に首輪を引かれた程度でよろめくなどありえなかった。


ていうかガキとはいえこのスペックの魔族だ、オレの意識が覚醒する前のこの身体の持ち主はなぜ人間なんぞに捕らえられたのやら、たとえ寝ぼけてても負けないだろう。


吹きあがった魔力に馬たちが驚いて嘶き無人の馬車を牽いて森の暗闇へ消えて行ってしまった

乗物が…、まぁいいか。



「おい、逃げんな」



這いずって距離を取ろうとしていた奴隷商のふくらはぎに剣を突き立てる。


「ヒギィ!!たっ、助けてくれ!」

「諦めろ、殺す。苦しんで殺されるかどうかはお前にかかっている。いくつか質問をする、ちゃんと答えられたら首を刎ねてやる。答えないなら手首足首を斬り、両目を潰して顎を砕き、生きたまま森に放置する」

「そ、そんな…」


絶望した表情の奴隷商に構う事なく質問を投げる。


「諦めろ、まずここはどこだ?」

「…こ、ここはクレア王国だ…」

「クレア王国だと?」


勇者と同じ名だ。

将軍にはあるまじき事だが人間の地理など微塵も興味はなかった、だがそんな国はなかったはずである。


「そうだ!ここはクレア王国近郊の森の中だっ!」

「何をしていた?」

「魔族の子供を売っていた…」

「魔族は強いぞ?人間如きに捕らえられるはずないだろう?」

「確かに魔族は強い、だが魔族の子供に首輪を嵌めてしまえばこちらの物だ、なぜお前は動ける…」

「人間は警戒されるだろう?どうやって首輪を嵌めた?」

「魔王が討たれて以降魔族は散り散り、隠れて過ごしている。行商人のフリをして近づくんだ、へへ。『いやあたまげた、こんなところに魔族が!あぁ!!逃げないでください!!あっしは旅の行商人でございます!何か要り様ではございませんかな?』って。たまにサービスでお菓子をやったりしてな」


なるほど、あの首輪を付けられると例え魔族でも子供では人間に勝てないのか。

他に何か聞きたい事はあるだろうか?自問自答してみる。


んんー、他に聞きたい事、特に無いな…。









「そうかわかった、死ね」








約束通り一撃で首を刎ねてやった。



女神「転生してもそのままだと言ったな」




  「あれは嘘だ」

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