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ようこそ、一条家へ  作者: 如月はづき
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12.花言葉

 


 お風呂も済ませて今日の日記を書く……。ん?なーんか今日忘れてる気がするぞ。なんだっけな……光くんに何か話そうと思ったような気がする。まぁ忘れるくらいだから、大したことはないだろう。日記を書き進めようとペンを持った瞬間に、ノックの音がする。これは、光くんだな。



「はーい。……やっぱり光くんだ!」



「ノックの音でわかるんか?すごいなぁ」



 まぁねと得意げに返事をすれば、部屋の中に招き入れる。



「夜分にごめんなぁ、渡したいものがあって……」



 光くんは紳士だなぁと思う。お風呂を上がって部屋に戻ったら、そんなに夜遅くなくても、夜分にと必ず謝る。お育ちがいいのだろうか。



 それより……何をくれるんだろう!光くんは部屋に入ってきた時から、左手を後ろに回して何かを隠している。美味しいものか!



「これ……」



 差し出されたのは1枚の紙だ。よく見ると綺麗な青い色で薔薇が描いてある。



「綺麗……。」



「この前のお礼。なかなか描く時間無くて、遅くなってごめんなぁ。気に入ってくれると嬉しいわ」



 街にお出かけした時に、絵のプレゼントをしてくれると光くんは言っていた。お互い忙しいし自由時間はあるけれど、他にもやりたいこともたくさんあるだろうに……貴重な時間をこの絵の為に使ってくれたんだと思うと胸が熱くなる。



「すごく綺麗!ありがとう!青い薔薇ってなかなか無い発想だね、初めて見た」



「……柚子ちゃん、青薔薇の花言葉って知っとる?」



 青薔薇の花言葉?存在しない花に花言葉なんてあるのだろうか……。少し考えるけど思い浮かばないでいると、光くんは言葉を紡いだ。



「青薔薇って絶対咲くことはないって言われてん。せやから花言葉は[不可能]。……でもちょっと前に別の大陸で青薔薇が発見されて花言葉が変わったんよ」



「何に変わったの?」



「何個かあるみたいやけど、[夢叶う][賞賛]っていう意味になったそうや」



 へぇ、なんて返事をしてもう一度絵を見る。夢の叶う花か……。



「いつか見てみたいなぁ」



「……柚子ちゃん、花に興味あるん?食べ物にしか興味ないんかと……」



「失礼な!柚子だって、食べ物じゃないものに興味だって……あったり、なかったりするんだ!」



「そかそか、それはごめんな」



 なんて光くんは笑っている。食べ物以外に興味のない女子だ、と思われたことがちょっと恥ずかしい。




 夜分にごめんな、と光くんが退出すると部屋が急に静かになった。やっぱりお話すると楽しい人だなぁ……、豊富な話題に人懐っこい笑顔、端々に現れる気遣い、このお屋敷にはなかなかいない貴重な人材だ。大事にしないとな。





 王歴235年6月18日


 光くんから青い薔薇の絵を貰った。


 青薔薇の花言葉は、「不可能」から「夢叶う」になったらしい。知らなかった!


 いつか本物を見てみたいなぁ。絵はベッドの横に飾ることにした。いい感じ!









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