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ただいま。  作者: ダイナマイト・キッド
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俗戝 -zokuzoku- 名古屋旅愁編にお邪魔しました。

大阪で活動しているMinaさんという画家さんであり、廃墟やレトロを愛する方がいらして。

そのMinaさんが名古屋で行われる展示に参加するというので、ちょいとお邪魔してきました。


地下鉄矢場町駅から徒歩すぐ。

GS栄ビルの地下にあるギャラリー、

spazio-rita さん。

落ち着いてるけど薄暗さもあって、そこに並ぶ作品も一様に個性的かつ不気味で、でもなんだか目を惹くものばかり。絵心の無い私には詳しいことがわからないけど、見ていて飽きないものや、細かいところまでこだわった作品なのは伝わって来ました。


お目当てのMinaさんの作品はといえば、人物とシチュエーションだけど人物の顔が極力省かれていて、ポーズや情景を味わったり、そのムードに共感したり絵の中に這入り込んだり…没入的な楽しみ方が容易になるような造りに見えました。

じーっとVTRを回している時間のうち、ある瞬間の印象を切り抜いてシンプルにして言った感じ。映像じゃないから立体感や写実性はそぎ落とされて、だけど平面を全体的に見渡すことで一つのイメージがあとから付いてくる。

だから私みたいに絵の知識や技法に疎くても、大して見たことも描いたこともないままで目の当たりにしても、ぱっと見で想像したり、そこから発展させていったりできる。

一見難しそうだけど、取っ付きやすい。

派手に見えて当たりがキツそうに見えるけど笑うと目の形が全然変わっちゃって滅茶苦茶可愛いMinaさんと、よく似た構造をしているのかも知れない…。


会場には絵画だけではなく、JUNK LAWさんのオブジェも展示されている。

これがまた凄まじい出来栄え。

廃材を使った作品とのことだけど、ギーガーみたいな緻密なグロテスクさと、リドリー・スコットのSF映画みたいなカッコよさが同居してて。じーっと見れば見るほど細かい書き込みやビス止めまで発見がある。

こんな人が名古屋に居るとは。知らないだけで色んな人が蠢いているのだな…。


インスタでいつも見ているBUKUROさんの作品も、絵なんだけど得体の知れないものが蠢いている様子に名前を付けて固めたみたいで面白かった。

これが悲しみ、これが嫉妬、と、それらの様子に名付けられた感情が自分の中にあるそれらと共鳴したり、反対に疑問を呈したり。

どんな時にあれが降りて来たり湧いて来たりするんだろう。

その辺をお聞きしてみたかった。

あれは形や言葉にしづらい、まさに筆舌に尽くしがたいものだと思う。

それを作品に閉じ込めて具現化した…ように見えるので、もしそうだとしたら、そうじゃなくても、作品にどんなものがこもってて、何から生まれて来るのか。

ご不在のようでしたが、とても興味深い作家さんでした。


会場でひと際に目を惹いたのは、今回の企画者で大阪のHARRYさんのパネル。

私の第一声は「HARRYさんの絵が、いちばん可愛いですね!」でした。

他の人と同様、一見すると怖かったり鋭かったり個性的なのは確かなんだけど、HARRYさんの作品がいちばん取っ付きやすい気がしました。

見た目はイカついお兄さんだけど、ハートの柔らかくて暖かい人でもあり…妥協なき制作について回るエピソードは悲喜こもごも。というか話もうまい…と思っていたらバンドマンでもあったのですね。板の上に乗っているのも納得でした。

線の引き方、点の打ち方、作品のなかで本当に描きたかった部分と、それを彩り形を成すための部分。見れば見るほど面白い…小説の書き方にも通じるような気がして、

沢山の人に見て欲しい、楽しい気持ち、明るい毎日に作品を置いてあげて欲しい。そんな思いが端々に刻まれている。

壁画を描けば挨拶や差し入れをもらい、イベントに出れば子供たちが寄って来る。

そんなTHE大阪のオッチャン的な愛嬌を持ちながら、しかし根っこの部分では鋭く尖っていた頃の自分を忘れていない。


聖飢魔Ⅱのジェイル大橋代官が一時、聖飢魔Ⅱを脱退したのは「尖ってないといけない。商業的な音楽に吞まれてはいけない」という頑ななポリシーのうえでの決断だった。でも復帰に際しては「音楽の中でだけ尖ってればいい」と悟り、今も構成員として悪魔の世界と人間界とを行ったり来たり楽しそうに活動なさっている。


これと同じようなことで、ピリピリツンツンしていると作品も暗かったり血生臭かったり、どんどんダークになってゆく。自分自身とそこから生み出された作品は表裏一体。

可愛げと不気味さの絶妙なバランスを産み出すのは、そうした闇の世界を経て再び灯された心の燈火の揺らぎなのかもしれない。


お聞きしたことを全部ここに書くわけにも行かない(私自身も帰り道、名古屋駅まで歩きながら咀嚼し続けた言葉や思いが幾つもあった)けど、地元で活動しているみしゃみしゃちゃんみたく、街角で愛されるタイプの作家さんをはじめ文化も性別も世代も違うのに、やっぱり通じ合う部分のある人たちが居て。

そういう人達と触れて、話してもらえて、自分も頑張ろうと思えるのは物凄く恵まれているし豊かなことだ。


短い間の、きっと膨大な作品のうちの一部だったかもしれないけれど、とても楽しく過ごさせて頂きました。

10月22日まで開催されています。


俗戝 -zokuzoku- 名古屋旅愁編

名古屋 spazio rita(中区栄5丁目 GS栄ビル地下)

12時開場、20時終了。

最終日は19時終了。

ぜひぜひ。


この次がまたあるのなら、是非お邪魔したいです。

応援しております。



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