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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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29.柚子はスパイ⑧

 


 何も言えないし、振り向けないーー無言で前を向いているだけの時間が過ぎる。まるで拳銃でも突きつけられているような空気だ。




「柚子、望月。こちらへ」




 名前を呼ばれてハッとする。光くんと2人、大雅くんの後に続いて部屋へと入る。……いつも通り、大雅くんは椅子に座って机を挟んで対面する。お姉ちゃんか修斗くんか立花さんか、誰かしら立ち会っているから、こうして1対1で話すことは滅多にない。




「……2人で階段で何をしていたか、聞かせて貰おうか」




 別に怒っているわけではない。でも大雅くんの声にはいつも威厳があるのだ。それがこの状況下で私をーー光くんを緊張させている。




「えっと……」




 どこから話せばいいんだろう。血まみれ深雪さんのことを話した方がいいのだろうか。説明を求められると、自分が割と計画性もなく思いつきで動いていたような気がしてきた。隣に立つ光くんも説明に困っているようで、2人で困惑する。




 黙っていてもしょうがない!煮え切らなくなった私は、とりあえず思いついた事を口にした。




「お屋敷の秘密を探ってるんだ!」




「ちょ……柚子ちゃん!」




「屋敷の秘密……?詳しく聞かせて貰おうか」




「柚子達は、何でかわからないけど3階に行くのをやんわり阻止されてる気がするし……。深雪さんは、夜出掛けて朝帰ってきたりして執事さんの行動にしては怪しい!と思って。だから、柚子達が知らない何かがあるのかなって思って……」




 自分でも何を言っているか、大雅くんに伝わっているか分からなくなった部分もあったけど、言いたいことは言えた。光くんは慌てているような顔をしているけど、大雅くんはこちらを見つめて、一呼吸してから言葉を紡いだ。




「なるほど。2人とも謹慎期間で暇な事もあって、屋敷内の様々な事に触れて気づきを得る機会があった……という事だな。その観察力、洞察力は素晴らしい」




 怒られる……と思って身構えていたけど、素晴らしいらしい。褒め言葉を貰って私は少しホッとした。




「屋敷内の人間に対して隠すようなことは、何もない。少し時間は遅くなるが、疑問に思うことが有れば答えよう」




「えっ!本当に?」




 まさかの大雅くんーーご当主に直接質問する機会が得られるとは思わなかった。なーんだ、スパイごっこも楽しかったけど、最初から大雅くんに聞けば良かった。




「まずは……じゃあ、3階のことから!怒られると思ったけど、柚子と光くんは3階に行ったの。それで……」




「機密文書って言う資料や、拳銃もいくつか見ました。一条家は公爵家やし、ある程度の国家機密資料があるのは理解してるんですけど、拳銃はその……騎士団の上層部しか持てないと、俺は学校で習って……」




 私の言葉に、光くんが詳しい状況を説明し、大雅くんは机の上で手を組んで聞いている。




「では、まず3階についてだ。俺は誰に対しても、特に立ち入りを制限していない。倉庫として整備する予定になっているので、結衣と立花に整理を任せている。あの2人のことだ、整理中の物に触れられたくないんだろう」




 倉庫にするなんて聞いてない!けど、確かにお姉ちゃんなら整理中の物を動かされるのは嫌がるだろう。あんなに大量の書類を片付けるのか……と言うことは、お姉ちゃんは機密文書の存在を知っているってこと?




「機密文書があんなにいっぱいるのは、どうして?」




「古い資料だからだ。昔は王家から爵位のある家に発行される書類は、土地のこと家のこと……なんでも機密文書とされていたようだ。今となっては、普通の書類だな。処分予定だ」




「じゃあ……柚子達が見たのは、普通の内容だけど機密文書って書いてある書類ってこと?」




「そう言うことだ」




 愕然とした。あ、あ、あんなに時間をかけて解読したのに……ただの書類?しかも棄てるやつだなんて、なんてことだ……!




「拳銃はどうなんですか?すごい量でしたけど……」




 私がショックを受けている横で、光くんが恐る恐る……と言った口調で尋ねる。




「……レプリカだ。大量にある理由は、騎士団の倉庫工事の都合から預かっているからだ」




 大雅くんはその後に、ちなみに我が家でもレプリカを2丁保有しているぞ。と付け加えた。


 レプリカ……偽物ってこと??本物じゃないなら、もっと触りたかったじゃないか!




「他に質問は……あぁ、あと深雪のことか。夜間に出掛けて朝に帰宅するーー確かに普通の執事ではなかなか無いことだ。王都で2人が巻き込まれた誘拐事件のような、様々な出来事に備える為に彼には普段から情報収集や他家との連絡を担って貰っている」




「え!そうなの?」




 深雪さん……すごい大変なお仕事してたんだ。おサボりさんだと思ってて、悪かったなぁ。深雪さんのおかげで助かったんだ、後でお礼を言わなくちゃ。




「さて、もう時間だ。何か気になることがあれば俺に聞くなり、書類を見たければ結衣か立花に声をかけてから閲覧するといい」




 大雅くんの言動は、まだ謎を探りたければ屋敷内を探っても良いと言っているようだ。せっかくなら、お宝が見つかるかもしれないから3階をもっと探索してみようかなー。




「はーい。じゃあ、柚子は3階のお宝発掘に挑むよ!スパイはやめて、ハンターする!」




 新たな決意を胸に、光くんと2人寝る前の挨拶をして大雅くんの部屋を出る。




「……望月、柚子。ほどほどにな」

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