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ただいま。  作者: ダイナマイト・キッド
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今日もライブに行けません!


蟹めんまさんの新刊

「今日もライブに行けません!」

が発売されるとのことで、早速予約して購入しまして、一気読みしてしまいました。

面白い、と、身につまされる、とがツインギターみたいに左右で鳴りまくっている稀有な作品でした。

悲惨過ぎず、でも現実には抗えず、しまいに悟りを開くかと思いきや解脱は出来ず。

ただ、肝心のこと……ライブに行けず七転八倒しながらも前を向いて暮らそうという心持に至るヒントは、そうやってギャグを交えて描かれた部分の細部に隠れていた気がします。


推しは推せるうちに推せ!

↑などのおもしろ標語に惑わされず、自分のペースで無理なく…といったところが白眉で、結局は良くも悪くも身の丈というものがニンゲンにはあって、それを踏み越えてでも推すこと、のめり込むことは美しいことではあるけど代償がデカい。

奈良県で煩悶としていた蟹めんまさんの気持ち、愛知の田舎でウズウズしていた餓鬼だった私にもよーーくわかります。


私自身はV系というジャンルに疎いけど、私のルチャドール養成学校時代の先輩である松山勘十郎さんは造詣が深く、BGMや入場曲にセレクトするばかりか、本人やバンドをお招きして試合の入場で生歌を披露して貰ったり、果ては味園ユニバースでプロレスとライブの対バン、という前代未聞のイベントを作り出したこともあった。


実を言えば私が蟹めんまさんのことを知ったのも、松山勘十郎さんの主宰する大衆プロレス松山座という団体の公演(一般的に試合とか大会という、その日一日のくくりを松山座では「公演」と呼ぶ)でのことだった。

漫画を拝見すると蟹めんまさんは本当にホントのグロ要素がダメ(エロはガン見)な人らしく。どこが黒ずんでいるのやら。

よくそんな人が、私の撮った小仲=ペールワン選手の写真にいいねを下さったものだと驚きました。小仲=ペールワン選手といえば日本有数の怪奇レスラーにして、衣服は血まみれ。顔面は真っ白で不気味な紋様が浮かび、舌は緑色である。そういえば確かあの時分は、暗黒プロレス組織666(トリプルシックス)の構成員の皆さんがよく出場していて、中でも今や生きる(?)伝説の怨霊選手や、前述の奇々怪々な小仲=ペールワン選手は人気のレスラーだ。

そうか、666さんだったら蟹めんまさんも取っ付きやすいかも…!?

書いてて勝手に納得しました。

ラム会長は可愛いし。


私も37歳、アラサー肥満児などとのたまっていたらシジュウが見えて来た。

妬みや羨みや嫉妬は消えないし、今だって見に行きたい試合や会いたい人でいっぱいだ。

でもそれを包み隠さず作品として詳らかにしていくのは、とても勇気がいることで。


たいてい嫉妬に駆られているような人は、誰かほかの人の嘆きや悩みを知っても、自分の方が云々と言いがちだし、素直に吐露すればするほどなんか損したというか裏切られた気分になるものだ。誰に?


基本的には心の叫びだけど、その叫ぶに至った心もようを掘り下げたり思い出話に花を咲かせたりで、V系といわず音楽に疎くても共感する人は多いと思います。

特に今アラフォーぐらいまでで、地方で思春期を過ごした人たちには…。


かくいう私も愛知だから、○○は近いじゃん、東西どっちでも行けるじゃん、と言われるけど、

行くか行かねえかという問題と、

行けるか行けねえかという問題は、

密接な別問題なんだよ!!

と、そのたびに心の中で叫んでいる。今だってそうだ。貧すれば鈍するとはよく言ったもので、そういう時は周りを見渡しても辛いばかり。

好きでファンだからフォローしたはずの人々のSNSを見ても、好きなジャンルの仲間である人たちも、そして鏡やスマホの画面に映るオノレのバカヅラを見ても、しんどくなるばかりだ。


なので、そうなったときは距離をとるべきだし、前のめりに傾倒していた時期が過ぎて、傾き過ぎているのかも知れない。自分を見つめ直し、生活や財布の不安と向き合わなくちゃならない。イヤだけど仕方がない。身も蓋もない現実は、いつだって其処に在ったのだから。

会場を出た瞬間、寝て起きた瞬間、それはずっと続いていて、ちょっとヨソ見してられただけのこと。


それでもこんなに楽しかった!素晴らしかった!と言える記憶や思い出の場所、作品があって、共有した仲間がいるというのは凄いことだ。自分は十分やるだけやった。と思えばいい。

アレが足りないコレが足りないと気に病むことはないし、

「店やヒトやバンドが消えるのはお前の推し方が足りなかったから!」

などとのたまう奴など放っておけばいい。そういう奴は誰にも推されやしないし、だいたい外野で石を投げても投げ返してこない方向を見て投げている。


お茶の間に自分の好きなジャンルが登場するというのも、普段ちょっとニッチでアサッテな方を向いている自分たちには嬉しかったり恥ずかしかったりするもので。

私はあまり好きじゃなかったんだけど、この漫画で蟹めんまさんが仰っているように、それをきっかけに舞い戻って来るということもあるので、やっぱり時々は地上波なりデカい広告なりに出ていないと埋もれてしまうのだろうな。

それでも地上波放送は地域格差があるので、心待ちにしていた番組が放送されない、されても一週や二週は平気で送れる、なんてのはザラである。


私だってずーーっと追いかけて来た長州VS大仁田の集大成、のちに大仁田劇場と呼ばれる一連のドラマが結実した横浜アリーナ大会の電流爆破デスマッチが放送されなかったときばかりは、田舎生まれを引っ繰り返って悔やんだものだ。

んなことやってれば、そりゃ配信ライブや動画サイトの違法アップロードになんか太刀打ち出来ないよ。タイムフリーやTVerなんか今更やってもね…よほど見たくなければ見なくなったのは、今まで散々そういう不便と傲慢を浴びたからというのもある気がする。


あとはこの作品では触れていないけど、恋愛や家庭生活と趣味・推しの両立も難しいよな。

手っ取り早いのは一緒に見たり出掛けたりすることだが、相手に興味があるか否かも、あっても温度差がどれぐらいあるのか、または同じ趣味で出会ってもその後どうなったか、などなど。これだけでも何かと問題が山積みだ。

続編が出るなら、是非また拝見したいです。




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