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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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13.事件①

 

 久しぶりに晴れた日だ!朝起きてカーテンを開けてウキウキする。



「お姉ちゃん、おはよー!今日晴れてるねぇ」



「おはよう。そうね、久しぶりにいい天気そうで良かったわね」




 いつも通りの朝が始まった。朝食の時に大雅くんから、今日は騎士団の行事があるので門番さんはお休みだと伝えられた。

 朝食の食器を片付けながら、お姉ちゃんに尋ねる。



「騎士団の行事ってなぁに?」




「さぁ……お姉ちゃんも詳しくは知らないけれど、技術を披露したり、パレードをしたりするみたいね」




「へぇー!技術って?」



「剣術や馬術、柔術かしら?近頃だと拳銃の扱いも含まれると思うわ」



「ふーん。お姉ちゃん詳しいねぇ」



「いろいろと情報を仕入れておくのも公爵家のメイド長の務めよ」



 お姉ちゃんは物知りだなぁと思いつつ、私はあることに気づいた。



「門番さんがお休みってことは、門番さんのおやつはなし?」



 いつも門番の古林さんが休みの時は騎士団から別の門番さんが来るけど、今日は代わりの人は来ない……私はいつもおやつを分けて貰っているのに、そのおやつが今日は食べられない可能性が出てきた。これは大変だ。



「……柚子。あなたいつも、門番さんの差し入れを分けて貰っているようね」



「いや、あのっ……そのー」



 お姉ちゃんに注意されるのはごめんだ。適当に誤魔化さないと……。



「まぁ、大体予想はついてたから構わないわ。10時のおやつは何か用意しておくから手が空いたら食べてね」



 良かった。怒っている訳ではなさそうだ。



「うん!おやつ楽しみぃ」






 牛乳ゼリーな気がするなぁ、と洗濯物を干しながら思う。久しぶりに太陽と外の空気に当たったシーツは気持ちよさそうだ。おっと、ここでボケっとしている時間はない。お姉ちゃんは、手が空いたらおやつを食べていいと言った……つまり、仕事を早く終わらせないとおやつはなしだ!そんなことは避けなければいけない。


 玄関先を掃き掃除していると、修斗くんがやってきた。



「何してんだ?」



「えっ……」



 ほうきを持って、玄関を掃いている……。何しているって掃除以外に何があるんだろうか。修斗くんってやっぱりおかしい。



「おい!口に出てるぞ、俺はおかしくない!」



「おっとっと、思わず口に出ちゃった!だってさぁー、玄関掃いてるんだから、何してるって掃除以外のなんでもないじゃん?」



「ちっ……。生意気。お前本当に結衣に似てきたな」



「修斗くん、お姉ちゃんのこと生意気だと思ってたの?えーっ、お姉ちゃんに言っちゃおう!」



「ちょっと待て。おい、結衣には言うな。……違う!俺はお前に言うことがあって来たんだ」



 言うこと……?修斗くんの言うことは大体ろくでもない事だけど一応手を止めて話を聞く。



「今日は門番がいないから、門には近寄るな。誰が来てもだ!いいな」



 なんだ、そんな忠告か。顔見知りの郵便屋さんくらいしか来ないし、怪しい人が来れば私だって近寄らない。修斗くんは心配性すぎる所がある。



「はーい。わかってるよ」



 まだ何か言いたいことがありそうだったけど、私はまたほうきを動かす。今日は貴重な晴れの日だ、時間を有効に使わないと。





 門にはあまり近寄らない方がいい、それは分かっていたので必要最低限のところを掃除する。



「すみませーん、郵便ですー」



「あ、はーい!」



 声をかけてくれたのは、いつもの郵便屋さんだ。門を開けないで隙間から郵便を受け取る。送られてきた手紙の束に、自分宛がないかをチェックする。ご当主様宛がほとんどだ。掃除が終わったら立花さんに持っていこうと、とりあえず門番さんがいつも顔を出すカウンターの前に置く。




「お忙しいところ、失礼致します」



 掃除を再開してすぐに、とても丁寧に話しかけられた。顔を上げると門の向こうから、物腰柔らかそうな男の人が立っている。



「はい。何かご用ですか?」



 知らない人は何が目的かわからない。なるべく冷静に、一条家のメイドらしく、お姉ちゃんを真似して返事をする。



「道に迷ってしまいまして……土地勘が無いもので。こちらに行きたいのですが、お分かりになれば教えて頂けますか?」



 なーんだなんだ!困り人か!手に持っていたメモに記載されていたのは、この近くだ。



「あ、ここでしたら。この屋敷沿いを右に曲がって、そのあと……」



 口頭説明は難しいなと思って、門を開けた。



「角まで行けばわかりやすいので、案内しますね」



「ご丁寧にありがとうございます」



 ぺこりと頭を下げられる。人助けは素敵な事だし、お姉ちゃんやみんなも褒めてくれるはず。



「ここを真っ直ぐ行って、三つ目の角を……」



 いきなり口元に白い布が押し当てられて、どんどんぼーっとしてくる。おやつの時間はもうすぐなのに……。何が起きているの?



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