たまご令嬢にたまご令状がでています
『郵便配達員は全部知っている』
「手紙だよ」
またこの方ですか。
メイドにちょっかいを出す困った方。
昨日は国王様からの手紙と偽りからかっていた。
一昨日は先日亡くなったお爺様からの手紙と大ぼらを吹いていた。
一週間前は離縁されたお兄様からの手紙だと。
一か月前など外国を旅してるお姉様からだと言うんですもの。
メイドはすぐに信じる性質で中に入れてしまう。
私が困り顔で本当ですかと尋ねると嘘に決まってるだろうと笑い飛ばす。
ただでは帰れない。切手を買ってくれと迫る。
毎日来られても困るので叱り飛ばします。
いいじゃないか。俺と君との仲じゃないかと迫る男。
「いい加減にしないか! 」
見かねたエリューが力任せに絞めあげる。
彼はクリケットの選手で私の昔からのお友達。
両親は外国に。私がその間留守を任されている。
大きなお屋敷に私一人。もう誰も守ってくれない。
エリューだって試合がある。
それが分かっているからかしつこくやって来る男。
何を考えてるのかしら?
もちろん貴重な手紙も届けてくれるので一概には悪い方とも言えない。
翌日
「たまご姫。今日こそは返事を伺いたい」
銀色の髪に丸い見た目からたまご姫の愛称が。
エリューには悪いけどまだそんな気持ちになれない。
だからごまかす。
「クリケットのスター選手になったら考えてあげる」
我がままな娘だと思うでしょう? でも不安なの。
エリューは決して賢くない。クリケットの才能も開花してない。
まだたまご。
私がたまご姫ならエリューはむしたまご。
「どうして応えてくれないんだ! 」
涙を流し大声で喚く。
「私には勿体ない。どうか違う方をお探しください」
愛してないと言えば嘘になる。でも私にも事情がある。
酒乱の癖がある。
そんな令嬢がどこにいるのです? ああ恥ずかしい。
「なぜですたまご姫? 私には分かりません」
「ごめんなさい。許して」
酒乱で前後不覚になる令嬢がどこにいるのです?
お酒を控えるのも無理。夜の楽しみがなくなるのは嫌。
お酒は令嬢の嗜みですよ。
「何でも言ってくれ。受け入れるから」
「では正直に。お酒に弱いんです」
無言で頷くエリュー。
「先日もお酒でトラブル。何とかお許し頂いたんですよ」
「手紙だよ」
男が乱入。
「またあなた? 今度は誰からなの? 今取り込み中です」
「裁判所からさ」
「いい加減にしてください。今度は裁判所からだなんてふざけてる」
「いや出廷命令が出てるんだよ。暴れたろ? 」
まあ恥ずかしい。ちょっとだけなのに。
完