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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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56.永い夜①



「修斗くーん!もうすぐご飯にするから、これ温めて光くんの所に持って行ってー」


「あ?……ったく、しょうがねぇな」


 チラッと私を見た修斗くんが、光くん用のお粥が入った鍋をガスコンロに置いた。火が苦手ーーそれはお屋敷にいる人ならみんな知ってる私の弱点だ。今日食事を持ってきてくれた前の料理長さんも、気を遣って全ての料理を温めてから帰ってくれた。苦手なことを、強要されないのはありがたい。


「温めたら俺が望月の所に持っていくから。お前は盛り付けでもしておけ」


「えっ?あ!持っていくのは、柚子が行くよー!」


「熱いから危ないだろ」


 ……修斗くんは過保護だ。火は苦手だけど熱い鍋が持てないわけじゃない。第一お盆で運ぶのに何が危ないんだ。それに、最近光くんは体調不良で自室に篭りきり。だから顔を見られる絶好のチャンスなのに。

 みんなのーーと言っても普段より少ない食器に盛りつけながら考える。どうしよう、なんて言えば修斗くんを納得させられるだろう。


「あ!修斗くんっ!柚子さっ」


 付け合わせの人参グラッセをお皿に置いて振り返る。


「……修斗くんなら、さっき望月の所に行ったよ」


 先程まで修斗くんがいた場所には、入れ替わりで育が立っていた。せっかく光くんのところに行くいい案を思いついたのに!!

 自分が早く行動しなかったのが悪いけど……聞かないで持って行った修斗くんも良くないよねぇ。よし!




「おい!なんだよ!これ!!」


「鳥待のお皿、人参多いねぇ~」


「おい!柚子!」


「好き嫌いは良くないよー!」


 ちょっとした仕返しに、修斗くんの好きじゃない人参を多めに盛っておいた。案の定修斗くんはやや怒り気味だ。


「じゃあお前もピーマン食えよ!」


「今日は、ないもーん」


「2人ともうるさい」


「4人でも賑やかだねぇ~」


 私も修斗くんが主に話しているだけだけど、いつもと同じくらい盛り上がっている食卓だった。……もしかして、いつも私と修斗くんがうるさいの??


「結衣ちゃんがデザートにレモンパイあるから食べてねって言ってたよ~」


 食事も終盤に差し掛かった時に、深雪さんからまさかの発言が飛び出した!


「えっ?早く言ってよー!柚子、ご飯おかわりしちゃったじゃないか!!」


 食欲の秋はとっくに過ぎ去ったのに、私は今日ご飯を3杯も食べていた。


「ごめん。ごめん。よく食べるなぁと思ってたら言うタイミング逃しちゃった~」


 いつものヘラヘラ口調で深雪さんが答えた。レモンパイがあれば2杯にしておいたのに。


「もー!深雪さんおっちょこちょいだ!」


「柚子に言われたくないと思うよ」


「何か言った?」


 みんなでお片付けをしながら、食後のお茶の用意をする。いつもは、お姉ちゃんと2人でそれはそれで楽しいけど、賑やかな今日もこれはこれで楽しい。



 残ったレモンパイは冷蔵庫に入れておいた。今日のは、いつもより酸味があったなぁ……。そんな事を考えながら、お風呂上がりに廊下を歩く。部屋に入ろうとした所で光くんの部屋の扉を見つめる。体調大丈夫かな……。既に就寝したのか、扉から灯りが漏れている様子もない。明日は声かけてみよう。

 時刻は22時になるところだった。さてさて、日記を書いて寝よう。いつも通り日記帳を取り出してーー。


 ちょうど書き終えた所で、扉がノックされた。永い永い夜の始まりの音だった。




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