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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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25.柚子はスパイ④

 

 光くんと勉強するから!と朝食の席で宣言し部屋に篭った。昨日持ってきて貰った貴族名鑑を机に開いておきながら、その下に機密書類を置いておく。手分けして文章の解読に挑むけど……やっぱり読めない。誰だこの文章書いたの。




「……光くん、調子どおー?柚子さっぱりわかんないー」




「俺も分からんなぁ。こんなに達筆な文字で書いて、送られた方も読めたんかなぁ」




 本当にこれで読めたんだろうか。……読んでる文章に飽きた私は、他の機密書類の束を捲ってみる。




「あ!光くん!柚子気づいた、これ見て?」




「ん?どうしたん?」




「書いてる人が違えば読めるかもしれないよ」




 私の手元にある書類は、先程まで解読作業に勤しんでいた書類よりも、遥かに読みやすそうな字で書いてあった。それでも達筆なことに変わりはないのだけど……。




「なるほどなぁ。……順番に拘らんと、読めそうなのから読んでみるか」






 分担作業を始めてからしばらく経って、時計を見ると10時になるところだった。




「もう10時だ!休憩しよ?お姉ちゃんが10時のお茶用意するから取りにきてねって言ってた!」




「もうそんな時間かぁ。早いなぁ」




 集中力も切れてきたし、休憩のタイミングにはちょうどいい。2人でキッチンへ向かうと話し声が聞こえた。




「お腹空いたなぁー。ゆーいちゃん、何か食べ物あるー?」




「深雪さん。帰宅したらまずは手を洗ってください。あと、第一声はただいま戻りました!でお願いします」




「手厳しいなぁ……。ただいま戻りました」




「はい。おかえりなさい、お疲れ様でした。サンドイッチと……紅茶でいいかしら?」




 お姉ちゃんと深雪さんだ。……サンドイッチか美味しそうだなぁ。




「おねぇーちゃぁーん。おやつ取りにきたよー!」




「結衣さん、おやつありがとうございます!あ、深雪さんお疲れ様です」




「2人ともお疲れ様。仲良く食べてね?」






 サンドイッチのお皿が載ったお盆と、紅茶セットの入ったお盆が渡される。重いから……と光くんが紅茶セットの方を持ってくれたので、私はサンドイッチの方を持つ。たまごサンド、ジャムサンド、フルーツサンドっぽいのもある。部屋に戻ってテーブルを片付けてお茶にする。どのサンドイッチから食べようかなぁーと吟味していると、光くんが口を開いた。




「なぁ。深雪さん、今日も朝帰りやんな。夜何してんのやろ?」




「……そういえば、そうだね!昼間はいないことも多いし。柚子サボってるんだと思ってた!」




 大好きなたまごサンドを口に運びながら、深雪さんについて考える。朝食の席には居たり居なかったりするし、なんなら夕食も食べていない日がある。食事に興味がないのかと思ったけど、お姉ちゃんが準備したおやつは必ず食べている。昼間は神出鬼没で、屋敷に居ないと思ったらどこからともなく現れる。




「サボってはおらん……とは思うけど。普通の執事とは動きが違うような気はするなぁ」




 次にジャムサンドを口に運ぶ。前に王宮で貰った薔薇のジャムだ。なんか贅沢な味で美味しい。……深雪さんの特徴といえば、不健康そう、ひょろっとしている、夜いない、総評すると執事っぽくない。あ!もしかして、深雪さん……。




「深雪さんって執事が本業じゃないんじゃない?」




 私の言葉に光くんが口をポカンと開けた。




「えっと……それは、どういうこと?」




「執事ってことにして、本当の身分を隠してるんじゃない?」




 素晴らしい!私は天才かもしれない!お屋敷の謎を探ってたら、深雪さんの謎に気がついた。やっぱり、私にはスパイか探偵の才能があるかもしれない!




「本当の身分……?」




「そう!それが何かはわかんないけど……」




 深雪さんのことは置いておいて、光くんと機密文書の解読を再開する。結局1日かけたけど、分かったことは領地の使い方についての許可の書類だけ。面白い情報は得られなかった。またお互いにぼちぼち解読しようという事になり、お休みは終わった。






 その日の夜だった。昼間珍しく頭を使った私はいつもより、早めに眠った。


 深夜1時、喉の渇きを覚えて目が覚める。




「うー。お水飲んでくるかぁー」




 そっと部屋を抜けて階段へと向かう。1階と2階の間の踊り場で、玄関方面に人影が見えた。怪しい人物かーーと身を隠して様子を伺うと……多分、深雪さんだ!こーんな遅くまでお仕事だったのかな?何か声をかけようと思ったところで私は気づいた。




「っ……!!」




 思わず大きな声が出そうになるのを必死に抑えて、深雪さんに見つからないように音を立てず部屋に戻る。




「あれって…。血だよね?」




 私が見たのは、どう考えても服に返り血を浴びたっぽい深雪さんの姿だった。血?なんで?え?どういう事?血?いや、ワインとか零しちゃった?頭の中をいろんなことがグルグル巡る。あ、怪我してたのかな?手当てしてあげた方が良かったのかな?うぁー、眠れない。こうして私の夜は更けていった。



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