33.夕焼けに願うこと
「なるほどなぁ。確かに、庭まで侵入したなら屋敷はすぐそこーー危害は加えられるよなぁ」
「ね!光くんも、そう思うでしょ?」
廊下の片隅でコソコソと話す。光くんも私の意見に同感な様子だ。ふと、彼の顔を見上げると青白くてあまり具合が良さそうに見えない。
「……大丈夫?顔色悪いよ?」
「へ?あ……そうかなあ?」
「具合悪いの?」
「いや、そんなことあらへんよ。夏前に俺らの誘拐事件もあったし、ちょっと不気味やなぁと思って」
確かに、私と光くんは立て続けに事件に巻き込まれている。私は割と慣れているけど、不気味に思うのも当たり前か。狙いが何かもわからないし、そう思うとちょっと怖くなってくる。
「……そうだね。なんか怖いよね」
「ごめんな。柚子ちゃん、怖がらせてしまったなぁ。……俺が守るから大丈夫!って頼りにならんな」
「そん……そんなことないよっ!」
ーー男の人にそんな風に言われたのは、初めてだった。思わず顔が熱くなるし、息も吸いづらい気がする。
「そんな風に言われたことないから……。嬉しいよ!ありがとう」
こんな返事でいいのだろうか。素敵な人だなと改めて感じた。こんな気持ちになることは初めてだった、私が素敵な人だなって思ってること……伝わってるのかな。
全員の聴取が終わったのは、昼食前だった。1週間程度は、騎士団の見回り強化が行われるようだ、そして私たちはお屋敷に待機するようにと言われた。
食後の片付けを終えて周りを見渡す。お姉ちゃん、大雅くん、修斗くん、立花さん、光くんはいつも通りだ。深雪さんは夜に出かけたい用事があったのだろう、ちょっと悩ましげな顔をして考え事をしている。育とお喋りでも……と考えたけど、話しかけるのをやめた。彼は……険しい顔で燃えた部分を見ていた。本当に悔しそうだし、多分新しい苗とか買いに行きたいんだろうなぁと気持ちを察する。
部屋に戻って手紙を書くことにした。育はきっと騎士団の捜査以外の情報を知りたいと思ってるはずだから、手紙の宛先はいろんな情報を知っているはずの人物だ!
五十嵐家
彩月 綴 様
元気?柚子だよー!
莉子ちゃまも元気?
今回は聞きたいことがあって、お手紙書いたの。
もう聞いたかもしれないけど、一条家のお庭が燃やされたの。すごくびっくりしたよ!五十嵐のお家でも、そういうことあった?
何か情報知ってたら教えてねー
一条家
白川 柚子
……手紙書いたはいいけど、どうやって出そうか。門番さんにお願いしようかなぁ。
ふと窓の外を見る。綺麗な夕焼けが目の前に広がっている。
燃える火は苦手だ。私の全てを灰にしていく。もうこれ以上、一条家に何も起こりませんように、炎と同じ色の空にそっと願うのだった。




