Minaさんの個展を見に人生初の堺市へ。
さて白昼夢さんを後にするも、まだ日は高い。
夜まで時間もある。宿に入るには、まだ早い。
そこで本来ならば翌日の予定だったMinaさんの個展にお邪魔するのを一日繰り上げてしまうことにした。翌日の天気予報が結構な雨なこともデカかった。それに金曜の昼だからか鶴橋駅もあんなに空いていたのだし、これなら他の駅もまだ早いうちに動けば……で調べてみると意外と近い大阪府堺市の南海電鉄・堺駅。
堺市と行っても広いのだが、ひとまず駅と、その近くにある会場まではスグみたいだ。
というわけで先ずは難波まで戻ろう。そのついでに、さっき買った品物を家に送っておくために郵便局を探してポクポク歩く。駅前だし郵便局ぐらいあるだろう。
知らない町の知らない町角の知らない道路、路地、マンション、事務所、お店、自販機。全部いま見知った場所になって、多分もう忘れてる。
信号を待って、渡って、案外すぐ見つかった郵便局に入って、レターパック買って送ってもらって駅まで戻って大阪難波へ。
なんばウォークで南海の難波まで。
いつも地上を歩かないので、実は難波の地理が未だによく掴めていない。
よく日本橋に行こうとして逆方向に歩き出したり、その逆もあったりで……私の作品にも日本橋や生玉、三ツ寺、宗右衛門町やら八幡筋、堺筋は出てきても難波が出てこない。それは自分で歩いていないから。
だって、なんばウォークのが便利なんだもん。トイレやATMもあるし。
平日の昼間だというのにドヤドヤと賑やかな地下街。
ちょうど近鉄と大阪メトロから南海電鉄に色が変わるあたりにコインロッカーがあって。あのコインロッカーって書いてあるフォント好きなんだけどわかるひといる?
白っぽいところから、ブラウンの落ち着いた色合いに。でも歩いているのは同じ人々だから騒々しいのはあまり変わらない。
南海難波駅。待ち合わせで時々行くけど、改札をまたいで電車に乗るのは初めてだった。
ラピートが見たくて入場券だけ買って見に行ったことが何年か前にあったくらいだ。
券売機を探していると、特急サザンが出ているというではないか。堺にも停まるし、じゃあ「折角だから(コンバット越前)」とサザンの特急券も買う。
改札を抜けると横にずらーっと並ぶプラットフォームの一つを先頭まで。
券売機の液晶画面に表示されていた空席情報はガラ空きで、
ミナミ人類絶滅した?
って感じだった。なので最前列の窓際を選んだのだが、南海の難波駅って広いのな。延々とホームの先端を目指し、高い天井と行き交う列車たちを眺め、自販機を通り過ぎ、隣のホームに到着した空港ゆきの準急か何かも堺に向かうとかで、しかもガラガラで(アッチでも良かったんじゃん…?)と思う自分から目を逸らし。
ホーム先端でボケタンと立ち尽くす。
テリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」の最後に出てくる丸いドームあるじゃん(みんな見て知ってる前提かよ)、なんかアレを思い出すSF的な雰囲気が好きだな。
デカいエスカレーターを上がって3階の改札の正面に向かい合う時なんか特に。
行ったこと無いけど欧米の鉄道駅ってこんな感じじゃなかろうか。
そうこうしているうちに特急サザンがやって来た。
後ろ何両かは自由席で、前の方だけ指定席だという。名鉄特急パノラマスーパーと同じようなシステムだろうか。
やがて白く四角い光に向かって列車が走り出した。南海難波駅を出ると高架で、堺筋から西成区にかけてのTHEオーサカな町並みを見渡しながら進んでゆく。新今宮、天下茶屋ときて、もう次は堺だ。
東三河にお住いの方、名鉄ユーザー向けに私の体感で例えると(なんで?)、たぶん豊橋から東岡崎よりは遥かに近いと思う。本宿とか美合ぐらいじゃないか?
堺駅は生活に密着した、こじんまりとして機能的な駅だった。
駅舎の前に神社があったのでお参りしつつ会場のギャラリー住吉橋さんへ。
トラックや車が行き交う大きな交差点、青看板を掲げた歩道橋、瀟洒なマンション。
その向こうは大阪湾。
そんな開けた街角に、ギャラリー住吉橋さんがある。
近づくと、中でMinaさんが絵を描いているのが見える。
可愛い割烹着の背中が楽しそうに、歌うようになにか描いている。
中に入ると、オーナーさんが温かく出迎えてくださる。ギャラリーの人だからどんな畏まって意識高い人かと思いきや気さくで物腰の柔らかいジェントルメンでいらっしゃった。
街角のギャラリーってハードル高いなと思ってたけど、Minaさんの作品がココを選んだような気軽で明るくて見やすい会場だったと思います。
そのMinaさん。お会いするのは半年ぶりぐらい?
いつも何処にいるかわからない、むしろ個展だから何日も〝何時から何時にココ行けば必ず居る〟という状況が作れるわけで、普段は島や港町や山奥に居ることが多い。
それでいて仕事もして、一体いつこんなに沢山の作品を描いていたのか。不思議というか、モノホンの人ってやっぱ恐ろしいというか。
絵を描くMinaさんとアレコレ話す。
件の、放浪癖を抱えてる人が何故こんなに描けているのか、という話もしたと思う。
展示のたびに設置しているというフリーパネル(その場にある画材の何を使って何を描いてもいい、というもの)に、私もちょっと書かせてもらった。
あそこで思い切ってバカなこと描けるやつは、スゲー売れるかスゲーこけるかどっちかでかっこいいよな。名古屋でお会いしたHARRY画伯の作品もあった。HARRYさんも、ひと目でそれとわかる作風を持ってて、一度見たら覚えやすいから強いなあ。という話もした。
真面目な話というか、創作っぽい話はそのぐらいで。
あとはとてもギャラリーっぽくはない馬鹿な話をしていたと思う。
しながらもMinaさんは手を動かして、そうこうしているうちに伸びた線だったものがちゃんと絵になってゆく。
文章とも何処か似ていて、何かが違う。
でも、ハッキリとそれが浮かび上がって像を結ぶ瞬間というのが絵にも文にもあって。そのブレイクスルーが心地よい。
だからこうして私も、頼まれもしないことでも唸りながら書き続けていられるのかも知れない。
制作中のMinaさんを撮らせていただく。
「描いてるとこ、撮っていいっすか?」
「いいですよー!私、著作権ないんで!」
「いや人権と肖像権あるだろ!」
「確かに!!」
そんなわけで素敵なスマイルのMinaさんである。
この可愛い割烹着はギャラリーでの制作用に着てみたとのことだったけど、この似合い方はどう考えても酒場仕込みじゃなかろうか。
作風や画材の変遷、描きたいもの考えてること、表現として出てくるときの感触。
そういう話も聞かせていただいて、ひとくちに絵を描くと言っても本当に色々だし、何より話しながら考えながら描いているMinaさんがとても楽しそうで。そのさまを見ているのが凄く私も楽しかったし、自分ももっと何か書かなきゃなと思えた。
また何処かでお会いできるのを楽しみにして、私も頑張ります。
そうして私は、また大阪市内へ戻るのであった。