20.衝撃の朝
「んーっ。お腹空いたっ」
昨日は疲れた……いつの間にか寝てしまったようだ。時計を見ると、いつも起きる時間だった。寝坊じゃないことに安心して、身支度を整えてキッチンへ向かう。
「おねーちゃぁーん!おーはーよー!」
「あら、柚子!おはよう。……置き手紙したけど、見なかったのね」
ガス台に向かっていたお姉ちゃんが振り向いた、置き手紙……何の話だろう。
「いろいろと疲れただろうから、今日はお休みよ。お手伝いもいいわ」
そういえばテーブルの上に紙が置いてあった気がしてきたーーと思い返しながら、お姉ちゃんが淹れてくれた紅茶を飲む。やっぱりお家はホッとするなぁ……。
「柚子お腹空いたぁー」
「オレンジ切ったから食べて待っていてちょうだい」
とりあえずお腹を満たしたくて、オレンジを食べる。
「あれ?柚子ちゃん。おはよう」
お手伝いにやってきたのは、立花さんだった。昨日の今日で私が早起きしたことが珍しい様子だ。
「おはよぉーございますっ!」
「おはようございます。置き手紙読まなくて、起きてきたみたいなの」
「なるほどね。……柚子ちゃん、いろいろと大変だったね。お疲れ様」
お姉ちゃんと立花さんは朝食の準備を始め、私はキッチンの隅でぼーっと朝を感じていた。今朝は魚か……、お味噌汁の具は何だろう。
朝食の時間が近づきダイニングへ向かうと、光くんがいた。
「光くん、おはよぉー。なんか災難だったけど、休みがゲット出来て嬉しいねぇ」
「おはよぉ。……さすが、柚子ちゃん!えらいポジディブやなぁ」
よく観察してみると、ちょっと眠そうだし顔も疲れているように見えるけど、それ以外はいつも通りそうで良かった。続々と朝食が運ばれてきて、各々席に着いた。
「みんな、ここ数日大変だったと思う。お疲れ様。今朝からは、いつも通りの日常生活にはなるが……。気を引き締めて過ごすように。それから、望月と柚子は食後話がある。俺の部屋に来るように」
話って何だろう……?事件に巻き込まれたし、5日くらいお休みとかかなー!今日はご飯食べたら寝て、久しぶりにクロワッサンでも買いに行こうかな。そんなことを考えながら、大雅くんに適当に返事をした。
数日ぶりのお姉ちゃんのご飯は美味しかった。ご飯は3杯おかわりして、私のお腹は満たされていた。食後の休憩をして、大雅くんの部屋に向かうと光くんの姿はもうそこにあった。そして、大雅くんから予期せぬ言葉が発せられた。
「……へっ?えっ?……いま、なんて?」
「2人とも謹慎だ。しばらくの間、この屋敷の建物から出るのを禁ずる」
「犯人達の動機もまだわかってないし、捜査が終わって落ち着くまでは……ね?」
立花さんが理由を付け加えてくれる。近親?金神?謹慎!お外に行けないってこと!?えっ、ちょっと待って……謹慎って、悪いことした人が反省の為に一定期間出かけられないことだよね?え?私ーー何か悪いことした?……とりあえず、お部屋で一眠りしよう。あまりに混乱したので、ひとまず休息を取る為に自室へ向かった。
「んっ?何時だぁー」
大雅くんの話の後、私は部屋で寝ていた。時計をみるとまだお昼前だ。お屋敷から出るなーーと言われたけど、とりあえず暇だから門番さんにでも愚痴を言いに行くことにする。
「もーんばーんさーん!」
「おぉ……。ここに来ていいのか?」
「……?なんか柚子、事件に巻き込まれて大変だった!しかもね、事件の捜査が落ち着くまでは、お屋敷から出ちゃダメって言われたの!なぜ?どうして?柚子が何をしたと言うのぉー」
「落ち着け。……今、騎士団が捜査段階だから。それと勘違いしてるぞ?」
勘違い……?何のことだろう?頭の中に疑問がたくさん浮かんだ時だった。
「柚子!怒られるよ」
「あ、育!」
「屋敷から出るなって言われたでしょ?」
「出てないじゃないか!門番さんは、お屋敷の敷地内だ」
はぁ……と育と門番さん2人がため息をついて、顔を見合わせた。
「柚子……。屋敷の敷地じゃないよ。屋敷の建物から出たらダメって言われたんだよ」
「なっ……なんだってぇ!!」
建物から出ちゃいけないなんて、聞いてない!……ん?言われたような気もする。謹慎期間は捜査が落ち着くまでと言われたけど、それって何日?頭の中をいろんな疑問が駆け巡って私はその場に立ち尽くしたのだった。




