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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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34.前夜災

 

 あれから1週間が経った。騎士団による見回りや、お屋敷の夜間見回りもあって、特に何事もなく日が経つ。待ちに待ったお出かけ……をしたかったけど、私の休日はまだ先だ。


 1週間ぶりに正門付近を片付ける。この時期は落ち葉がいっぱいで、しかも期間が空いたので時間がかかる。


 はぁ……とため息をついて、箒を使っていた手を休める。




「ねぇ、門番さん。ベーグルって食べたことある?」




「急にどうした?」




「柚子この前のお休み、クロワッサンとベーグル買いに行きたかったんだよね。ベーグル食べたことないから……。どんな食感なんだろう」




「……食べ物のことになると真剣だな」




「いつも真剣だよ?……ベーグル食べたいなぁ」




「そんなにベーグルベーグル言ってると、自分がベーグルになるよ」




 だいぶ棘のある言い方に振り向けば、外に出かける装いをした育が立っていた。




「育って柚子に意地悪言うよねっ!」




「意地悪は言ってないよ。言霊ってあるから、そんなに言ってたらそうなるんじゃないかなと思って忠告してあげてるんだよ」




 ……多分だけど、育のご機嫌は斜めだ。お庭が燃やされてから、ずっと不機嫌だったけど。八つ当たりか!




「……子どもみたいな喧嘩はやめろ。公爵家の使用人が正門ですることじゃないだろ」




「喧嘩じゃないもんっ!柚子、八つ当たりされてるだけだぁぁ」




「ふんっ……!僕街に出かけてくるから」




「えっ?なんで街に行くの?」




「……やっと外出許可が出たからね。花の苗とか買いに。じゃあ」




 そう言って育が正門から出て行く。ガシャっと無機質な音を立てて門の鍵が閉まる。




「……柚子も!柚子も街に行きたいぃぃ!クロワッサンとベーグルが私を呼んでるのにぃ」




「おい。お前……落ち着け。庭師は食べ物を買いに行った訳じゃないだろ」




 門番さんにギャイギャイ文句を言って、メソメソして慰められて、そうこうしているうちに、正門周辺の落ち葉拾いは終了した。






 その日の夜ーー。リビングのソファーでお風呂の順番待ちをしている時だった。




「柚子」




「なぁに?」




 話しかけてきたのは育だった。昼間のこともあって、やや不機嫌な口調で答える。




「……ベーグル食べる?」




 どうせまた嫌味を言ってくるんだろうと思っていたけど、その口から発せられたのは意外な言葉だった。




「ベーグルあるの?」




「……街に行ったから。ついでに買った。食べないならーー」




「食べる!食べる!育ありがとう!」




 話を遮り私は決死のアピールをする。育って意外と優しいんだよね!どこにあるんだろうと、キョロキョロしていると光くんがお盆に何かをのせてやって来た。




「いやーもう。風見は人遣い荒いわ」




「悪かったね。でも君の分もあるよ」




「俺の分なかったら泣くわ」




 2人が話してるのって珍しいかも。テーブルの上に、ベーグルのお皿と光くんが淹れてくれたらしい紅茶が置かれる。




「これが……ベーグル??」




 形状はドーナツに近い!丸くて真ん中に穴が空いている。外側は焼き目がついて普通のパンみたいだ。




「まぁ、食べれば」




「いただきまぁす!」




 少し小さめにちぎってみる。ーーほぉ、割と弾力がありそうな感触だ。そのまま口に運ぶ。




「ん~~!美味しい!もっちもちだね」




「うまいなぁ!腹に溜まりそうなパンやな」




 3人でパンの感想やら、次はどんなパンが食べたいやら、好きなパンランキングを話し合っていた。あっという間に時間は過ぎて、お風呂の順番も最後になってしまった。次に街に行くことが、パン屋さんのパンを食べられることが、だいぶ先になるとこの時はまだ知らなかった。



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