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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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2.一条家へ

「あれ?さっきの子……?」




 望月光と名乗ったその人は、私を見て目を丸くしていた。そうか、そうか、この人が同期ってわけね。人懐っこい笑顔に、仲良くなれそうな気がしてきた。




「2人揃ったね、改めて、一条家執事長の立花正義です。よろしくお願いします。……ところで、2人は知り合いなのかな?」




 立花さんの立ち居振る舞いは一条家の執事長に相応しいなぁ、すごいなぁ。私にそう思われていることなんてつゆとも知らずに、立花さんは私達2人の顔を見ていた。




 先ほどの車内での出来事を話しながら、立花さんの案内で駐車場まで向かう。駅前に新しくパン屋さんが出来ていたり、駅の屋根が赤色になっていたり、少しずつ街の雰囲気も変わっている。領地の経営も順調なのだろうか、活気に満ちているように感じる。




 トランクに荷物を載せて後部座席に乗り込む。後ろの席に座るの初めてだ、思えばこの車では助手席しか座ったことがない。ポツリと呟いた独り言に、望月さんが目を真ん丸にしてこちらを向いた。




「え、一条の家の子なん?」


「え、そうは見えないってこと?」




 ちょっと腹が立つ。私だって、立派なメイド……になるにはまだまだ修行が必要ってことか。。




「2人とも面白いね。望月くんは勘が鋭いんだね、柚子さんは一条家のメイド見習いで修行に行ってたんだよ」




 ね?とミラー越しに笑いかけられればちょっと気持ちが落ち着く。




「そう!だから、望月さんとは同期だけど、柚子の方が一条歴は長いから先輩ってこと」




 決まった!と、望月さんを見上げる。ポカンと口を開けてこちらを見る望月さんを横目に運転席に視線を移せば、必死に笑いを堪えている立花さんの姿。




「え?柚子、そんなに面白いこと言った……?」


「ちょっと、待って。おもっ、おもしろいっ。柚子さん面白いっね」




 ひとしきり笑い終われば、立花さんがふーっと息を吐いて、




「お屋敷に着くまでの間に、僕の方から簡単に一条家を紹介するね。2人の主人になるのが、一条公爵家の当主一条 大雅(いちじょう たいが)様。柚子さんは小さい時からお側にいるし、望月くんは面接で会ったよね。とても雅なお方だよ」




 うんうん。それは知っている。雅っていうか、独特なんだよなぁ。優しいからいいんだけど。




「メイド長の白川 結衣(しらかわ ゆい)さん。柚子さんのお姉さんで、屋敷でわからないことがあったら何でも聞いてね。恥ずかしながら俺はまだ一条家での日が浅いから……」




 言わずと知れた自慢のお姉ちゃん。6年前にメイド長の地位に就いた。今日の夕飯は、オムライスかアクアパッツァか。どっちだ。




「次に運転手の鳥待 修斗(とりまち しゅうと)。口は悪いけど、根は優しいからすぐに慣れると思うよ。」




 ププッ呼び捨てにされてやんの。修斗くんの口の悪さは世界一だからね。




「庭師の風見 育(かざみ いく)。執事の仕事も少し手伝って貰っているんだ。庭の管理は全部彼がしているんだ。望月くんと年も近いから仲良くなれるんじゃないかな」




 育も立派に仕事してるんだなぁ。あの広い庭の管理……考えただけで恐ろしい。




「あと、執事の深雪 朔夜(みゆき さくや)。外での仕事がメインだから屋敷にいることは少ないけど、面倒見がいいから何かあったら頼ってみてね。その他に、前に料理長してた方が通いで手伝いに来てくれてて、門番は騎士団から派遣されている人がきているよ。着いたらきちんと紹介するから」




 3年の修行の間、里心がつかないようにと一度も帰らなかったお屋敷。少しずつ変わってはいるけど、新しい人も優しそうで良かった。安心しきって3人で他愛もないことを話しながら、車に揺られる。もうすぐだ、もうすぐ赤薔薇の咲き誇る庭と大きな門が見えるはず。


 最後の角を曲がる前に、柔らかい笑顔の立花さんが後ろを振り返った。




「それでは、2人とも参りましょうか、一条家へ」

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