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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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18.事件⑥side立花正義

 



 夕食の時間はこれまた静かだった。深雪は外へ出掛けていないし、やはり望月と柚子ちゃんのいない食卓は賑やかさにかける。2人が来るまでは、これが普通だったんだよね。



「結衣ちゃん、手伝うよ」



「ありがとう」



 食後の片付けを手伝いながら、彼女の様子を伺う。2人がいなくなってから、明らかに食事量も減ったし元気がない。深雪の捜査の進捗状況を彼女には言わないように、とご当主様から言い付けられている。その為、2人の居場所が分かりつつあることや、無事である可能性が高いことを彼女は知らない。



「深雪さん、今日も帰りが遅いのかしら」



 僕が拭いた食器を食器棚に戻しながら、彼女が呟いた。



「どうだろう……。今朝もお昼近かったけれど」



 誤魔化すのも心苦しい。もう少しだよ、きっと今夜には2人の居場所がわかるよ。と僕は心の中で声をかける。



「犯人は覚悟が出来てるのかしら。……うちの柚子と光くんを危険な目に合わせてると言う自覚は……」



 聞いたことのないような低い声だった。普段あまり感情を出すことのない彼女の発言に驚いて、思わずそちらを見る。僕の視線に気づいていつもの笑顔を浮かべたが……怒りが滲み出たその貼り付いた顔は、思わず犯人達の今後を心配するような恐ろしさだった。






 三日月の美しい夜だ。業務を終えた僕は自室で本を読んでいた。



「あっ……こんな時間か」



 時計の針は0時を示そうとしている。望月と柚子ちゃんは、大丈夫だろうか。きちんと眠れているだろうか。2人のことを色々と考えると眠れなくなりそうで、寝る直前まで本に没頭している。そろそろベッドにと思ったタイミングで扉が叩かれた。こんな時間に誰だろう。



「やっほ~。寝るところだったぁ?ごめん~」



「いや。大丈夫だよ。遅くまでお疲れ様」



「ご当主様も流石に寝てるみたいだからさ~。明日の朝報告行くんだけど。居場所わかったし、2人は無事だよ。多分、救出に行くと思うから一応お知らせ~。そーゆー時って執事長は何かと大変なんでしょ~?」



 深雪は帰宅して、電気が点いていた僕の部屋に先に報告に来てくれたようだ。言いたいことだけ言うと、早く寝て~といつもの調子で去って行った、



「無事で良かった……」





 2人の無事を聞いて久しぶりによく眠れた。朝食作りの手伝いに行こうとすると、風見からご当主様が部屋で呼んでいると言われた。



「失礼します。おはようございます、ご当主様」



「おはよう。深雪から昨夜聞いたと思うが、2人の居場所が判明した。全員には朝食時に伝える。……救出には一条家が行く旨、騎士団に連絡してくれ」



「承知致しました」



 朝食前に騎士団に電話をかけると、前日から夜警をしていただろう若そうな団員に繋がる。用件を話すと、上司に伝えておいてくれるとのことだった。





 全員が食卓に着くと、ご当主様から言葉が発せられた。



「2人の居場所がわかった。本日救出に向かう。屋敷の留守は……育と門番に頼む。他は朝食後準備ができ次第出発だ」



 はい。と揃った返事をして無言の朝食となる。……待て、結衣ちゃんは留守じゃないのか?一緒に行くのか……そりゃ、妹がいるし心配だろうけど女の子を連れて行くのは、大丈夫なんだろうか。







 食後の片付けなどが終わると、各々準備をして車庫に集まった。深雪は先に行くとのことで、別行動だ。運転席に鳥待、助手席に僕、後部座席にはご当主様と結衣ちゃんが乗り込む。深雪から知らされた住所を伝えると、車は迷うことなくそこへ向かった。



「そろそろだ。……俺は先に深雪と行く。5分後に来てくれ、慎重にな。くれぐれも勝手な行動はするなよ、特に結衣!聞いてんのか?」



「そんなに大きな声で言わなくても聞こえてるわ。修斗くんこそ、静かにしてちょうだい。犯人に見つかったらどうするの」



 なんで結衣ちゃんが名指しで注意されたのか、この時の僕にはまだ分からなかった。





 2人がいると見られる建物が見えた。少し離れた場所に車を停め、鳥待は先に行った。それから5分後……。



「僕たちも、そろそろ行きましょうか?」



 ご当主様に問うと無言で頷く。久しぶりに腰に差した剣……少し緊張しつつ、不測の事態に備えて手をかけておく。お邪魔します……と心の中で呟き扉を静かに開け、昼間でも薄暗い廊下を進む。深雪と鳥待を見つける前に、怪しい人影がこちらに向かって歩いて来ているのに気づく。潜入がバレたかーーご当主様と結衣ちゃんを守らなければ、相手の武器も剣のようだし、僕も……と腰に手を伸ばした時だった。



「下がってーー」



 落ち着いた結衣ちゃんの声が聞こえたと同時に、銃声が響く。驚いて後ろを振り向くと、拳銃を構えた結衣ちゃんとその後ろで佇むご当主様の姿が目に入る。



「今のは威嚇よ?」



「うちの使用人がお世話になったようで。迎えに来たのでご案内をお願いしたい」



 この状況についていけないのは、僕だけなのか?ご当主様は、いつもの調子だからいいとして。拳銃なんて、この国では騎士団の上層部しか持っていないと聞いたのに、なぜ結衣ちゃんが扱えるんだ。しかも、どこから取り出したんだ。やや混乱している僕よりも、状況を察した怪しい人影は両手を挙げて投降の意を示した。2人の居場所まで案内するというので、僕たちは歩き始めた。もちろん、彼女は拳銃を片手に持ったままだった。



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