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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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66.霞む日々

 


 光くんがいなくなってから1週間経った。厳密には、お別れを告げることはなく、いつの間にか消えた彼がいなくなった事に気がついてからの日数だ。

 誰も何も言わなかったーー。私を思ってなんだろうと思うと、誰を責めるつもりにもなれなかった。


「門番さーん!おーはーよ!」


「おはよう。今日も騒がしいな」


「えー?柚子いつも通りだよ~」


 彼がいない以外いつも通りの日常が戻ったお屋敷で、私は今日も彼がどこかにいるんじゃないかと無意識に探している。どうして、あんな事をしたのか、私が見ていた彼は偽りの姿だったのか全てが謎に包まれたままだ。


「今日の郵便物だ。それと……騎士団からの書類と王宮からの書類も預かっている、一条公爵に渡してくれ」


「はーい」


 門番さんから預かった紙の束を手に、私は大雅くんの部屋へ向かった。


「うおぉっっと!」


 階段の踊り場で、光くんと夜中に探偵ごっこをした事を思い出していたら……転びそうになった。手すりに捕まった影響で手にしていた書類が床に散らばるーー。やばい、育に見られたらまた何か言われるっ!そう思って必死に拾い集めると、王宮からの封書の中身がチラッと見えた……。1番上に書かれていたのは、執事学校成績上位者身辺調査の文字。その書類が目に入って、改めて理解したーーもう彼がここには戻らないのだと、もう会えないのだと。



 昼間の書類のことを思い出して眠れないまま夜になった。書類の事、光くんの事、あの日私の身に起きた事ーー。


「お前がそれでいいなら、俺は口出ししない。でもお前が知りたいなら知るべきだ。前を見るだけじゃ、見えない事は世の中に多くあるぞ」


 数日前、門番さんにそう言われた。曖昧に笑って済ませたけど、それじゃ何も変わらなくて、気持ちに区切りもつかなかった。門番さんは普段預かった書類を私に預けたりしないから、私に行動を起こすきっかけをくれたのかもしれない。




 思い立った私は隣の部屋を訪ねた。この人なら答えてくれるだろうーーでも不在だった。じゃあ、あそこだ!目的地を目指して階段を降りて玄関ホールを抜ける、もうすぐーーと思った所で探し人の声が聞こえた。そっとリビングの扉を開けると、今1番話したい人の後ろ姿だ、どうやら電話をかけているようだ。少し待った方がいっか……その場を離れようとしたけれど、紡がれた言葉に私は動けなくなった。


「夜分に恐れ入ります。一条家メイド長の白川結衣と申します。……はい、日頃から大変お世話になっております。……一介の使用人として大変恐れ多い事を申し上げますが、五十嵐公爵にお電話口にお越し頂く事は可能でしょうか?……はい、恐れ入ります」


 どうしてーー五十嵐家に電話を? 



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